映画『タクシードライバー』解説・トリビア12選とロケ地・考察

タクシードライバー映画

1976年に公開された、アメリカ映画史に残る傑作『タクシードライバー』。

本記事では、作品の概要、トリビア、ロケ地などについて解説したのち、考察を交えてレビューしたいと思います。

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ロバート・デ・ニーロとマーティン・スコセッシの金字塔映画『タクシードライバー』

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タクシードライバー

ニューヨークを舞台に、1人のタクシードライバーの孤独と怒りを描き、カンヌ国際映画祭パルム・ドールに輝いた名作『タクシードライバー』。1994年には、アメリカ議会図書館が選出するアメリカ国立フィルム登録作品の殿堂入りを果たしています。

監督マーティン・スコセッシ、脚本ポール・シュレイダー、音楽バーナード・ハーマンらスタッフ陣はもちろん、ロバート・デ・ニーロ、ジョディ・フォスター、シビル・シェパードら俳優陣にとっても、不動の代表作となっています。

■あらすじ

ベトナム戦争から帰還し、タクシードライバーの職を得たトラヴィス。不眠症と孤独、疎外感に苛まれつつ、ポルノ映画館で時間をつぶす日々……。

そんな中で見つけた、大統領候補の選挙事務所で働く美しい女性ベツィ。しかし、そのベツィから最初のデートで冷たく拒絶され、一方、ストリートでは、あくどいヒモに雇われるまだあどけない娼婦アイリスに出会います。

やがて、トラヴィスはそうした汚れた人間と社会に対する怒りに駆り立てられ、次第に狂気を帯びていくのでした。

■主要登場人物とキャスト

トラヴィス・ビックル/ロバート・デ・ニーロ:ベトナム帰還兵のタクシードライバー
ベツィ/シビル・シェパード:パランタイン上院議員選挙事務所の事務員
アイリス/ジョディ・フォスター:売春婦
スポーツ/ハーヴェイ・カイテル:売春のヒモ

映画『タクシードライバー』にまつわるトリビア12選

①映画は実話?トラヴィスのモデルは?

脚本を手掛けたポール・シュレイダーの若き日実体験が、物語の原案になっていることは有名です。シュレイダーは、ロサンゼルスに住んでいた20代の頃、失業し、友達もおらず、最初の結婚が破綻した上、ガールフレンドからも振られ、精神的にどん底におちいていた時期がありました。

トラヴィスのように、たびたびポルノ映画館に通い、銃を持つことに囚われていたようです。レストランの配達員として働きながら、これならタクシーの運転手ができるかもしれないと考えていました。

こうした体験はもちろん、当時感じていた孤独感が、トラヴィスというキャラクターの格になったと語っています。

また、1976年に起きた、ジョージ・ウォレス大統領選候補狙撃事件の犯人アーサー・ブルマーの手記に着想を得たことも知られています。

ちなみに、オリヴァー・ストーン監督は、ベトナム帰還兵であり、帰国後ニューヨークで、アーミージャケットを着たタクシードライバーをしていたことから、自身がモデルの1人だと語っているようです。

②監督候補にあがったのは?

マーティン・スコセッシに決まる前、ブライアン・デ・パルマが監督を手掛けることになっていました。パルマは、メラニー・グリフィスをアイリス役にするつもりでしたが、両者ともうまくいかず、その結果、スコセッシに白矢が立ったのです。

ちなみに、その頃のアイリス役の最有力候補はリンダ・ブレアでした。

③トラヴィス役の候補となった俳優

ポール・シュレイダーは、ジェフ・ブリッジスをトラヴィス役にイメージして、脚本を執筆していたと告白しています。

その通り、ジェフ・ブリッジスはもちろん、ダスティン・ホフマン、ジャック・ニコルソン、バート・レイノルズ、アル・パチーノ、ジョン・ボイトらそうそうたる面々が候補になりました。

④アイリス役の候補となった女優

アイリス役の女優を選ぶため、全米で250人近い女優のオーディションが行われました。最終候補に残った5人は、ジョディ・フォスター、マリエル・ヘミングウェイ、ジェニファー・ジェイソン・リー、ヘザー・ロックリア、クリスティ・マクニコルです。

