朝ドラ『オードリー』あらすじ/キャスト相関図/モデルとなった大石静の実話

オードリー ドラマ

2000年10月から2001年3月まで放送されたNHK連続テレビ小説、通称朝ドラ第63作目の作品『オードリー』です。

2024年4月からNHK BSの朝のアンコール枠において再放送されることになり、再び注目が集まっています。

本記事では、およそ25年近く前の本作について、あらすじ、キャスト・人物相関図にくわえ、ヒロインのモデルとなっている脚本家・大石静に関する実話、さらにドラマをもっと楽しむための見どころポイントなど、くわしくご紹介したいと思います。

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NHK連続テレビ小説(朝ドラ)第63作目『オードリー』

京都を舞台に、生母と養母という2人の母の微妙な関係の中で育ったヒロイン・佐々木美月が、映画に情熱を傾けることで次第に成長していく姿を描く、朝ドラ第63作目の作品が『オードリー』です。

タイトルは、オードリー・ヘプバーンのファンである父・春夫が、美月のことを「オードリー」と呼ぶことに由来し、映画というものが物語の柱となっていることを象徴しています。

ヒロインのモデルは、脚本を手掛けた大石静自身、そして主題歌は、倉木麻衣の「Reach for the sky」です。

残念ながら、放送時は平均視聴率20.5%と振るわず、朝ドラ作品の中では、凡作に位置付けられることの多い作品ですが、15~16%の視聴率しかとれないここ最近の朝ドラの低迷と、ドラマ自体の質の低下を思うと、じゅうぶんに楽しめる出来のドラマとなっています。

また現在、大河ドラマ『光る君へ』を視聴されている方にとっては、その脚本を手掛けている大石静が自身をモデルとした作品であり、興味深く視聴できるのではないでしょうか?

『オードリー』のあらすじ

実の両親である佐々木春夫と愛子の暮らす家と、渡り廊下で繋がった老舗旅館「椿屋」の女将・吉岡滝乃の間で、2人の母がいる奇妙な状態で育った美月。成長するにつれ、その異様さに気づくように……。

そんな中、仲良しだった旅館の仲居・君江に、映画の撮影所に連れられて行ったことで、その面白さに取りつかれます。

高校卒業と同時に、大京映画の大部屋女優に採用されます。美月は、芸名・吉岡美月として、いじめや恋に悩み、また映画作りの難しさに直面しながらも、持ち前の明るさで奮闘するのですが、すべてがなかなかうまくいかず……。

一方、滝乃の結婚に端を発した、春夫と愛子の不和、春夫の渡米といった家のごたごたの中、美月はいったん「椿屋」の女将を継ぐことになるのですが……。それでも、映画への情熱を抑えられず、再びアルバイトとして映画製作の現場に復帰。やがて、新作映画の監督に大抜擢されます。



『オードリー』の主要登場人物/キャストと人物相関図

【佐々木家】
・佐々木美月/岡本綾:本作のヒロイン
・佐々木愛子/賀来千香子:美月の実母
・佐々木春夫/段田安則:米国育ちの美月の父、翻訳家
・佐々木梓/茂山逸平:美月の弟

【旅館「椿屋」】
・吉岡滝乃/大竹しのぶ:女将、春夫の元恋人で美月の養母
・宮本 君江/藤山直美:仲居、女将の幼馴染

【大京映画】
・黒田茂光/國村隼:社長
・関川徹/石井正則:プロデューサー
・杉本英記/堺雅人:助監督、美月のことが好き
・桃山剣之助/林与一:「モモケン」の名で知られる大京の二大看板スター
・栗部金太郎/舟木一夫:「クリキン」の名で知られる大京の二大看板スター
・幹幸太郎/佐々木蔵之介:大京の新進スター俳優
・中山晋八/仁科貴:大部屋俳優、美月の幼馴染
・錠島直也/長嶋一茂:大部屋俳優、美月と一時交際するも…。
・青葉城虎之介/菊池隆則:大部屋俳優、実は両親は…。
・二階堂樹里/井元由香:上昇志向の強い、美貌の若手女優
・朝倉もみじ/三田篤子:美月をいじめる大部屋女優
・岬曜子/岡田薫:大部屋女優、梓のことが好きになるも…。

【その他】
・麻生祐二/沢田研二:滝乃の元恋人
・雀蓮/三林京子:謎の尼僧、実は…。



岡本綾演じる美月のモデルである脚本家の大石静について

既述の通り、ヒロインである佐々木美月のモデルは、脚本を手掛けた大石静自身です。

大石静は、1951年9月15日、東京都生まれ。美月と同じように、養母が経営する東京都千代田区の駿河台にあった老舗旅館「駿台荘」で、生後4か月から育ち、成人すると正式な養女となりました。

家族構成もドラマと同じで、旅館の隣に両親と弟が住んでいましたが、養母に大切に育てられた大石静にとっては、実家の方が居心地の悪いものだったようです。ちなみに、実母と実父の結婚も、養母の紹介でした。

