『フランクおじさん』キャスト8人とネタバレあらすじ・実話

フランクおじさん 映画

ゲイであることがまだ恥ずべき悪癖だと考えられていた、60年代から70年代にかけての保守的なアメリカ南東部サウスカロライナ州を舞台に、壊れ、やがて再生していく家族の姿を描いた映画『フランクおじさん』。

心を揺さぶられるストーリーはもちろん、ポール・ベタニーやソフィア・リリスらの素晴らしい演技も見どころの秀作映画です。

本記事では、8人の主要登場人物とキャスト、あらすじ(閉じページにネタバレ)にくわえ、知られざる秘話と実話についてもご紹介したいと思います。

スポンサーリンク

Amazonが配信する秀作映画『フランクおじさん』

2020年1月25日、サンダンス映画祭でプレミア上映されて話題をよび、その後Amazonプライムビデオが配給権を得て独占配信している映画が『フランクおじさん』(Uncle Frank)です。

監督と脚本は、アカデミー賞はじめ数々の賞を受賞しているアラン・ボール。

本作も、LGBTQ界の権威あるGLAADメディア・アワードで最優秀テレビ映画賞に輝くなど、さまざまな賞でノミネート・受賞を果たした秀作です。

監督・脚本のアラン・ボールについて

アラン・ボールは、1957年5月13日、ジョージア州アトランタ近郊のマリエッタ生まれ。90年代に人気を博した2本のシットコム・ドラマ『Cybill』と『Grace Under Fire』の脚本で注目され、1999年には映画『アメリカン・ビューティー』で、アカデミー賞とゴールデングローブ賞の脚本賞をW受賞しました。

その後も、エミー賞やゴールデングローブ賞などさまざまな賞に輝いた『シックス・フィート・アンダー』や『トゥルーブラッド』など、傑作ドラマを立て続けに連発しているヒットメーカーです。

オープンリーゲイで知られ、2008年にはOUT誌の選ぶ最も影響力のあるLGBTQ100人のうちの一人に選ばれました。本作でウォーリーを演じているピーター・マクディッシはプライベートでもパートナーです。

主要登場人物8人とキャスト

①フランク・ブレッドソー:ポール・ベタニー(青年期・コール・ドーマン)

ニューヨーク大学で教壇に立つ、クローゼットのゲイ

ポール・ベタニーは、1971年5月27日、ロンドン生まれのイギリス人俳優です。セントラル・セント・マーチンズで演技を学んだのち、スティーブン・ダルドリーの舞台で俳優デビューしました。

映画『ビューティフル・マインド』や『マスター・アンド・コマンダー』などさまざまな作品で独特の存在感を放っていますが、近年ではなんといっても『アイアンマン』など「マーベル・シネマティック・ユニバース」に登場するJ.A.R.V.I.S.(ジャーヴィス)の声およびヴィジョン役が有名です。

プライベートでは、『ビューティフル・マインド』で共演したジェニファー・コネリーと2003年に結婚。コネリーの連れ子のほか、一男一女をもうけています。

②ベス・ブレッドソー:ソフィア・リリス

フランクの姪。マイクとキティの娘。

ソフィア・リリスは、2002年2月13日、ニューヨーク・ブルックリンのクラウンハイツに生まれました。2013年の短編映画『The Lipstick Stain』で女優デビューしています。

2017年の映画『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』のベバリー・マーシュ役で一躍注目され、続編にも出演しました。その他出演作にはNetflixのドラマシリーズ『ノット・オーケー』、映画『グレーテル&ヘンゼル』などがあります。

RPGゲーム『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の映画化リブート作品『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』でもドリック役で登場します。

③ワリッド・(ウォーリー)・ナディーム:ピーター・マクディッシ

ニューヨークで一緒に暮らす、フランクの長年のパートナー。

ピーター・マクディッシは、1974年5月14日、レバノン・ベイルート生まれの俳優兼プロデューサー。オープンリーゲイであり、本作の監督・脚本を手掛けたアラン・ボールとは公私に渡るパートナーです。