既述したとおり、それ以前には、リンダ・ブレアとテイタム・オニールが有力候補でした。

⑤ベツィ役の候補となった女優

ジェーン・シーモア、グレン・クローズ、スーザン・サランドン、メリル・ストリープらがオーディションを受けたと言われています。

また、ミア・ファローがベツィ役を強く熱望していたようです。

⑥ジョディ・フォスターの実姉が出演

ジョディは当時まだ12歳だったため、撮影がなかなか難しいシーンでは、ジョディの19歳の実姉コニー・フォスターがボディダブル(代役)として演じていました。

またジョディは、娼婦を演じるにあたり、人格形成上支障がないかどうか、専門のカウンセリングを受けることが求められました。



⑦アイリスの娼婦仲間の女優は?

アイリスがつるむもう一人の若い娼婦は、女優でなく、ジョディ・フォスターが役作りのために会った実在の娼婦です。

⑧ロバート・デ・ニーロの恋人が出演

トラヴィスと会話を交わす、ポルノ映画館の売店で働く不愛想な女性は、女優のダイアン・アボットです。

当時、プライベートでロバート・デ・ニーロと交際しており、二人は1976年に結婚しました。その後、一女をもうけましたが、1988年に離婚しています。

⑨マーティン・スコセッシは2度登場

妻の浮気に嫉妬するタクシーの乗客として、監督のマーティン・スコセッシが出演していることは有名ですが、実はもう一カ所、カメオ出演しているシーンがあります。

ベツィが初めて登場し、選挙事務所に入っていくスローモーションのシーンで、玄関口に座り込んでいる男性がスコセッシです。

⑩トラヴィスの有名なセリフはアドリブ

トラヴィスが、鏡に向かって呟く有名なセリフ「俺に用か?(You talkin’ to me?)」は、完全にロバート・デ・ニーロのアドリブです。

アメリカ映画の中の最も有名なセリフの一つに選ばれたこともあります(2005年にアメリカ映画協会選出の10位、2007年に映画雑誌「Premiere」が8位に選出)。

ブルース・スプリングスティーンがライブで観衆に向かって放った言葉からとられたものだと言われています。

⑪ジョン・ヒンクリーの事件

この映画に強い影響を受けたジョン・ヒンクリーは、1981年3月30日、当時のロナルド・レーガン大統領の狙撃未遂事件を起こしました。

ヒンクリーは、映画を見て、アイリスを演じたジョディ・フォスターのストーカーとなり、トラヴィスがパランタイン上院議員の暗殺を企てるという物語をそのまま実行に移したのです。ちなみに、ヒンクリーは、精神異常として無罪となり、病院に収監されていましたが、2016年7月に釈放されています。

⑫音楽を担当したバーナード・ハーマンの遺作

スコセッシから依頼の電話を受けたバーナード・ハーマンは、車の映画だと勘違いし、最初は辞退しましたが、脚本を読んで承諾しました。

体調の無理を押してスタジオに足を運び、録音が終わった数時間後の1975年12月24日に死去。本作が遺作となり、追悼の言葉が映画にクレジットされています。

映画公開40周年を記念し、5人が再集結!

2016年には、映画公開40周年を記念し、トライベッカ・フィルム・フェスティバルにおいて、スコセッシ監督、ロバート・デ・ニーロ、ジョディ・フォスター、シビル・シェパード、ハーヴェイ・カイテルの5人が一堂に再集結しました。

上記は、そのままテレビ番組に出演したときのもので、打ち解けた雰囲気の中、当時の思い出などを語っています。

ロケ地の現在は?

映画が撮影されたのは、およそ50年近く前であり、舞台となったタクシー会社やドライバーが集うダイナーなど、ロケ地の建物の多くは現存していません。

①トラヴィスが働くタクシー会社

ロケ地に使用された建物(57th Street, 11th Avenue)は完全に再開発され、現在はニューヨーク市衛生局の建物になっています。

ハドソン川側の通りは、トラヴィスがオフィスを出て歩くシーンとしてたびたび登場しますが、上記写真の通り、周囲も一変しており、当時の面影はまったく残っていません。

②アイリスが客を取る部屋

そんな中、今も残っているロケ地は、アイリスが売春の客をとる部屋がある建物です。トラヴィスが銃撃事件を起こす場所でもあります。イースト・ヴィレッジの226 East 13th Streetにあります。

