名作朝ドラ『カーネーション』あらすじ/キャスト/モデル/感想レビュー

カーネーション ドラマ

2024年9月23日よりNHK BSでの再放送が始まった、連続テレビ小説(朝ドラ)第85作『カーネーション』。

朝ドラ屈指の名作の一つとして知られ、数度再放送が繰り返されるなど、今なお熱狂的なファンの多い作品です。

本記事では、同ドラマの簡単なあらすじ・キャスト、モデルとなった実在人物の紹介にくわえ、個人的な感想を含めたレビューをしたいと思います。

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朝ドラ第85作『カーネーション』とは?

『カーネーション』は、2011年10月3日 から2012年3月31日まで放送された、NHK連続テレビ小説第85作目の作品です。

ヒロイン・小原糸子のモデルは、ファッション業界で世界的に活躍するコシノ三姉妹の母・小篠綾子(こしのあやこ)。2006年に92歳で他界した実在の人物です。子役に続いて、尾野真千子、晩年を夏木マリがヒロインを演じました。

朝ドラ史上初となる「ギャラクシー賞」大賞を受賞したほか、「ザテレビジョンドラマアカデミー賞」最優秀作品賞など数々の栄誉に輝き、一部では「朝ドラ最高傑作」と評されています。

脚本を担当したのは、島根県で家族と暮らしながら脚本家として活躍する実力派、渡辺あや。また、主題歌は椎名林檎が手掛けました。

『カーネーション』のあらすじ<ネタバレあり>

1924年(大正13年)、岸和田で呉服商を営む一家「小原家」、四姉妹の長女・糸子は、「だんじり」に憧れる男勝りな少女。やがて、洋裁と出会い、惹かれ、結局女学校をやめてパッチ店で働く道を選ぶことに……。

様々な経験や修行を重ね、1934年(昭和9年)には父を説得して、実家で洋裁店を開業します。テーラーをしていた勝と結婚し、3人の娘をもうけますが、夫は出征先で戦病死。女手ひとつで生きていくことになります。

戦後、従業員・周防との道ならぬ恋に苦しみつつ、オーダーメイドの店を軌道に乗せるため、情熱をもって仕事を続けます。3人の娘たちもそれぞれファッションデザイナーとして独立する中、自身も老いと闘いながら、2006年に亡くなるまで、精力的に現役として仕事に取り組み続けるのでした。

2010年、「だんじり」のために再び岸和田に集まった3人の娘たち。そこに、糸子の生涯を朝ドラにしたいというNHKからのオファーが舞い込みます。

2011年に始まった第1回のテレビ放送を見つめる、一人の老女の姿でドラマは終わります。その老女とは、糸子の幼なじみにして、波乱の生涯を送った奈津でした。



『カーネーション』の主要登場人物とキャスト

【小原家】
・小原糸子(二宮星/尾野真千子/夏木マリ):小原家四姉妹の長女
・小原善作(小林薫):糸子の父
・小原千代(麻生祐未):糸子の母
・小原ハル(正司照枝):糸子の父方祖母
・小原勝(駿河太郎):糸子の夫
・小原優子(新山千春):糸子と勝の長女
・小原直子(川崎亜沙美):糸子と勝の次女
・小原聡子(安田美沙子):糸子と勝の三女

【松坂家】
・松坂清三郎(宝田明):糸子の母方祖父
・松坂貞子(十朱幸代):糸子の母方祖母
・松坂正一(田中隆三):糸子の母方伯父
・松坂絹江(押谷かおり):糸子の母方伯母、正一の妻
・松坂勇(渡辺大知):糸子の従兄弟、正一の長男

【小原家を取り巻く岸和田の人々】
・吉田奈津(栗山千明/江波杏子):糸子の幼なじみ、料亭「吉田屋」の一人娘
・吉田志津(梅田千絵):「吉田屋」の女将、奈津の母
・吉田克一(鍋島浩):「吉田屋」の主人、奈津の父
・安岡玉枝(濱田マリ):髪結い
・安岡泰蔵(須賀貴匡):玉枝の長男
・安岡勘助(尾上寛之):玉枝の次男、糸子の幼なじみ
・安岡八重子(田丸麻紀):泰蔵の妻
・木之元栄作(甲本雅裕):電器店の店主
・木岡保男(上杉祥三):履物店の店主

【糸子が仕事で関わる人々】
・桝谷幸吉(トミーズ雅):「枡谷パッチ店」店主
・松田恵(六角精児):「オハラ洋装店」経理
・山口孝枝(竹内都子):「オハラ洋装店」事務
・三浦平蔵(近藤正臣):「泉州繊維商業組合」の組合長
・北村達雄(ほっしゃん):「泉州繊維商業組合」の組合員
・周防龍一(綾野剛):紳士服職人
・花村喜一(國村隼):「心斎橋百貨店」の支配人

ヒロイン・糸子のモデルと実在人物

ヒロイン・糸子のモデルとなっている小篠綾子は、1913年(大正2年)6月15日、兵庫県加西郡(現在の加西市)に生まれ、幼くして大阪府泉南郡岸和田町(現在の岸和田市)に一家で移りました。

