『コーダ あいのうた』あらすじ/キャスト/知られざる実話6選

コーダあいのうた 映画

第94回アカデミー賞で作品賞、助演男優賞、脚色賞の主要3部門を受賞した2021年の映画『コーダ あいのうた』。

日本映画『ドライブ・マイ・カー』と作品賞を競って受賞に至った作品です。

本記事では、作品の概要、あらすじや主要キャストにくわえ、知られざる実話やトリビアを6つ、ご紹介したいと思います。

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『コーダ あいのうた』がアカデミー賞で三冠!「コーダ」とは?

コーダ(CODA)とは、Children of Deaf Adultsの略で、聴覚障害を持った親のもとで育った子供たちのことを指します。

両親、兄とも聴覚障害を抱える一家で、たった一人耳の聞こえる主人公の少女ルビー。音楽という自身の夢を追いかけ、次第に成長していく姿を、家族との葛藤や絆とともに描きます。

2014年のフランス映画『エール!』のリメイクであり、監督はNetflixの大ヒットドラマ『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』のゲスト脚本、同じくNetflixの映画『タルーラ〜彼女たちの事情〜』の監督・脚本で知られるシアン・ヘダーが務めました。

第94回アカデミー賞で作品賞、助演男優賞、脚色賞の三冠に輝いたほか、さまざまな映画祭で複数の受賞・ノミネートを果たした、心温まる感動作です。

■あらすじ(閉じページにネタバレあり)

漁師である父フランクと兄レオ、そして母ジャッキーも全員聾者である一家にとって、唯一障害を持たないルビーは欠かせない手話通訳。毎日、漁の仕事と学業を忙しく両立しながら暮らしていました。

そんな中、高校の合唱サークルで、ルビーの歌の才能に気づいた教師から、奨学金を得て名門バークリー音楽大学に進学するよう勧められます。が、歌声を聴くことができない家族には、なかなか理解されず…。

合唱サークルの発表会でデュエットするマイルズとも親密になり、歌のレッスン、家族のための通訳の両立はますます難しくなってしまうのでした。

ある日、ルビー不在のまま出漁した父と兄が、沿岸警備隊に通報され、罰金を課せられるという事件が起きます。船には必ず健常者の同乗が命じられ、ルビーはやむなく進学を諦めかけるのですが…。

迎えたサークルの発表会で見事な歌を披露する娘の姿を目にする家族。

歌声は聞こえぬものの、父は、ルビーの強い思いに気づき、家族一緒にルビーをバークリーの試験会場に送り届けます。

ルビーは、試験官と、客席の後ろに待機する家族を前に、歌を披露します。手話を交えながら…。

見事合格したルビーは、やがて家族に見送られ、家を旅立つのでした。



主要登場人物とキャスト情報

1.ルビー・ロッシ/エミリア・ジョーンズ

エミリア・ジョーンズは、2002年2月23日、英国ロンドン生まれです。父は、かつてボーイ・ソプラノで国際的な人気を博したバリトン歌手のアレッド・ジョーンズで、母はサーカスのパフォーマーでした。

2010年、8歳のときから子役としてキャリアをスタート。映画『ワン・デイ 23年のラブストーリー』や、国民的人気ドラマ『ドクター・フー』、アメリカのドラマ『ロック&キー』などに出演します。

本作『コーダ あいのうた』で英国アカデミー賞の主演女優賞はじめ、数多くの賞にノミネートされ、一躍世界的な注目を集めました。

その後の主演作品には、サイコスリラー映画『Cat Person(日本未公開)』、2023年1月のサンダンス映画祭でプレミア上映された『Fairyland』などがあります。

2.父:フランク・ロッシ/トロイ・コッツァー

トロイ・コッツァーは、1968年7月24日、アリゾナ州生まれ。生後9か月で両親は聴覚障害に気づき、フェニックスにある聾学校に通いました。その頃から演技に興味を持ち、ギャローデット大学で学びます。

1994年より、ロサンゼルスを拠点する手話劇団「デフ・ウェスト・シアター」において、俳優兼演出家として様々な作品に携わっています。

本作ではアカデミー賞助演男優賞を受賞。本作で妻を演じているマーリー・マトリンに続き、聾者として史上二人目の快挙でした。

私生活では、2001年に、同じく聾者の女優ディアン・ブレイと結婚し、娘が一人います。

3.母:ジャッキー・ロッシ/マーリー・マトリン

マーリー・マトリンは、1965年8月24日生まれ、イリノイ州出身。生後18ヶ月の時に聴力のほとんど失いました。7歳のときに、ICODA(国際ろうと芸術センター)の『オズの魔法使い』でドロシーを演じ、舞台デビューを果たします。

映画デビュー作となった1986年の『愛は静けさの中に』でヒロインを演じ、いきなりアカデミー主演女優賞を受賞。その後は、『LAW & ORDER:性犯罪特捜班』『デスパレートな妻たち』『Lの世界』など、主にテレビを中心に様々な作品に出演しつつ、聴覚障害者の権利拡大などにも積極的に関わっています。

私生活では、1993年、警察官の一般男性と結婚し、子どもが4人います。またこれまで3冊の自伝を発表しており、中では、薬物中毒でリハビリ施設に入所した経験があること、また『愛は静けさの中に』で共演した故ウィリアム・ハートとの交際と性的虐待などを、赤裸々に告白しています。

