世界三大映画祭/アカデミー賞/エミー賞/トニー賞などの違いと傾向

映画祭・アカデミー賞 その他

気になった映画やドラマについて詳しく調べると、さまざまな賞の受賞歴を知ることができます。

しかし、あまりにもたくさんの賞がありすぎて、誰の評価なのか、どの賞に権威があるのかなど、よくわからなくなりませんか?

そこで、ここではエンタメを【1】映画、【2】ドラマ、【3】演劇、【4】音楽の4つのジャンルに分け、知っておきたい海外の権威ある賞とその特徴・違いを整理し、できるだけわかりやすく説明したいと思います。

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映画・ドラマ・演劇・音楽、4つのジャンル別に紹介

4つのジャンルに分け、やはりショービジネスの中心である米国の賞を軸に、さらに他国の権威ある国際的な賞まで紹介します。

一覧表で、なるべくシンプルにまとめてみました。

【1】映画

1.世界三大映画祭

国際映画製作者連盟(IFFPA)は、2020年現在、コンペティション部門において、15の国際映画祭を認定しています。その中でも世界的に広く知られ、権威があるのとされるのが「世界三大映画祭」です。

創設開催月最高賞重視傾向特徴
カンヌ国際映画祭19465月パルム・ドール作家性国際見本市を同時開催
ヴェネツィア国際映画祭19328月-9月金獅子賞芸術性国際芸術祭に起源
ベルリン国際映画祭19512月金熊賞社会性第三国の映画に注目

ちなみに、モスクワ国際映画祭を加えて、世界四大映画祭とする分類もありますが、その規模と歴史からみて、三大映画祭とするのがより一般的です。

1-1.カンヌ国際映画祭

映画の世界三大マーケットの一つとなっている国際見本市も同時開催されるため、世界中から映画関係者やメディアが集まる最も大規模な映画祭です。

最高賞のパルム・ドールとは別にグランプリもあり、また時代とともに優劣も変わったために混同しがちですが、現在は、パルム・ドールに次ぐ二席の扱いがグランプリであり、審査員特別賞とも呼ばれています。

メインのコンペティション部門以外にも、インディペンデント系の作品などを対象とする「ある視点」部門や、LGBTQ映画に与えられる「クィア・パルム」など独立系の賞も多数あります。

1-2.ヴェネチア国際映画祭

世界的に有名な国際美術展ヴェネツィア・ビエンナーレの第18回において、映画部門としてスタートしたのが起源であるため、芸術性を重視する特徴を持つのがヴェネチア国際映画祭です。

日本映画との相性もよく、1951年の第12回に黒澤明の『羅生門』が 金獅子賞を受賞して以来、これまで多数の賞を受賞してきました。1950年代以降の日本映画が世界中で高く評価される最初の旗振りとなった映画祭です。

1-3.ベルリン国際映画祭

三大映画祭の中では唯一大都市で開催されることから、多く観客動員数で知られる映画祭です。公式部門は6つあり、それぞれ個別ディレクターのもと国際審査員が選出にあたります。

一般に、社会派の作品が高く評価される傾向が強いとされつつも、実際はバラエティに富んでいます。

以前は、欧米作品の受賞が顕著でしたが、2000年以降は、ペルー、イラン、トルコ、イスラエルなど第三国の作品が選出される傾向も強くなっています。日本映画『千と千尋の神隠し』が金熊賞に選ばれたのも2002年です。

2. アメリカの映画賞

創設開催月審査特徴・傾向
アカデミー賞19292or3月アカデミー会員通称オスカー。アメリカ映画の祭典でありながら国際映画祭以上の影響力。商業性・エンタメ性を重視。
ゴールデングローブ賞19441月外国人映画記者協会映画とテレビドラマ両方、ジャンルも細分化。アカデミー賞の前哨戦の位置づけ。
全米映画批評家協会賞19661月映画批評家アカデミー賞よりは、芸術性や作家性を重視。玄人志向。
全米映画俳優組合賞(SAG)19951月俳優組合映画とテレビドラマ両方。歴史は比較的新しいものの、アカデミー賞の行方を占う賞として重要視。

