『Fukushima50』キャスト/実在人物と事実/批判と評価/あらすじ

Fukushima50 映画

2011年3月11日、東日本を襲った大地震と巨大津波がもたらした福島第一原子力発電所における未曾有の大事故。

そのとき、現場ではいったい何が起こっていたのかを克明に調べ上げた門田隆将のノンフィクションを映画化したのが『Fukushima 50』です。

本記事では、そんな映画『Fukushima 50』について、事件概要とあらすじ、キャストやスタッフ紹介にくわえ、映画にまつわる知っておきたい5つの事実や評価などについてもご紹介したいと思います。

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映画『Fukushima50』が描く、福島第一原発の事故

東日本大震災、そして福島第一原子力発電所の大事故。

全世界を震撼させた危機的状況に、現場はどのように立ち向かったのか、知られざるその闘いを緊迫感あふれるタッチで描いた大作映画が2020年公開『Fukushima 50』です。

総勢40名近くにのぼる豪華キャストが名を連ね、真実と嘘、強さと弱さを浮き立たせる人間模様を綴ります。

映画の公開は、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言と重なり、休業となった映画館ではなく、4月17日から5月14日まで、異例の有料ストリーミング配信という形になりました。Blu-rayとDVDが発売されたのち、一部ストリーミングサービスでも配信。

テレビでは、2021年1月30日にWOWOWにて初放送。また、東日本大震災から10年となるその翌日の3月12日、日本テレビにて全編ノーカットで地上波放送も実現しました。

※タイトル『Fukushima50(フクシマ・フィフティ)』の意味とは?

事故により、当初約800人いた従業員のうち約750人は東京電力の指示により避難します。

被害を最小限に食い止めるため現場に残って闘い続けた約50人を指し、海外メディアが尊敬を込めて付けた呼称が「Fukushima 50」だったのです。

映画『Fukushima 50』のあらすじと事故概要

2011年3月11日:

午後2時46分、マグニチュード9.0、最大震度7を記録する日本における観測史上最大の大地震が発生します。さらにその後、太平洋岸にひき起こされた巨大津波によって沿岸の町に甚大な被害が出ると同時に、福島第一原発も全電源喪失に陥るのでした。

冷却装置不全で、このままではメルトダウン(炉心溶融)を起こし、東日本全域、いやそれ以上の、想像を絶する被害が出てしまう……。

所長の吉田はただちに本店と連絡をとります。ところが、本店の反応は鈍く、現場判断での迅速な対応を迫られた吉田は緊急事対策室を設置し、当直長の伊崎を中心とするメンバーたちと策を練ることに……。唯一残された手段は、原子炉内の圧力を下げる世界初の試み「ベント」しかないと結論づけるのでした。

3月12日:

突然、総理大臣が視察に来ることになり、現場はそのための対応に追われるばかりか、一刻を争う作業自体が中断を余儀なくされてしまいます。

慌ただしく総理が去り、周辺住民の避難も完了し、ようやくベントにかかります。複数のチームにわけて命がけの作業が続く中、午後3時36分には、1号機で水素爆発が発生。電源ケーブルが破損し、真水から海水に切り替えての注水作業が続けられます。

官邸の要請を受けた本店から、海水注入をやめるよう指示されますが、メルトダウンを恐れる吉田はひそかに継続する決断をするのでした。

3月14日:

本店がひたすらベントを催促してくる一方、現場は、難しく危険な作業に疲弊していきます。

そんな中、午前11時1分、恐れていた3号機の爆発も起きてしまいます。陸上自衛隊の協力によって現場の作業員が命からがら救出されるものの、吉田所長、伊崎ら現場の人間の間で意見の相違や不協和音も……。

このままもし2号機まで爆発したら、チェルノブイリの10倍の放射能が拡がってしまう……。

3月15日:

2号機に危機が迫る中、本店からは相変わらずベントの催促がくるばかり……。ついに吉田は協力会社などの作業員たちに避難命令を出し、緊急事態対策室に50名のみが残ることになります。

2号機に対して、残ったメンバーで懸命な処置が講じられ、また自衛隊のヘリによる空からの放水、かたや避難所には在日アメリカ軍による「トモダチ」作戦と呼ばれた支援が続きます。