4.兄:レオ・ロッシ/ダニエル・デュラント

ダニエル・デュラントは、1989年12月24日、ミシガン州デトロイト出身。生まれながらにして聴覚障害を背負い、また同じく聾者だった両親が依存症を抱えていたため、幼くして叔母の養子となりました。

2012年に、トロイ・コッツァーと同じ「デフ・ウェスト・シアター」に加わり、『シラノ・ド・ベルジュラック』やブロードウェイのリバイバル『春のめざめ』などへの出演で注目されます。本作への抜擢へと繋がりました。

2022年にはアメリカの人気コンペティション番組『ダンシング・ウィズ・ザ・スターズ』のシーズン31に出場しました。2023年には、同番組でパートナーを組んだダンサーのブリット・スチュアートと私生活でも交際中であることを公表しています。

5.マイルズ/フェルディア・ウォルシュ=ピーロ

フェルディア・ウォルシュ=ピーロは、1999年10月12日、アイルランド生まれ。ボーイ・ソプラノとして歌劇『魔笛』の公演に立つなど、非常に高い評価を得ます。2016年の映画『シング・ストリート 未来へのうた』で、映画主演デビューを果たしました。

その他の出演作にはNetflixで配信されているドラマシリーズ『ヴァイキング 〜海の覇者たち〜』などがあります。

母国アイルランドでは、教育啓蒙関連のユニセフ親善大使も務めています。

6.教師:ベルナルド・ヴィラロボス/エウヘニオ・デルベス

エウヘニオ・デルベスは、1961年9月2日生まれのメキシコ人俳優兼コメディアンです。母も、母国メキシコでは有名な女優でした。

メキシコでキャリアを積んだのち、2010年代ごろからアメリカの作品にもたびたび出演するようになります。主な作品には、『ジャックとジル』『ジオストーム』『くるみ割り人形と秘密の王国』などがあります。

私生活では、結婚と離婚を繰り返し、3人目の妻が2012年に結婚したメキシコ人女優のアレッサンドラ・ロザルドです。子どもは合わせて4人おり、そのうちの3人はすでに芸能界入りしています。



知られざる実話・トリビア6選

①エミリア・ジョーンズの役作り

コーダである主人公のルビーを演じるにあたり、エミリア・ジョーンズは、アメリカン手話、歌のレッスン、さらにトロール船の運転を学ぶため、役作りに9か月をかけたと言います。

その甲斐あって、自然な演技は絶賛され、30近い映画祭の女優賞にノミネート、複数の受賞を果たしたことは上記に述べた通りです。

②80年代、日本でも人気だったエミリアの実父アレッド・ジョーンズ

エミリア・ジョーンズの父アレッド・ジョーンズは、1980年代、ボーイ・ソプラノの美少年として、一時英国以外でも国際的な人気を博していました。

日本でも例外ではなく、その歌声が日産自動車などのテレビCMに使われたり、多くの女性ファンに支持され、本人自ら大同生命のコマーシャルに出演したりしました。

③キャスティング秘話

オスカーを受賞し、聾者俳優の第一人者だったマーリー・マトリンの起用が最初に決まりましたが、他の聾者のキャラクターも全員、聾者の俳優を起用することがマトリンからの条件でした。

製作側はその条件を受け入れ、トロイ・コッツァーとダニエル・デュラントの起用が実現したのです。

マトリン、コッツァー、デュラントは、「デフ・ウェスト・シアター」の手話ミュージカル『春のめざめ』ですでに共演していました。

④撮影ロケ地

撮影は、2019年8月から10月にかけて、マサチューセッツ州グロスターの街を中心に行われました。グロスターは、ボストンから車で45分ほどの小さな港町です。

また、ルビーらが飛び込んだり泳いだりする池は、同州ロックポートにある「Steel Derrick quarry」がロケ地です。

⑤サウンドトラックと選曲

エミリア・ジョーンズ自ら歌った数曲はもちろん、劇中のさまざまな音楽を収録したサウンドトラックも発売されており、おすすめです。

終盤、試験のステージで歌う歌は、米音楽界のレジェンド、ジョニ・ミッチェルの「Both Sides, Now(邦題:青春の光と影)」です。たくさんの歌手によってカバーされている名曲中の名曲であり、エミリア・ジョーンズも手話を交えながら見事な歌唱をみせています。

青春の光と影
ワーナーミュージックジャパン

⑥手話ミュージカル舞台化の企画が進行中!

2022年3月には、「デフ・ウェスト・シアター」と協力する形で、本作を手話ミュージカル舞台化する企画が進展中であることが明らかになりました。

同劇団のアートディレクターであるDJ Kursは、本企画にとても興奮しているとのコメントを発表しています。トニー賞候補にもなった同劇団のリバイバルミュージカル『春のめざめ』同様、手話による歌唱と、ライブでの実際の生歌を組み合わせたものになるようです。



『コーダ あいのうた』と合わせ、オリジナルの『エール!』もおすすめ

本映画が気に入った方は、ぜひ、リメイクのオリジナルとなった2014年のフランス映画『エール!』の鑑賞もおすすめします。

物語の大筋は同じですが、舞台はマサチューセッツ州の港町ではなく、フランスの片田舎。そのため、一家が漁師ではなく酪農を営んでいたり、さまざまなエピソードそのものは異なっていますが、大きな展開や結末の相違はありません。

主人公のポーラを、テレビの音楽オーディション番組で注目された新鋭ルアンヌ・エメラが演じ、映画初出演にして絶賛されました。ちなみに、『エール!』では、両親を演じた俳優は聴覚障害者ではありません。

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