一部でカルト的人気を持つ、タイ・ウェスト監督、ミア・ゴス主演のよるホラー映画3部作、『X エックス』、『Pearl パール』、『MaXXXine マキシーン』。
「X三部作」とも呼ばれるこの3作品について、あらすじ、キャストの紹介にくわえ、見どころや撮影裏話までわかりやすく解説したいと思います。ネタバレありです。
「X三部作」とは?時系列は?
ホラー映画の怪作を次々と発表しているタイ・ウェスト監督がミア・ゴスを主演に迎えて製作した、2022年3月公開(米国)の『X エックス』、同年9月公開の『Pearl パール』、2024年7月公開の『MaXXXine マキシーン』。連作であり、一般に「X三部作」と呼ばれています。
3作品には、ストーリー上のつながりがあり、『Pearl パール』は『X エックス』の前日譚、『MaXXXine マキシーン』は『X エックス』の後日譚です。
| タイトル | 公開年 | 舞台 | 時代設定 |
|---|---|---|---|
| X エックス | 2022.3 | テキサス | 1979 |
| Pearl パール | 2022.9 | テキサス | 1918 |
| MaXXXine マキシーン | 2024.7 | ロサンゼルス | 1985 |
どの作品も興行的に成功、批評家からも高い評価を得たばかりか、その独特の世界感の虜となった世界中のホラーファンからカルト的人気を誇る三部作です。
タイ・ウェスト監督について
メガホンをとったタイ・ウェストは、1980年10月5日、デラウェア州ウィルミントン生まれ。サム・ライミ監督の『死霊のはらわた』、ピーター・ジャクソンの『バッド・テイスト』に強い影響を受け、映画製作を志すようになったと言います。
短編映画製作を経て、2005年に長編映画監督デビュー。トライベッカ映画祭で上映された『The House of the Devil』、ヴェネツィア国際映画祭やトロント国際映画祭で上映された『サクラメント 死の楽園』などで注目されたのち、しばらくテレビのホラーシリーズを手掛けていましたが、数年ぶりの映画となったのがA24製作による『X エックス』でした。
『X エックス』は、サウス・バイ・サウスウエストで上映されて大きな話題をよび、興行的にも自己最高の成功をおさめます。結果、3部作の製作へと繋がりました。2024年にはジャスティン・ティンバーレイクのMV『No Angels』を監督。2025年11月現在、ジョニー・デップ主演予定で『クリスマス・キャロル』のリメイク映画を企画中のようです。
私生活では、2024年にオーストラリア人の人気DJアリソン・ワンダーランドと結婚。前年に一男をもうけています。ちなみに、アリソン・ワンダーランドは『MaXXXine マキシーン』にDJ役でカメオ出演しています。
主演のミア・ゴスについて
三部作を一人二役で見事に演じきったミア・ゴスは、1993年10月25日、ロンドンに誕生。生まれてすぐ母の故郷ブラジルに移り育ちました。父はカナダ人です。イギリス、カナダを転々とし、12歳のときにロンドンに落ち着きます。その時までに離婚した母がウェイトレスをしながら育ててくれたようです。
16歳のとき、モデルの仕事をスタートしつつ、『ニンフォマニアック Vol.2』で女優デビューします。2018年のリメイク版『サスペリア』、『ハイ・ライフ』などキャリアを重ね、一人二役を演じた『X エックス』でついにブレイクを果たしました。2024年の『インフィニティ・プール』の演技も高く評価されています。
最新作として、Netflixで2025年11月に配信予定の映画『フランケンシュタイン』、クリストファー・ノーラン監督の新作『オデュッセイア』、2027年公開予定の『スターウォーズ』シリーズの新作『スターファイター(Starfighter)』など、話題作・大作が目白押しです。
私生活では、『ニンフォマニアック Vol.2』で知り合ったシャイア・ラブーフと2016年に結婚しましたが2018年に離婚。しかし2022年に復縁し、長女をもうけています。
『X エックス』あらすじ/キャスト<ネタバレ>
●マキシーン(ミア・ゴス):野心家のポルノ女優
●ウェイン(マーティン・ヘンダーソン):プロデューサー、マキシーンの恋人
●ボビー=リン(ブリタニー・スノウ):マキシーンの友人でポルノ女優
●ジャクソン (スコット・メスカディ):退役軍人のポルノ男優
●RJ(オーウェン・キャンベル):監督