4号機建屋内で火災発生もありましたが、2号機の爆発はなんとか防ぎ切り、ようやく最悪の事態は回避されたのでした。

以下、映画の結末(ネタバレ注意)

最悪の危機を回避した伊崎らが、避難所にやってきて家族と再会します。周囲に謝罪する伊崎に対し、避難者は感謝の気持ちを伝えるのでした。

時が過ぎ、2014年の春。

立ち入り制限区域内にあった富岡町の桜並木の下で、吉田所長からの手紙を読み、思いをはせる伊崎の姿で映画は終わります。

吉田は、それより1年弱前の2013年7月19日、食道癌で亡くなっていたのです。

主要登場人物とキャスト

福島第一原発<中央制御室・緊急時対策室>

・所長・吉田昌郎(渡辺謙)
・1・2号機当直長・伊崎利夫(佐藤浩市)
・5・6号機当直長・前田拓実(吉岡秀隆)
・管理グループ当直長・大森久夫(火野正平)
・第2班当直長・平山茂(平田満)
・第2班当直副長・井川和夫(萩原聖人)
・発電班長・野尻庄一(緒形直人)
・防災安全部部長・佐々木明(小野了)
・緊急時対策室総務班・浅野真里(安田成美)

東電本店

・東都電力フェロー・竹丸吾郎(段田安則)
・緊急時対策室総務班・小野寺秀樹(篠井英介)

官邸

・内閣総理大臣(佐野史郎)
・内閣官房長官(金田明夫)
・原子力安全委員会委員長(小市慢太郎)
・経済産業大臣(阿南健治)

その他

・伊崎利夫の娘・遥香(吉岡里帆)
・伊崎の妻・智子(富田靖子)
・伊崎の父・敬造(津嘉山正種)
・遥香の恋人・滝沢大(斎藤工)
・前田拓実の妻・かな(中村ゆり)
・避難住民・松永(泉谷しげる)
・陸上自衛隊陸曹長・辺見秀雄(前川泰之)
・在日米軍将校・ジョニー(ダニエル・カール)



スタッフ紹介

監督:若松節朗

メガホンをとった若松節朗監督は、『振り返れば奴がいる』や『やまとなでしこ』など、一世を風靡したテレビドラマの演出で広く知られたのち、本格的に映画界にも進出しました。2000年公開の映画『ホワイトアウト』、2009年の『沈まぬ太陽』、そして本作により3度、日本アカデミー賞優秀監督賞を受賞しています。

渡辺謙は『沈まぬ太陽』、佐藤浩市は『ホワイトアウト』や『空母いぶき』などに出演しており、すでによく知った関係です。

脚本:前川洋一

前川洋一は、1993年に映画『ゴト師株式会社 悪徳ホールをぶっ潰せ!』で脚本家デビューしたのち、主にテレビドラマを中心にさまざまなヒット作・話題作を手掛けてきました。

代表作には、『下町ロケット』、NHK大河ドラマ『軍師官兵衛』、WOWOWのテレビドラマ版『沈まぬ太陽』などがあります。2020年の大河ドラマ『麒麟がくる』の執筆陣にも名を連ねていました。

音楽:岩代太郎

東京芸大音楽学部作曲科・同大学院修士課程をともに首席で卒業し、以後、映画やテレビドラマなど多彩な分野の音楽を手がける人気作曲家として活躍しているのが岩代太郎です。

映画では、『血と骨』『春の雪』『利休にたずねよ』などの邦画にくわえ、韓国映画『殺人の追憶』や中国映画『レッドクリフ』など、その活動範囲は世界的。テレビドラマでは朝ドラ『あぐり』や大河ドラマ『義経』などの音楽が有名です。

本作の演奏は、初の映画音楽となった世界的ヴァイオリニストの五嶋龍、チェリストの長谷川陽子をソリストに東京フィルハーモニー交響楽団が担当。またイギリスのテンプル教会少年聖歌隊による合唱も感動的で、サウンドトラックも非常に高い評価を得ています。

原作は門田隆将のベストセラー小説

映画『Fukushima 50』の原作は、門田隆将(かどたりゅうしょう)が執筆し、第44回大宅壮一ノンフィクション賞候補にもなった『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発』です。

