映画『グランドフィナーレ』ネタバレあらすじ・キャスト・解説レビュー

グランドフィナーレ 映画

パオロ・ソレンティーノ監督の知性とセンスが光る、2015年公開の傑作映画が『グランドフィナーレ』です。

美しい映像、そしてハーヴェイ・カイテルやマイケル・ケインはじめ豪華キャストの競演も見どころとなっている本作について、あらすじやキャスト、魅力と隠れたテーマに迫りたいと思います。

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パオロ・ソレンティーノ監督のセンスが光る『グランドフィナーレ』

1.パオロ・ソレンティーノ監督について

メガホンをとったパオロ・ソレンティーノは1970年5月31日生まれ、イタリアのナポリ出身です。

1998年頃から短編映画の監督を手掛け、2001年に映画『One Man Up (L’uomo in più)』で長編デビューを果たすといきなりイタリアの権威ある賞を受賞しました。

カンヌ国際映画祭の常連となり、ついに2008年、『イル・ディーヴォ 魔王と呼ばれた男』で審査員賞に輝きます。

2013年の『グレート・ビューティー/追憶のローマ』は、ヨーロッパ映画賞作品賞、米アカデミー賞外国語映画賞など世界中の映画祭を席捲。本作『グランドフィナーレ』でも再びヨーロッパ映画賞作品賞と監督賞のW受賞に輝くなど、名実ともに世界的映画監督の一人となりました。

圧倒的な映像世界、また成熟を極めた知的センスあふれる展開と演出が特徴。

最近では、ジュード・ロウ主演のテレビドラマ『ヤング・ポープ 美しき異端児』も大きな話題をよんでいます。

2.あらすじ(ネタバレ)

スイスのアルプス山中にある高級ホテルに長期滞在している初老の男2人。高名な音楽家であるフレッドはほぼ引退状態であり、かたや、親友の映画監督ミックは、休暇の合間に、自身の最後の作品とするべく脚本を執筆しています。

無責任で、自由気ままな余暇を過ごしていたそんな2人を、それぞれ、思いもよらない出来事が襲います。

フレッドの秘書でもある娘レナの夫の不倫騒動、大女優ブレンダの突然の来訪などによって、はからずも覆い隠してきたもう一つの顔を鋭く指摘されてしまった2人が選んだ道は……。

以下、ネタバレ。

突然、夫から離婚を告げられた娘のレナは、ショックのあまり、激しく父の生き方を責めたてます。音楽優先で家族をかえりみなかったこと、性別を問わぬ幾多の浮気沙汰、そして今や重度の認知症らしき病でベニスの病院に入院した妻を放置していること、など……。

しかし、フレッドが、自身の代表曲である「シンプル・ソング」をエリザベス女王の前で指揮して欲しいという王室からの申し出を、頑なに拒否し続けている理由は、その曲が歌手だった妻のために書いた曲だったからでした。

一方、ミックを訪ねてきた女優のブレンダは、次回作への出演を拒否し、ミックはもう終わったと冷たく言い放ち、去っていきます。

ショックを受けたミックは自ら死を選ぶことに……。

フレッドは一人、妻を訪ね、「シンプル・ソング」演奏の舞台に立つのでした。

3.キャストと登場人物

フレッド・バリンジャー/マイケル・ケイン

ほぼ引退状態にある高名な音楽家がフレッドです。英王室から女王の前で代表曲「シンプル・ソング」を披露してほしいと再三依頼されていますが、断り続けています。

演じているのはイギリスを代表する名優マイケル・ケイン。『ハンナとその姉妹』と『サイダーハウス・ルール』で2度の米アカデミー賞助演男優賞はじめ、世界中でさまざまな賞を受賞している世界的スターです。

本作でもヨーロッパ映画賞の男優賞と名誉賞に輝きました。

ミック・ボイル/ハーヴェイ・カイテル

最後の作品製作に向け、スタッフを呼び寄せ、脚本の推敲をすすめる世界的映画監督がミックです。大女優のブレンダとは名コンビと言われた仲。フレッドとは大親友であり、息子がフレッドの娘レナと夫婦という身内でもあります。

演じているハーヴェイ・カイテルは、今や堂々たる風格すら漂うアメリカの名優です。『タクシードライバー』や最近の『アイリッシュマン』などマーティン・スコセッシ監督作品が有名ですが、他にも『パルプ・フィクション』や『ピアノ・レッスン』といった名作で独特の存在感を放つ唯一無二の俳優です。

