映画『ムーンライト』あらすじ・キャスト・感想・解説レビュー

ムーンライト 映画

第89回アカデミー賞作品賞に輝いた2016年の映画『ムーンライト』。

貧困の母子家庭に生まれた一人の黒人ゲイの成長と愛を、少年期・青年期・成人期の3つの時代に分け、それぞれ別の3人の俳優が演じる3部構成で織り上げた感動ドラマです。

本記事では、そんな傑作『ムーンライト』について、あらすじ・キャストの紹介はもちろん、感想と見どころポイントをレビュー形式でまとめてみました。

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ゲイ映画の新たな傑作『ムーンライト』

ゴールデングローブ賞では5部門のノミネートで作品賞受賞、アカデミー賞では8部門ノミネートで作品賞・助演男優賞(マハーシャラ・アリ)・脚色賞の3部門で受賞を果たしました。

キャスト全員が黒人の映画として初、LGBTQがテーマの映画として初のアカデミー作品賞です!

あらすじ

マイアミにある貧困地域に、麻薬中毒の母ポーラと暮らす内向的な少年シャロン。

心を許すのは親身になって心配してくれる麻薬ディーラーのフアンとフアンの恋人テレサだけ。また、友人のケヴィンに特別な感情を抱きつつも、それすら抑え込むことで、次第に周囲から孤立を深めていくのでした。

本当の自分自身を隠し、そんな中で必死に居場所を求めて苦悩するシャロンの成長を、「1.リトル」「2.シャロン」「3.ブラック」の時代別3部構成で描きます。

主要登場人物とキャスト

1.シャロン/トレヴァンテ・ローズ他

ナイーブで繊細な本作の主人公がシャロンです。幼少期をアレックス・ヒバート、ティーンエージャーの時期をアシュトン・サンダース、成人期をトレヴァンテ・ローズが演じています。

武骨で屈強な男に変貌したシャロンを演じたトレヴァンテ・ローズは、学生時代のトップ陸上選手から転身した異色の俳優です。大学卒業後の2012年に短編映画で俳優デビュー。本作『ムーンライト』でブレイクを果たしました。

その後は、映画『ザ・プレデター』や『バード・ボックス』など話題作に出演しているほか、カルバン・クラインのキャンペーン・モデルも務めています。

2.ケヴィン/アンドレ・ホランド他

シャロンの幼なじみにして親友となるものの、ティーンの頃のある事件がきっかけとなって離れていくもう一人の主人公とも言える存在がケヴィンです。幼少期をジェイデン・パイナー、ティーン期をジャレル・ジェローム、成人期をアンドレ・ホランドが演じています。

シャロンが再会する落ち着いた大人の男となったケヴィンを演じたアンドレ・ホランドは、ニューヨーク大学で美術の修士号をとり、イギリス留学経験もあるインテリ派俳優です。11歳のとき、舞台『オリバー!』に出演経験がありますが、正式には2006年にテレビドラマ『ロー&オーダー』で俳優デビューしました。

『ムーンライト』と同年のドラマ『アメリカン・ホラー・ストーリー』シーズン6にもレギュラー出演するなど、2016年は大きな飛躍の年になりました。

3.フアン/マハーシャラ・アリ

親身になって幼いシャロンの面倒をみる麻薬ディーラーのフアンを演じたマハーシャラ・アリは、第1部のみの出演にも関わらず、見事アカデミー賞助演男優賞に輝きました。

父もブロードウェイの舞台に立つ俳優であり、当初はテレビドラマを中心に活躍していました。が、2008年の映画『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』における演技が高い評価を受け、以後、大作や話題作に抜擢されるようになります。

2019年には『グリーンブック』で2度目のアカデミー賞助演男優賞に輝くなど、今最も脂ののった実力派黒人俳優の一人です。

4.ポーラ/ナオミ・ハリス

薬物中毒などさまざまな問題を抱えるシャロンの母ポーラをイギリス人女優のナオミ・ハリスが演じています。

ナオミ・ハリスは、ケンブリッジ大学卒業後に演技を学び、1995年に映画デビューしました。『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのティア・ダルマ役、『007』シリーズ「スカイフォール」から登場しているイヴ役などが有名です。