門田隆将は、新潮社の編集者時代からすでに、『甲子園への遺言 伝説の打撃コーチ高畠導宏の生涯』でミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞するなどノンフィクション作家として活動していましたが、退社後はより精力的にさまざまな骨太の著作を発表しています。

代表的な作品に、『この命、義に捧ぐ 台湾を救った陸軍中将根本博の奇跡』、『なぜ君は絶望と闘えたのか―木村洋の3300日』、『新聞という病』、新型コロナをとりあげた『疫病2020』などがあります。



映画『Fukushima 50』について知っておきたい5つの事実

①登場人物はすべて実名?モデルの人物

実名なのは、すでに他界している吉田昌郎氏のみで、その他多くは仮名になっています。ただし、家族構成など一部はフィクションです。

また、官邸側の人間は、役職名だけで仮名すら出てきませんが、下記の人物がモデルになっていることは言うまでもありません。

内閣総理大臣→菅直人
内閣官房長官→枝野幸男
原子力安全委員会委員長→班目春樹
経済産業大臣→海江田万里

②映画『Fukusima 50』のBlu-ray豪華版が必見なわけ

2020年11月6日に映画のBlu-ray&DVDが発売。そのBlu-ray豪華版に、原作者の門田隆将と、モデルとなっている実在の人物たちによるオーディオ・コメンタリーが特典としてついているのです。

出演しているのは、佐藤浩市が演じた伊崎利夫のモデルとなっている伊沢郁夫氏と曳田史郎氏、平田満が演じた平山茂のモデルとなっている平野勝昭氏、安田成美が演じた浅野真理役のモデルとなっている佐藤眞理氏の4名。

映画の各シーンに、当事者が加えるなまなましい説明と解説は必見です!

③感動的なラストシーンの撮影場所は?

伊崎が桜を見上げる感動的なラストシーンは、CGではなく、実際に帰還困難地域となっている現地で本物の桜並木のもと、撮影されました。

その他の撮影が全て終わってから約2カ月後であり、前日が雨、翌日が雪という奇跡のようなタイミングで撮影が執り行われたようです。

ちなみに、原発内の中央制御室などは、長野に大きなセットを組んで撮影されました。

④映画製作に東京電力は関与せず

劇中では、当事者の電力会社の名前は東都電力になっています。

実際、東京電力自体は、本作の製作には一切関わっておらず、協力企業にすら名を連ねていません。

福島第一原発の廃炉作業はいまだ継続しており、センシティブで難しいさまざまな問題が山積みであることを物語っているのかもしれません。

⑤吉田調書と朝日新聞の誤報

2014年5月、政府事故調による吉田所長の聴取を記録した、いわゆる「吉田調書」を朝日新聞が独占入手したとし、その記事の中で「所員の9割が吉田所長の命令に違反して撤退した」と報道します。

それに対し、門田隆将が誤報だと主張。

朝日新聞側は当初、法的処置を検討するとともに、訂正謝罪を要求するなど断固とした強気な対応をとっていましたが、9月11日になって態度を一変します。木村伊量社長が記者会見で「吉田調書」の記事を全面撤回すると発表し、謝罪に至りました。

映画『Fukushima 50』に対する評価・批判は?

ストリーミング配信後の劇場カンバック上映は、2020年7月、渡辺謙や佐藤浩市も舞台挨拶に立ち、福島県郡山で開催されました。9割近くが感動のコメントを残し、否定的な感想はほとんどなかったようです。

その後もおおむね高評価が大勢を占めていますが、原発や政治という賛否両論分かれる題材ゆえ、一部に批判的な声が出るのは致し方ないことです。

映画の内容そのものを楽しみ評価するというより、原発推進派VS反対派、保守派VSリベラル派といった思想や主義の対立が、評価する立場に色濃く表れてしまっているという指摘もあります。

ブルーリボン賞では見事最優秀作品賞を受賞。日本アカデミー賞でも、作品賞や主演男優・助演男優・助演女優はじめ、なんと最多12部門でノミネートされ、6部門で受賞を果たしました。

『Fukushima5』と合わせて観たい、Netflixの映画『THE DAYS』

2023年6月1日には、Netflixがオリジナル映画『THE DAYS』を世界同時配信。こちらも、同じく福島原発事故を描いた作品であり、所長を役所広司が演じています。

映画『Fukushima50』と合わせて視聴してみてはいかがでしょうか?

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