テレビドラマを中心に活動しており、大ヒットコメディシリーズ『シックス・フィート・アンダー』のオリバー・カストロ役、またアクションドラマ『バンシー』では、ボールとともにエグゼクティブプロデューサーを担当しています。



④マイク・ブレッドソー:スティーヴ・ザーン

フランクの弟。

スティーヴ・ザーンは、1967年11月13日生まれ、ミネソタ州マーシャル出身。ミネソタの大学に入学しましたが、演技に目覚めて中退し、ハーバード大学のアメリカン・レパートリー・シアターで演劇を学びました。

1991年にニール・サイモンの舞台で俳優デビューし、映画2作目となった1994年の『リアリティ・バイツ』で注目されました。その後は、『すべてをあなたに』や『ユー・ガット・メール』『スチュアート・リトル』など、数多くの作品で名バイプレーヤーとして活躍しています。

プライベートでは1994年に女優兼作家のロビン・ピーターマンと結婚し、一男一女の父です。

⑤キティ・ブレッドソー:ジュディ・グリア

マイクの妻で、フランクの義妹。

ジュディ・グリアは、1975年7月20日、ミシガン州デトロイト出身。1998年に女優デビュー後、『ハード・キャンディ』『ウェディング・プランナー』『アダプテーション』『アントマン&ワスプ』『ファミリー・ツリー』など、さまざまな話題作・ヒット作で個性派女優ぶりを発揮しています。

2017年には『A Happening of Monumental Proportions』で監督デビュー。プライベートでは、2011年に映画プロデューサーのディーン・ジョンセンと結婚しました。

⑥ネヴァ:ジェーン・マクニール

フランクの姉で、唯一ゲイであることを知る理解者。

ジェーン・マクニールは1966年6月21日生まれ、ノースカロライナ州のホワイトヴィル出身です。

2011年の『ウォーキング・デッド』シーズン2に登場したパトリシア役で注目され、その後はさまざまなドラマや映画に出演するようになりました。出演作には映画『ダラス・バイヤーズクラブ』や『ワイルド・ギャンブル』、ドリー・パートン主演のテレビ映画シリーズなどがあります。

⑦母:マーゴ・マーティンデイル

マーゴ・マーティンデイルは、1951年7月18日生まれ、テキサス州ジャックスヴィル出身。映画・ドラマ・舞台で活躍する実力派女優です。

2004年の舞台『熱いトタン屋根の猫』でトニー賞ノミネート、2011年の『JUSTIFIED 俺の正義』と2013年の『ジ・アメリカンズ』で2度エミー賞を受賞しています。

映画でも、『デッドマン・ウォーキング』『めぐりあう時間たち』『ミリオンダラー・ベイビー』『8月の家族たち』など数多くの話題作で忘れがたい存在感をみせています。

⑧父マック:スティーヴン・ルート

スティーヴン・ルートは、1951年11月17日、フロリダ州サラソータ生まれ。舞台を中心にキャリアをスタートさせ、1988年の『クロコダイル・ダンディー2』で映画デビューしました。

多くのテレビドラマ・映画で名バイプレーヤーぶりを発揮していますが、コーエン兄弟のお気に入りとして知られ、『オー・ブラザー!』や『ノーカントリー』など複数の作品に抜擢されています。

他の出演映画には『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』『ゲット・アウト』『スキャンダル』などがあります。

女優のロミー・ローズモントは2人目の妻です。

あらすじ(閉じページにネタバレあり)

1969年、サウスカロライナ州の田舎町クリークビル。

祖父マックの誕生日を祝うため親族が集まりますが、14歳の少女ベスは、ニューヨークから帰省した叔父フランクの知的でほかの誰とも違う雰囲気に憧れていました。一方で、マックとフランクの親子関係は明らかにぎこちなく……。