5.テレサ/ジャネール・モネイ

フアンの心優しい恋人テレサを演じたのは、本作が映画女優デビューとなったミュージシャンのジャネール・モネイです。

ジャネール・モネイは、2007年に最初のソロアルバム『Metropolis』をリリースしてグラミー賞にノミネート。以後、独特のコンセプトに基づいたアルバムを発表し続け、非常に高い評価と人気を得ています。

モデルの顔も持ち、女優としては『ムーンライト』と同年公開の『ドリーム』にも出演しています。

監督バリー・ジェンキンスについて

メガホンをとったバリー・ジェンキンスは、2008年に『メランコリーの妙薬』で映画監督デビュー。低予算の自主製作映画でしたが、インディペンデント系の映画祭では非常に高い評価を得ました。

8年のブランクを経て2作目の監督作となったのが本作『ムーンライト』。本作の世界的ヒットで、翌2017年にはTIME誌によって「世界で最も影響力のある100人」に選ばれています

2018年には、3作目となる『ビール・ストリートの恋人たち』を発表。ジェームズ・ボールドウィンの小説を原作にしており、こちらもレジーナ・キングのアカデミー助演女優賞など、数々の賞に輝くなど、今をときめく黒人映画監督の一人となりました。



『ムーンライト』の解説・感想レビュー

本命と言われていた『ラ・ラ・ランド』をおさえ、アカデミー作品賞に輝いた『ムーンライト』。両方を観ると、疑問を挟む余地もないほど妥当な選択だったと思える。

貧困地区に麻薬常習者の母と暮らす、ナイーブなゲイの少年・シャロン。唯一の友達はケヴィン。この2人が、少年期から20代の大人になるまでを、それぞれ3人の役者が演じていくという3部構成だ。

タレル・A・マクレイニーによるパーソナルな戯曲を、長編2作目のバリー・ジェンキンスが監督。

マクレイニーもジェンキンスも、ロケ地にもなった同じマイアミの貧困地区出身であり、主人公のシャロンと似たり寄ったりの家庭で育ったという根幹を共有し合っていることが、作品の大きな力となっていることは間違いない。

極度に内向的でイジメの対象であり続けたシャロンが、ある事件を介し、大きく変貌して登場するのが、トレヴァンテ・ローズが演じる第3部だ。

痩せてひ弱だった外見が、強面の屈強なマッチョへと見違えるような変貌を遂げている。

多くのゲイにとって、筋肉とはそもそも、内面を覆う「隠れ蓑」であり、他者と向き合うときの「仮面」であったことを、あらためて思い出させる。

外見ばかりか、仕事は麻薬の売人である。

しかし、それら厳つい表向きの顔とは裏腹に、内面は少年の頃のままであり、幼馴染から始まったケヴィンのことを想う気持ちにも変わりはない。

ここに至って、本作が一人の少年の半生を描く物語であるばかりか、実は、この上なくピュアなラブストーリーだったことに気づかされるのである。

突然、ケヴィンからの電話で再会する2人。しばらく微妙な距離を保ちながら、やがて邂逅し、心を通わせるシーンがとてもせつない。

その意味で、個人的には、第3部が最も好きだった。

全米を代表する陸上選手だったというトレヴァンテ・ローズの、武骨さと繊細さを合わせもった演技も魅力的だが、 アンドレ・ホランドが演じる成熟したケヴィンが強く印象に残る。

このケヴィンの穏やかな存在感は、救い難い展開を見せる本作を優しく照らす、言わば「光」である。

シャロン少年の人生を大きく変えることになるドラッグの売人フアンを演じ助演男優賞に輝いたマハーシャラ・アリ、母親を演じたナオミ・ハリスももちろん秀逸だったのだが、自分はどこまでも静かにケヴィンを演じ切ったホランドに軍配をあげたい。

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