また、スポーツがいつも立っているのは、数軒隣の204 East 13th Streetの玄関で、こちらも現存しています。

③トラヴィスがベツィを初デートに連れていくポルノ映画館

ポルノ映画館「Lyric Theatre」(214 West 43rd Street)も現存しています。

ただし、大規模改修され、現在は芝居やミュージカルの劇場になっています。2022年3月現在、舞台『ハリーポッターと呪いの子』がロングラン上演中です。

ラストシーン考察<ネタバレ>

銃撃してアイリスを解放後、ヒーローとなったトラヴィスが再びタクシードライバーとなって、ベツィを乗せるラストシーンについて、死にゆくトラヴィスの夢であると解釈する一部批評家もいます。

しかし、それがおそらく正しくないことを証明するかのように、2005年、トラヴィスのその後を描く続編の企画が、スコセッシとデ・ニーロから持ち上がっています。実際、2013年にはポール・シュレイダーによる脚本の第一稿が完成したようですが、満足のいくものではなく、実現に至っていません。

ベツィを下車させたあと、車内でトラヴィスが一瞬垣間見せる不思議な視線について、スコセッシは、やがてトラヴィスが「時限爆弾」のように、再び怒りを爆発させることになる予感を現したものだと語っています。



映画『タクシードライバー』の伏線考察と感想レビュー

何度観ても古さを感じさせず、映像、脚本、音楽、役者、どれをとっても映画史に燦然と輝く名作『タクシードライバー』。

大都会、ニューヨーク。
光と影、ネオン、雑多な人々を映すタクシーのフロントミラー……。
トム・スコットのけだるいサックスが流れるオープニング・クレジットすら、もはや芸術的な美に到達していると自分は思う。

主人公は、ロバート・デ・ニーロ演じるトラヴィス。
堕落した都会への失望、孤独、金と欲望にまみれた世俗に対する怒りが、次第に狂気を帯び、過激な行動へと駆り立てていく。
ベトナム戦争における海兵隊員としての過酷な体験が、彼の内面に底知れぬ暗い影を落としているのだ。

そんなトラヴィスの行動に火をつけるのが、シビル・シェパードとジョディ・フォスターという、完璧なキャストが演じる二人の女である。

次期大統領候補の選挙事務所で働くベツィ。
美しく、知的でクールな彼女に一目惚れしたものの、デートでポルノ映画館に連れて行ったことで激しく拒絶される。人が変わったような冷淡な態度にトラヴィスは絶望とも言える、裏切られた思いを抱く。

もう一人は、家出し、少女売春をしているアイリス。
ヒモにたぶらかされ、罪悪感などないように見えて、その心奥には未だ幼い少女の純粋さがあることをトラヴィスは信じ、なんとしても救い出したいと思う。

ついに死を覚悟して武装し、行動に出たトラヴィスは、大統領候補の暗殺は未遂に終わるものの、アイリスの救出には成功する。その結果、皮肉なことに、社会から英雄だと崇められる。

一夜でヒーローとなったトラヴィスに、再び擦り寄ってきたベツィが、タクシーに乗り込んできて誘惑しようとするのだが、そんなベツィは彼にとって、もはや打算に満ちた、都会の薄汚れた偽善以外の何者でもないのである。

ベツィを降ろし、再び夜の街を走るタクシーにエンドロールが重なる。
フロントミラーに映る虚像と実際の夜景が、画面を半々に分断しているその映像が象徴するのは、まさにトラヴィスという人間そのものだ。

最初のデートのとき、ベツィは、クリス・クリストファーソンの歌から引用し、トラヴィスのことをこう形容している。

「事実と作り話が半々の歩く矛盾」

つまり、何気ないこの言葉は、重要な伏線になっているともいえ、現実と理想の狭間で次第に狂気をまとう、トラヴィスの危うい本質を、ベツィはこのとき既に女の直観で見抜いていたのである。

必見のコレクターズ・エディション版『タクシードライバー』

35周年記念にリリースされたコレクターズ・エディションには、マーティン・スコセッシとポール・シュレイダーによる、オーディオ・コメンタリーが付録としてついており、映画の裏話を知る上でも、ファンの方は必見です。

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