2-1.アカデミー賞(オスカー)

前年1年間にアメリカ国内で公開された作品があくまでも対象であり、外国映画賞をのぞいてほぼ米英映画に限られていますが、三大国際映画祭以上の歴史と権威、影響力をもった賞であることは言うまでもありません。また、作品や役者のみならず、裏方のスタッフにも各賞が授与されるなど、アメリカ映画の健全な育成を目的としています。

ただし、国際映画祭と異なるのは、アメリカ国内の社会状況や世相、映画会社のパワーバランスなど政治的な思惑も選出に深く影響していることです。

最近は、黒人やLGBTQなどマイノリティ軽視が非難されたり、世界中のテレビで生放送される授賞式の視聴率が低下傾向にあるなど、新たな波が押し寄せているのも確かです。

オスカー像が授与されることから、アカデミー賞自体が「オスカー」とも呼ばれますが、その名の由来には諸説あります。

2-2. ゴールデングローブ賞

映画とテレビドラマの両方を網羅する賞であり、しかも、ドラマ部門、ミュージカル・コメディ部門、テレビ映画部門など、細分化されていることも特徴です。

約6000人とされるアカデミー会員に対し、選出を行うハリウッド外国人映画記者協会のメンバーは100人に満たず、前哨戦と言われつつも、その好みや視点の違いが露骨に出ることもあります。

2-3. 全米映画批評家協会賞

こちらは批評家が選ぶだけあって、商業性よりも芸術性や作家性を重んじる傾向があります。つまり、玄人受けする作品が選ばれやすい賞だと言えるでしょう。

アメリカ映画に限らず、外国映画が最優秀作品賞に選ばれることも珍しくありません。

2-4. 全米映画俳優組合賞(SAG)

監督協会や脚本家組合など、業種別の組合員が選ぶ賞はいくつかありますが、中でも最も注目されているのが全米映画俳優組合賞です。一般にSAGと呼ばれており、その性質上、スタッフに与えられる賞はありません。

こちらも映画とテレビドラマの両方を網羅し、授賞式やレッドカーペットもアカデミー賞に劣らず華やかです。選出メンバーがアカデミー会員と重複しているため、アカデミー賞の行方を占う賞として注目されています。

3. ヨーロッパ・アジア各国の映画賞

アメリカのアカデミー賞に相当する、ヨーロッパ・アジア各国で権威のある映画賞には以下のものがあります。

創設特徴
セザール賞フランス1976セザールとは彫刻家の名前。
英国アカデミー賞(BAFTA)イギリス1947米アカデミー賞受賞作と重なることあり。
ゴヤ賞スペイン1987ゴヤとは画家の名前。
ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞イタリア1956ドナテッロのダヴィデ像がトロフィー。
金鶏百花映画祭中国1992中華圏三大映画賞の1つ。
大鐘賞韓国1962韓国版アカデミー賞。青龍映画賞と双璧。
金馬奨台湾1962中華圏三大映画賞の1つ。
香港電影金像奨香港1982中華圏三大映画賞の1つ。

ちなみに、より広い地域全体を網羅する映画賞としては、ヨーロッパ映画賞やアジア・フィルム・アワードなどがあります。



【2】ドラマ

1.アメリカのドラマ賞

創設開催月特徴
プライムタイム・エミー賞19499月一般に「エミー賞」といえばこの賞を指す。
テレビ業界において最も権威ある賞。
ゴールデングローブ賞19441月映画とドラマ。1956年にテレビドラマ部門新設。
全米映画俳優組合賞(SAG)19951月映画とドラマ。ユニークなアンサンブル賞もある。

プライムタイム・エミー賞

エミー賞にはいくつかの種類がありますが、一般に「エミー賞」というと、9月に授賞式が行われるプライムタイム・エミー賞を指します。

ほかにも、昼間のデイタイムに放送された番組に送られるデイタイム・エミー賞、スポーツ番組に与えられるスポーツ・エミー賞など、分野別に複数のエミー賞が存在し、別の授賞式が行われています。