女学校を中退し、パッチ店などで洋裁の経験を積み、1934年(昭和9年)に「コシノ洋装店」を開業しました。同年には、紳士服のテーラーだった川崎武一と結婚し、長女・弘子、次女・順子、三女・美智子をもうけますが、夫は、1945年(昭和20年)に戦病死しています。

戦後は、洋装店の経営を続けながら、3人の娘を世界的なファッションデザイナーへと育て上げました。戦後のある時期、テーラーだった既婚男性と不倫関係にあったことも事実です。

1988年(昭和63年)には、娘たちに負けじと、74歳の高齢で「アヤコ・コシノ」ブランドを創設するなど、2006年(平成18年)3月26日に脳梗塞のため93歳で亡くなるまで、現役で働き続けました。

ちなみに、娘の3姉妹は、コシノヒロコ・コシノジュンコ・コシノミチコの名で、現在も世界を股にかけて活躍しています。

小篠綾子自身の自伝、評伝、娘たちの回想録など複数の著作がありますが、以下の本などおすすめです。



『カーネーション』の感想レビュー

『カーネーション』は、朝ドラ最高傑作かどうかは別として、代表的な名作の一つであることは間違いありません。

その後『あまちゃん』(2013年前期)や『あさが来た』(2015年後期)など、名作朝ドラが続き、朝ドラ復権期とも言われましたが、2020年代に入ってから再び低迷期に突入。ストーリー展開の稚拙さ、脚本家の明らかな力量不足などを理由に、低視聴率から抜け出す気配はありません。

2024年9月からスタートした『カーネーション』の再放送は、CSや民放含めるとすでに5度目の再放送にあたります。それなのに、第1話が放送されただけで、この後の波乱、登場人物たちが迎える悲劇などを思い、涙してしまう人が続出しました。

筆者も2011年のオンエア時から虜となった視聴者の一人でしたが、当時、その感動を別のブログ(すでに閉鎖済み)に記していました。

以下、それをここに改めて引用したいと思います。<ネタバレ注意>

DATE: 2012/3/4

朝ドラ「カーネーション」にかなりハマっている自分。
ここ何年かの日本のドラマの中でも出色の出来栄えだと思う。

そして、昨日は尾野真千子演じる糸子の最後の日であり、実質的な最終回と言ってもいい程の盛り上がりであった。

また、糸子の母千代の死を、夫、善作との幻のふれあいで示唆したシーンのせつないこと。
多くの人がここで涙したと思う。

このドラマの面白さには幾つかの理由があると思うが、まず登場人物がみな魅力的であること、そして演じる俳優がみな上手なこと、そして何より渡辺あやの脚本が巧いこと。

さらに、強く感じるのは、昭和のよき時代が生きていること。

親と子の関係、祖母の存在感、隣近所の人たちとの交流など、現代日本の、とりわけ東京など大都会の生活の中ではとっくに失われてしまったものを、このドラマには、はっきりと見い出すことができるのである。

また、サイドストーリーとして、安岡美容室の家族が、自分には気になってしようがないのである。
それは、濱田マリ演じた玉枝の激しい生涯に代表される、当時の日本の暗の部分である。

玉枝は、息子二人を戦争で奪われたことによって生きる気力を失い、しばらく寝たきりの年月を送る。
振り返ることをやめ、前だけ向いて生きていこうと決心することで、やっと立ち直ったかに見えるが、決して理不尽な形で子供に先立たれた虚しさが消えたわけではない。
老いて、死の床に伏せってなお、このようなことを呟くのである。

息子たちは戦争で酷い目にあわされて死んだのだと思っていたが、そうではないかもしれない。もしかして、酷いことをしたのは息子たちの方で、そのことで苦しんで死んだのかもしれない…と。

次週からは、夏木マリに糸子役をバトンタッチ。
残り一ヶ月の終章ではあるが、これはこれで楽しみである。

今のお気に入りキャラは、六角精児演じる従業員の一人、恵さん。
昌ちゃんと結婚すればいいのに、と思ったりもするが、恵さんはおそらくゲイだからそれは無理だろう。

実在女性をモデルにした『カーネーション』と『虎に翼』のあまりの違い

製作側は、小篠綾子をモデルとした「フィクション」をうたっていましたが、上述のとおり、かなりの部分で実話に忠実な物語になっていました。

女性初の裁判官となった三淵嘉子をモデルとした第110作目の朝ドラ『虎に翼』が、あまりにも事実とは異なる内容が多すぎ、一部から手厳しく批判されていることを思うと、どうしても脚本家の実力差を指摘せずにはいられません。

フィクションを多く盛り込む手法をとることは間違いではありませんが、そのことがどれほど説得力を持つか、またモデルとなった人物像を阻害するものでないか、が重要になるのではないでしょうか?

2作品には、尾野真千子という共通点がありますが、その完成度には雲泥の差があると個人的には思っています。

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