●ロレイン(ジェナ・オルテガ):RJの恋人で撮影助手
●ハワード(スティーヴン・ユーレ):テキサスに暮らす、退役軍人の老人
●パール(ミア・ゴス):ハワードの老妻
1979年、スターを夢みるマキシーンら6人の若者がポルノ映画を撮影するため、テキサスの片田舎で、偏屈老人ハワードと謎めいた老妻パールが所有するゲストハウスにやってきます。
まもなくパールが異常な行動を見せ始めます。マキシーンに不可解な興味を示して家に招いたり、撮影現場を覗き見したあと、欲情して夫を誘惑したり…。さらに、恋人ロレインが女優として撮影に参加したことを怒り、一人車で帰ろうしたRJまでも誘惑。しかし、拒否されたことで、惨殺します。
いなくなったRJを捜索する一行も、次々とパール、パールをかばうハワードの手にかかります。最後に残ったのはマキシーン。パールとの無理なセックスのあと心臓発作を起こしたハワードを放置し、自分を撃ち殺そうとしたパールを車で轢き殺して、ようやく一人だけ脱出に成功するのでした。
翌日、保安官らによって多数の遺体が転がる現場の捜索が行われ、映画の撮影カメラが押収されます。一方、家のテレビには、マキシーンが実は狂信的なテレビ伝道師の娘であることを示す映像が映っていました。
『Pearl パール』あらすじ/キャスト<ネタバレ>
●パール(ミア・ゴス)
●ルース(タンディ・ライト):パールの母
●パールの父(マシュー・サンダーランド) :パールの父
●ハワード(アリステア・シーウェル):パールの夫
●ミッツィ(エマ・ジェンキンス=プーロ):ハワードの妹
●ジョニー (デヴィッド・コレンスウェット):映写技師、パールと男女関係
1918年、テキサス州の田舎にある人里離れた酪農場で、両親と暮らすまだ若きパール。戦線に従軍中の夫ハワードは不在、父は全身麻痺状態で会話すらできず、一方冷酷な母から強権的に支配される中、パールは酪農の仕事と父の介護に追われていました。
抑圧されたパールの夢は、家を出て、ダンサーとして華やかな舞台に立つこと。ときおりおつかいに出かけた先の映画館で過ごすことが唯一の楽しみの中、声をかけてきた映写技師ジョニーに惹かれ欲情します。
そうしたおり、夫の妹ミッツィから、町でダンサーのオーディションが開催されるという話を聞き、一緒に受ける約束をします。それを知って激怒し、狂気と化した母と争ううちに大やけどを負わせますが、地下室に放置し、自分はジョニーのもとにかけつけ肉体関係を結ぶのでした。
翌朝、パールを農場まで送ったジョニーは、家の中のただならぬ気配に恐れをなし、慌てて帰ろうとします。パールはそんなジョニーを惨殺し、父と母も殺した上でオーディション会場に向かうのでした。
しかし、自信満々で臨んだオーディションにあっさり不合格し、一人泣き叫ぶパール。ミッツィから慰められ、映写技師との不倫や夫に対する不満を赤裸々に告白します。そして合格したのがミッツィだと知り、そのミッツィすら惨殺してしまいます。
やがて、帰還してきた夫ハワードが自宅で見たのは、ミイラ化した義父・義母のおぞましい姿と、笑顔で出迎えるパールの異様な姿でした。
『MaXXXine マキシーン』あらすじ/キャスト<ネタバレ>
●マキシーン・ミンクス(ミア・ゴス)
●ジョン・ラバト(ケヴィン・ベーコン):マキシーンにつきまとう私立探偵
●エリザベス・ベンダー(エリザベス・デビッキ):マキシーン主演映画の女性監督
●モリー・ベネット(リリー・コリンズ):マキシーン主演映画の前作の主演女優
●レオン(モーゼス・サムニー):ビデオ屋店長、マキシーンの友人
●アンバー(クロエ・ファーンワース):ポルノ女優、マキシーンの友人
●タビー(ホールジー):ポルノ女優、マキシーンの友人
●ウィリアムズ(ミシェル・モナハン):連続殺人を追う女性刑事
●トーレス(ボビー・カナヴェイル):刑事、ウィリアムズの相棒
●テディ・ナイト(ジャンカルロ・エスポジート):マキシーンのエージェント
テキサスでの壮絶な殺人事件から6年が過ぎた1985年のロサンゼルス。一人生き延びたマキシーンは、ポルノ女優からさらなるスターへと飛躍するため、ヒットしたホラー映画の続編『ピューリタンII』のオーディションを受けます。女性監督に気に入られて見事主役の座を射止めるのでした。
ロサンゼルス市内では、「ナイトストーカー」と呼ばれる猟奇殺人事件が続発し、マキシーンの周囲にも謎めいた黒革の男が……。自宅に一本のVHSテープが届き、それはなぜか、6年前に警察が押収したはずの、テキサスでマキシーンらが撮影していたポルノ映画の生映像でした。