2.世界四大映像祭

アメリカのエミー賞にくわえ、モナコのモンテカルロ・テレビ祭、イタリアのイタリア賞、カナダのバンフ・ワールド・メディア・フェスティバルが、「世界四大映像祭」に位置づけられています。

創設特徴
プライムタイム・エミー賞アメリカ1949上記参照
モンテカルロ・テレビ祭モナコ1961フィクション部門の他、ニュース部門も。
最高賞は「ゴールデンニンフ賞」。
イタリア賞(プリックス・イタリア)イタリア1948イタリア放送協会主催の国際コンクール。
バンフ・ワールド・メディア・フェスティバルカナダ1980国際部門は「ロッキー賞」



【3】演劇

創設特徴
トニー賞アメリカ1947ニューヨークのブロードウェイで上演され
た作品。アメリカで最も権威のある演劇賞。
ローレンス・オリヴィエ賞イギリス1976ロンドンのウエストエンドで上演された作品。
別名、イギリス版トニー賞。
モリエール賞フランス1987映画のセザール賞に対し、仏演劇界のために
創設された賞。

トニー賞

演劇部門とミュージカル部門があり、関係者約700人あまりの投票により各賞が選出されます。授賞式は映画のアカデミー賞同様、毎年ライブでテレビ放送されるなど、一大イベントとなっています。

二つの部門は、リバイバル部門などさらに細かく分かれており、2020年現在、26のカテゴリーがもうけられています。

女優であり、演出家としても活躍したアントワネット・ペリーの略称からとってトニー賞と名付けられました。



【4】音楽

創設開催月特徴
グラミー賞アメリカ19592月音楽業界最大の賞
アメリカン・ミュージック・アワードアメリカ197311月ファンの投票によって選出
ブリット・アワードイギリス19772月英国では最も権威ある賞

グラミー賞

アメリカでは、上記のほか、ビルボード・ミュージック・アワードとロックの殿堂入り授賞式をあわせ、四大音楽賞などと呼ばれていますが、なんといってもグラミー賞の権威と影響力の強さはダントツです。

受賞は、英米系のミュージシャンにとどまらず、世界のミュージシャンにとって最高の栄誉となっています。

EGOTとは?

エミー賞、グラミー賞、オスカー(アカデミー賞)、トニー賞の4つ全てを受賞したスーパーエンターテイナーのことを尊敬をこめてEGOT受賞者と呼んでいます。

2023年現在まで、18人が見事EGOT受賞者となっており、日本になじみ深いところでは、オードリー・ヘップバーンやウーピー・ゴールドバーグもそのうちのひとりです。

最近では、ジョン・レジェンド、ジェニファー・ハドソン、ヴィオラ・デイヴィスらが殿堂入りを果たしています。

日本国内の賞は?

日本のエンタメ賞の事情はどうでしょうか?

映画関係では、最も権威があるのは「キネマ旬報賞」だと言われています。1919年に創刊された映画雑誌「キネマ旬報」が1924年(日本映画は1926年より対象)から、毎年「キネマ旬報ベストテン」を発表しており、世界的に見ても異例の長い歴史を誇ります。

日本アカデミー賞は、1978年より開催されていますが、コンペティションというよりお祭りの意味合いや政治色の強い映画賞となっています。芸能事務所やテレビ局とのコネが選定に深く関わっているのも特徴であり、一部では「日本テレビアカデミー賞」と揶揄され、全く権威はありません。

テレビドラマでは、ザテレビジョンドラマアカデミー賞向田邦子賞文化庁芸術作品賞など複数の賞が存在しますが、エミー賞のような絶対的な権威がある賞は存在していません。

それは演劇界も同様で、紀伊國屋演劇賞読売演劇大賞岸田國士戯曲賞など複数の賞が対象をベテランや新人にわけて存在しています。

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