4年後、18歳になり、フランクが教壇に立つニューヨーク大学に入学したベスは、フランクが実はゲイであり、恋人ウォーリーと10年以上同棲している事実を知るのでした。

そんな中、祖父が急死。葬儀のためベスとフランクは車で帰郷します。ところが、出席を断ったはずのウォーリーも勝手に後を追ってきており、ただでさえ落ち着かないフランクを一層神経質にさせることに……。

フランクの脳裏をよぎる、父と疎遠になった、思春期のある出来事……。友人のサムとベッドの上にいるところを父に目撃され、激しく罵倒されたのでした。

ウォーリーをモーテルに押し留め、ベスとフランクは葬儀に参列します。そこで、思わぬ展開が待っていました。

家族全員が集まった中、弁護士によって遺言状が読み上げられます。すると、そこにはフランクがゲイであることを公表し、激しく非難する憎悪の言葉がしたためられていたのでした。

唯一、フランクのことを理解していた姉をのぞき、動揺する家族の面々。フランクは家を飛び出し、一人泥酔したまま湖に向かいます。

その湖は、サムと遊んだ思い出の場所であり、同時に、フランクが父に命じられるまま冷たく突き放したことで、サムが自ら死を選んだ場所でもありました。

サムの墓場で泣き崩れるフランクに、ウォーリーとベスが寄り添います。説得されて、家族のもとに戻るフランク。

すると、弟夫婦はもちろん、母は以前からわかっていたとフランクばかりかウォーリーをもあたたかく受け入れてくれるのでした。



家族の物語に隠された秘話と実話

本作が強い説得力を持ち、感動作となりえたのは、監督・脚本のアラン・ボールと、フランクを演じたポール・ベタニーの個人的な実体験が深いところで影響しているものと思われます。

●アラン・ボール自身と実父の関係

アラン・ボールは、本作の物語が自身の父との関係から着想を得たものであることを告白しています。

どこまでが実話かはわかりませんが、飛行機の検査士だったという父の名前はフランク・ボールです。

●ポール・ベタニーの実父

ポール・ベタニーは、祖父母・両親とも芸能一家の生まれですが、父のセイン・ベタニーは、いっとき性別適合手術を考えていたという過去を持つ俳優兼ダンサーでした。1993年に離婚したのち、家族のもとを離れ、スコットランドで男性パートナーと20年間一緒に暮らしていました。2015年に他界しています。

ポール・ベタニーいわく、父セインは、カソリックの信仰から、亡くなるまで自身の性についてうしろめたさを覚え続けていたそうです。

●2人が若くして体験した家族の事故死

ポール・ベタニーは、16歳のとき、8歳の弟が屋根から落下事故死するという悲劇に直面しました。ショックからベタニーは高校を中退し、家を出てロンドンでストリート・パフォーマーをしていた時期があります。

一方、アラン・ボールも、13歳のとき、22歳の姉が交通事故死するという悲劇を経験しています。そのとき、姉が運転する車にボールも同乗しており、目の前で姉の死を目撃しました。

映画の中に、葬儀のため車で帰郷する道中、ベスが事故死した少年の話をするシーンがありますが、それはもちろんボールの実体験が影を落としていることは言うまでもありません。

多くの人に観てほしい『フランクおじさん』

フランクおじさん
1973年、フランク・ブレッドソーと18歳の姪ベスは、マンハッタンからサウスカロライナのクリークビルへ車の旅に出る。父親の葬儀に出席するためだ。図らずもフランクの恋人ワリードも途中から旅に加わることになる。

『フランクおじさん』は、おそらく少々地味すぎたタイトルゆえ、またAmazonプライムビデオのみで限定配信されていることもあり、あまり広く知られていない秀作映画です。

まだ激しい差別が残っていた時代のゲイがテーマではありますが、描かれるのは家族の物語。

ゲイの人はもちろん、そうでない人にもぜひ観ていただきたいゆえんです。

コメント

テキストのコピーはできません。
タイトルとURLをコピーしました