一方、ウィリアムズとトーレス刑事が、悪魔の焼き印を押された二人の女性の遺体を発見。二人ともハリウッド・ヒルズの富豪のパーティーに出かけたマキシーンの友人でした。
謎の黒革から依頼された、下品な私立探偵ジョン・ラバトがマキシーンに近づき、テキサスで起こった過去をばらされたくなければ、自分の依頼人に会うよう住所を渡されます。
マキシーンは、尾行してくるジョン・ラバトを痛め付けます。仕方なくエージェントのテディに助けを求め、ひとまず映画の準備だけに集中しようとしていましたが……。マキシーンにVHSの出どころを調べてくれるよう頼まれていたビデオ屋店長レオンが黒革に惨殺されていました。
ウィリアムズとトーレス刑事から協力を依頼されますが、マキシーンはそれを拒否。『ピューリタンII』のセットで紹介された、前作の主演女優モリー・ベネットは、これからハリウッド・ヒルズのパーティーに行くと……。撮影所に再び現れたラバトを、マキシーンとエージェントのテディが罠にかけ、殺してしまうのでした。
マキシーンは、一人、ラバトから教えられていた豪邸を訪ねます。そこで発見したのは、モリーの無残な遺体、そして長く疎遠だった父でありテレビ伝道師だったアーネスト・ミラーでした。アーネストこそ、狂信的なカルト教のリーダーとして、セックスと暴力を広めるハリウッドの悪を正すとして起こした連続殺人だったのです。
アーネストと信者たちは、マキシーンを捕まえ悪魔祓いの儀式をしようとしますが、ギリギリのところで、マキシーンを尾行していたウィリアムズとトーレス刑事に助けられます。激しい銃撃戦となる中、逃げたアーネストとマキシーンがついに対峙。警察のヘリコプターが上空に助けにやってくる中、マキシーンは、映画の成功で大スターとなった自分の華々しい姿を夢見ていました。
夢想から現実に戻ったマキシーンは、捨て台詞を突き付けて父アーネストを射殺。それから時が過ぎ、壮絶な体験を乗り越え、『ピューリタンII』の撮影に取り組むマキシーンの満足気な姿がありました。
「X三部作」の見どころ/撮影秘話/裏話/トリビア8選
①映画『悪魔のいけにえ』『サイコ』の影響
タイ・ウェスト監督は、「X三部作」製作にあたってさまざまな過去のホラー映画に影響を受けたことを告白していますが、明らかにそのうちの2作が1974年の『悪魔のいけにえ』、そして1960年の『サイコ』です。
カルト的人気を誇るホラー映画の傑作『悪魔のいけにえ』は、テキサス州の片田舎にやってきた5人の若者が、そこに住む凶悪な「レザーフェイス」によって次々と殺害されていく物語であり、まさにプロットが類似しています。
いわずと知れたホラー映画の古典『サイコ』に至っては、例えば『X エックス』の劇中、ロレインが『サイコ』の名前を実際に口にしますし、『MaXXXine マキシーン』では、『サイコ』と『サイコ2』(1982年)のセットが登場し、重要なモチーフとなっています。
ちなみに『MaXXXine マキシーン』の舞台となっている1985年の1年後、『サイコ3/怨霊の囁き』が公開されています。
②『X エックス』『Pearl パール』の撮影場所はニュージーランド
『X エックス』の撮影は、まさに世界を新型コロナが襲っていた最中のニュージーランドで行われました。撮影に入る数か月前から、すでにタイ・ウェスト監督はキャラクター作りのため、ミア・ゴスとパールの過去についてたびたび話をしていたといいますが、2週間のホテル隔離中に『Pearl パール』の脚本を書きあげます。A24のゴーサインを得て、『X エックス』撮影後、そのまま同地で『Pearl パール』の極秘撮影に突入したのです。
よって、パールの母を演じたタンディ・ライト、父を演じたマシュー・サンダーランドらはみなニュージーランドの俳優です。
同様に、2022年、『Pearl パール』がトロント国際映画祭でプレミア上映されたとき、エンドクレジットのあとに『MaXXXine マキシーン』のティーザー映像が流れ、すでに三作目も進行中でした。
③『X エックス』でそれぞれの死にざまに伏線がある
一例を挙げると、映画の冒頭、ボビー=リンがストリップ小屋から出てくるシーンで、壁に描かれているのはブロンドの女性がワニにビキニを引っ張られているイラスト。のち、ボビー=リンはワニに襲われて死にます。
また、ジャクソンは、何度もベトナム戦争で農夫に銃で脅かされた体験を口にしますが、最後はハワードに銃殺されます。