最初は女優志望から、その後裏方へと転身するという流れも事実に即したものであり、また、大部屋の女優時代、先輩女優からいじめられた体験も実体験に基づいているようです。

「駿台荘」は江戸川乱歩や石川達三、松本清張ら文豪から、政治家の三木武夫、ノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹ら、各界の名士が滞在する隠れ家的な旅館でした。複雑な家庭環境ともども、大石静のその後の人生に大きな影響を与えたことは確かでしょう。

大石静が1994年に発表した『駿台荘物語』には、このときの生活を綴ったエッセイも収録されており、おすすめです。

大石静は、日本女子大学文学部卒業後、女優を志望して青年座研究所に入所。甲状腺がんの発病、結婚などを経て、1981年に、永井愛と劇団「二兎社」を旗揚げし、女優と脚本を担当しました。

1986年、TBSの『水曜日の恋人たち 見合いの傾向と対策』でドラマ脚本家デビュー。数年後には、脚本家に専念し、以後、多数のテレビドラマの脚本を手掛けました。

代表的な作品には以下のものがあります。

1991年『ヴァンサンカン・結婚』(フジ)
1993年『わたしってブスだったの?』(TBS)
1994年『長男の嫁』(TBS)
1996年『ふたりっ子』(NHK朝ドラ)※第15回向田邦子賞・第5回橋田賞
2006年『功名が辻』(NHK大河ドラマ)
2007年『恋せども、愛せども』(WOWOW)※第62回文化庁芸術祭賞テレビ部門ドラマの部優秀賞
2010年『セカンドバージン』※東京ドラマアウォード2011の連続ドラマ脚本賞・放送ウーマン賞
2016年『家売るオンナ』(NHK)
2023年『離婚しようよ』(Netflix) ※宮藤官九郎と共同脚本
2024年『光る君へ』(NHK大河ドラマ)

朝ドラの脚本2度、大河ドラマの脚本2度という、日本を代表する人気脚本家の一人です。その功績が称えられ、2021年には旭日小綬章を授与されています。

大石静は、24歳のときに甲状腺がんという大病を患いますが、その翌年の1977年、舞台監督の高橋正篤と結婚しました。それより若い頃には、不倫に悩んだ時期もあり、正式な婚姻関係を欲していたとエッセイの中で語っています。

夫は、8歳上であり、闘病や劇団を立ち上げる際など、たいへんな時代を支えてくれました。しかし、大石静自身は、婚外恋愛肯定派であり、それが原因で離婚危機に陥ったこともあるようです。

45年をともにし、高橋正篤氏は、2022年12月、肺がんにより79歳で死去。ちょうどNHK大河ドラマ『光る君へ』の脚本を執筆していた最中で、介護のため、一時執筆の中断も余儀なくされたようです。

そのときのことを、雑誌のインタビューで以下の通り語っています。

最後は容体が急変して病院で息を引き取りましたが、やるだけやったと思い、涙も出ませんでした。夫が恐れず、苦しまずに人生を終えられるように――それをプロデュースすることが妻としての最後のミッションだと思って、こちらの命も削れるほどやりましたので。

引用:https://fujinkoron.jp/articles/-/11064

2人の間に、子どもはいません。

ちなみに、若い頃には、某有名野球選手から熱烈に求愛されたこともあったようで、上で紹介したエッセイ集『『駿台荘物語』に詳しく書かれています。

ドラマとは違い、旅館「駿台荘」を経営していた養母の犬塚雪代氏は、生涯独身のまま、当時としては珍しい自立した女性として人生を過ごし、1988年に85歳で亡くなりました。「椿屋」のモデルとなった「駿台荘」は、亡くなる15年ほど前にすでに閉業しており(大石静が22歳の時)、跡地にはマンションが建っています。

実母は、「駿台荘」のフロントを手伝っていましたが、女優にスカウトされてこともある美人であり、また、あえて官能描写のある大人の小説を娘にすすめるような、当時としては珍しい、突き抜けた母親だったようです。

三重県生まれの実父は、13歳のときに渡米し、30代後半までアメリカに暮らしました。戦時中は、カリフォルニア大学バークレー校の大学院で建築を学んでいたそうです。ドラマの春夫同様、身勝手ともいえる自由人であり、大石静はそんな父のことが大嫌いだったと語っています。1986年6月、リンパ腺のがんで他界しています。

短気で、不条理で、よく怒鳴り、日本の社会からは徹底的にはみ出していた父が、闘うことをやめた穏やかな表情になって、死んでいった

引用:大石静著『駿台荘物語』文藝春秋刊

一時は、一階に大石静香夫婦、二階に実母、三階に弟家族(夫婦と甥2人)という豪華な世田谷三世帯住宅に暮らしていましたが、大石静が50代前半を迎えたころ、大きな災難が降りかかります。

バブル崩壊のあおりを受け、実弟が母親と共同で経営していた和食店、続いて出したステーキ屋の経営に失敗、さらに弟が6000万円の詐欺に遭い、仕方なく大石静が借入2億円の連帯保証人となっていたのです。その後、何年にも渡って、大石静一人がうつ病になりながらも、三世帯の生活を支え続けてきましたが、その頃(2003年前後)、2億円の借入先が経営破綻してしまいます。