レナ・バリンジャー/レイチェル・ワイズ

夫婦関係に悩むフレッドの一人娘レナをレイチェル・ワイズが演じています。

代表作には、米アカデミー賞助演女優賞に輝いた2005年のイギリス映画『ナイロビの蜂』や、2018年の『女王陛下のお気に入り』などがあります。

プライベートでは、「007」で知られるダニエル・クレイグと2011年に結婚しました。

ブレンダ・モレル/ジェーン・フォンダ

ミックに見出され、名コンビとなって大女優の階段をのぼりつめたものの、今は老いに直面し落ち目となったブレンダ・モレルをジェーン・フォンダが演じています。

『コールガール』と『帰郷』でアカデミー賞主演女優賞を2度受賞しているアメリカを代表する名女優のジェーン・フォンダですが、最近では、リリー・トムリンと組んだNetflixドラマ『グレイス&フランキー』が話題です。

ジミー・ツリー/ポール・ダノ

フレッドとミックが滞在しているホテルの客の一人がジミーです。俳優で、ヒットラーを演じる次回作の役作りに取り組んでいます。

演じているのはポール・ダノ。2006年の映画『リトル・ミス・サンシャイン』や、2007年の『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』などで独特の存在感を放つ実力派です。



『グランドフィナーレ』の解説・感想レビュー

パオロ・ソレンティーノ監督が、傑作『グレート・ビューティー/追憶のローマ』に続いて送り出したのが本作『グランドフィナーレ』。アカデミー賞外国映画賞を受賞した前作に勝るとも劣らない、映画ならではの世界を堪能した。

舞台は、スイスにある、医療スパを備えた滞在型高級リゾートホテルである。そこに滞在している音楽家のフレッド、そして映画監督のミックが主人公だ。

マイケル・ケインとハーヴェイ・カイテル扮する2人は、長年の友人であるばかりか、互いの娘と息子が夫婦という身内でもある。フレッドは、表舞台から退き、かつての名声を封印した日々を送っている。アシスタントも務める娘のレナの言葉を借りると「無気力」で、隠遁生活のような余生だ。かたやミックは、休暇のかたわら、若いスタッフたちを呼び寄せて新作『人生最後の日』のリライトを精力的に進めている。

両者ともタイプは違うが、ユーモアがあり、ときにスノッブで辛辣、世俗を達観した裕福な老人2人である。

ところが、おそらくいつもと変わらぬ休暇になるはずが、ふとしたことを契機に、想像もしなかった事態をみることになる。

おそらくフレッドは、自由な余生を送る表向きの姿とは裏腹に、妻の病以来、孤独と自責の念に苛まれた日々を送っており、ひた隠しにした本心を娘のレナにずばりと突かれてしまったに過ぎない。その証拠に、自身の代表曲「シンプル・ソング」の演奏を頑なに拒否し続けている。

そんなフレッドに比べると、いまだ現役で血気盛んだったミックを、終盤、ある絶望が襲う。きっかけは、長年のコンビで、次回作の主演にも決まっていた大女優のブレンダが、わざわざミックを訪ねてきたことから……。

ブレンダを演じたジェーン・フォンダ。独特の語り口と後姿だけで、強烈にその存在を印象付けた演技は、老醜を厚化粧で塗り固めたケバイ姿とともに、本作の見どころのひとつだ。

原題は「YOUTH」、若さ

過去と未来、人生において、両者はどんな意味を持つのか。とりわけ老いた2人にとってのYOUTHとは、もう取り戻せない過去と同義語である。2人がしばしば会話のネタにするギルダという女性は、まさにその象徴だ。

ところが、ホテルの医師がこんなことを言う。

YOUTHは外にあると……。

芸術的センスあふれる映像と音楽、夢とも現実ともつかぬ鮮烈なイメージの断片など、ソレンティーノ監督独自の世界観と感性は、『グレート・ビューティー』以来一貫している。

とりわけ自分が好きなのは、相反するものを対比させる、お得意の仕掛けだ。

本作では、過去と未来、老いと若さを象徴させるがごとく、例えば醜悪な老体に対してミス・ユニバースの人間離れした肉体、心地よいクラシック音楽に対し最先端のヒップ・ホップ、映画に対するテレビの存在など、その対比は実に鮮やかでセンスがいい。

そして、それらが大団円へとなだれ込むラストシーンが見事。

「シンプル・ソング」を異様なほどエモーショナルに歌い上げる実在のソプラノ歌手スミ・ジョー、病んでしまった妻の硬直した顔、ダンスする少女の穏やかで初々しい表情、それら女たちのカットバックから浮かび上がってくるのは、見事にYOUTHというものの本質だった。

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