④3作それぞれの時代らしい演出
三部作は1979年、1918年、1985年と時代設定が大きく変わりますが、それぞれの時代らしい演出となっているのも本三部作の一つの見どころです。
もともと『Pearl パール』は白黒で撮影する予定でしたが、A24の反対により逆にヴィヴィッドな色彩が選ばれることになりました。
また『MaXXXine マキシーン』では全編に80年代のポップミュージックが流れるほか、80年代らしい街並みや雰囲気が見事に再現され見ごたえがあります。
⑤『Pearl パール』撮影にあたり、監督がミア・ゴスに勧めた映画
『Pearl パール』の世界感を理解するため、タイ・ウェスト監督がミア・ゴスに鑑賞をすすめた映画が、1962年の『何がジェーンに起ったか?』と1939年の『オズの魔法使い』でした。
ベティ・デイヴィスとジョーン・クロフォードの二大スターが主演した『何がジェーンに起ったか?』は、老婆姉妹の愛憎を描くホラー映画の名作、一方、ジュディ・ガーランドが主演した『オズの魔法使い』は、少女ドロシーが案山子やライオンらと共に魔法の国を冒険する物語です。
実際、『Pearl パール』には、畑で案山子を見つけ、案山子と疑似セックスをするシーンがありますが、その時パールが身に着けている衣服は、『オズの魔法使い』でドロシーが来ているドレスによく似ています。
⑥映写技師を演じたデヴィッド・コレンスウェット
2025年公開の映画『スーパーマン』の監督ジェームズ・ガンは、『Pearl パール』で映写技師を演じたデヴィッド・コレンスウェットの演技を見て、スーパーマン/クラーク・ケント役への抜擢を決めたと言われています。
デヴィッド・コレンスウェットは、2027年公開予定の続編『Man of Tomorrow』でもスーパーマンを演じることが決定しています。
⑦三部作で繰り返される同じダンス
『Pearl パール』のオーディションにおいて、パールが披露して見せるダンスは、『X エックス』の中でパールがRJを殺害した後に踊るダンスと同じ振り付けです。
そればかりか恐ろしいことに、『MaXXXine マキシーン』の中で、回想シーンに登場する幼いマキシーンが父親の前で披露するダンスの振り付けも、パールがオーディションで披露したダンスと同じです。
⑧『MaXXXine マキシーン』の重要なモチーフ、ベティ・デイヴィス
映画『MaXXXine マキシーン』の冒頭で、「ショービジネスの世界では、怪物と呼ばれてこそ本物のスター」というベティ・デイヴィスの言葉が紹介されますが、エンドクレジットで流れる曲は、キム・カーンズの有名な大ヒット曲「ベティ・デイビスの瞳」。
つまり、映画はベティ・デイヴィスで幕を開け、ベティ・デイヴィスで幕を閉じるのです。
上記⑤で既述の通り、ベティ・デイヴィスは、ウェスト監督がミア・ゴスに勧めた1962年の映画『何がジェーンに起ったか?』の主演女優でもあります。
『X エックス』『Pearl パール』『MaXXXine マキシーン』に続く4作目は?
三部作に続く4作目の続編については様々なうわさがあります。
2024年2月、タイ・ウェスト監督は、映画の反応次第では第4作目の計画もあると発言しており、実際同年5月の時点では企画が進行していました。
しかし、同年8月には、メディアのインタビューの中で、3部作の結末に満足していると発言を変えており、どうやら4作目の可能性は低くそうです。
ただ、4作目まで製作された『サイコ』など、ホラー映画で続編が続くのは珍しくなく、全く可能性がゼロだとは言えないでしょう。

![悪魔のいけにえ 公開40周年記念版(価格改定) [Blu-ray]](https://m.media-amazon.com/images/I/51eIlfnYN+L._SL160_.jpg)

![サイコ 4K Ultra HD+ブルーレイ[4K ULTRA HD + Blu-ray]](https://m.media-amazon.com/images/I/51JiPCldRVL._SL160_.jpg)

![何がジェーンに起こったか? [DVD]](https://m.media-amazon.com/images/I/51ABzggLBdL._SL160_.jpg)

![オズの魔法使 [Blu-ray]](https://m.media-amazon.com/images/I/51BUgmIjhlL._SL160_.jpg)