世田谷の豪邸を、買ったときの3分の1の価格8000万円で売却したり、すべての資産を売ってもまだ足りない負債を、ようやく周囲の助けを得て、約束の期限までに3000万円一括返済しました。一時は自己破産も考えたそうですが、著作権まで放棄することになると知り、なんとか踏みとどまったそうです。

その後、弟は離婚して失踪、実母もまもなく他界されたようです。

つまり、本作が放送されたのは、負債問題が降りかかる前のことであり、モデルととなった実母もまだ健在でした。

借金にまつわる経緯や顛末は、以下のエッセイ集に「きっかけ篇」「地獄篇」「仏篇」という3部構成で詳しく綴られています。



『オードリー』の見どころポイント

ドラマは京都が舞台であり、「大京映画撮影所」は、太秦にある「松竹京都撮影所」で撮影されました。

他にも、京福電車太秦駅、車折神社、大沢池、上津屋橋などが登場。また、大京映画の本社外観は、大阪府大阪市中央区馬場町にあった旧NHK大阪放送局が使用されましたが、移転により現在は取り壊され、残っていません。

さらに、君江の故郷・熊本でもロケが行われ、さまざまな場所が登場します。

林与一が演じた大京映画撮影所の大スター「モモケン」こと桃山剣之助ですが、なんと、2021年から2022年まで放送された朝ドラ第105作目の作品『カムカムエヴリバディ』に再登場します。

同じく、時代劇の銀幕スターという役柄であり、尾上菊之助が演じて大いに話題をよびました。

詳しくは以下の記事をご覧ください。

ヒロインの美月を演じた岡本綾は、当時まだ高校生でした。この後、さまざまな映画やドラマに出演し、キャリアは順調でしたが、2007年に事務所を退社して芸能活動の休業宣言をし、その後は事実上の引退状態となっています。

一説には、2006年に発覚した中村獅童との不倫スキャンダルが原因との説もありますが、真相はよくわかっていません。現在は、オーストラリア人の男性と結婚して子どもにも授かり、オーストラリアで幸せに暮らしているという目撃情報もあります。

話題をよんだ2006年の映画『地下鉄に乗って』に続き、井ノ原快彦主演の2007年の映画『天国は待ってくれる』が、最後の出演作品です。

美月の幼馴染である中山晋八を演じた仁科貴は、1995年に亡くなった川谷拓三の長男という二世俳優として順調なキャリアを築いていましたが、本作の後、2002年に大麻所持で逮捕され、執行猶予付き有罪判決を受けました。その後、復帰し、現在も俳優業を続けています。

長嶋一茂演じる錠島直也の母・正子を演じた島村晶子は、2022年8月9日、肺炎により89歳で死去。本作のみならず、『カーネーション』や『あさが来た』など朝ドラだけでも9作品に出演した名優でした。

また、当時はまだ無名に近かった堺雅人佐々木蔵之介のその後の活躍については言うまでもありません。

既述のとおり、ドラマは脚本家・大石静の家族がモデルになってはいますが、すべてが実話というわけではありません。

2人の母、しかも養母のもとで育ったこと、アメリカ帰りの風変りな父というのは実話通りですが、ドラマのように、養母と実母が娘を巡って奪い合いの確執があったというのは、創作のようです。実母は養母の営む旅館のフロントで働いていました。

また父と養母がかつて恋人同士だったというドラマの設定も事実ではありません。ただ、既述のとおり、養母の紹介で、実父と実母が結婚したという経緯が、エッセイの中で述べられています。



朝ドラ『オードリー』再放送は2024年4月1日スタート

朝ドラ『オードリー』はDVD化されておらず、これまでなかなか手軽に鑑賞できませんでした。

そのため、2024年4月1日から始まる待望の再放送は、本作のファンにとって、また初めて視聴する人にとっても見逃せない機会でしょう。

放送時間は、毎週月~土の午前7:15~7:30(NHKBS・BSP4K)。また、その週の日曜午前中に一週間分6話が一挙に放送されます。(NHKBSは8:00~、BSP4Kは10:00~)

ちなみに、大石静は、自身のブログ「静の海」の中で『オードリー』に関して次のように述べています。

「オードリー」は無名の新人だった蔵之介さんがダントツに美しいです。品がいいんですけど、たまげる狂気もあり、これはスゴイ役者になると予感しました。
その他はどういう話を書いたのか、あまりよく覚えていません。自分の歴史から消していた・・・という作品ではないんですけども(笑) 

引用:http://blog.5012.jp/ohishi/archives/2024/02/

自身がモデルであるという特殊な事情もあり、大石静本人にとっては、あまりお気に入りの作品ではないのかもしれません。

ちなみに、2024年4月1日同日にスタートするもう一つの朝ドラの再放送は『ちゅらさん』。お昼の12:30からです。

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