『ザ・ホエール』知られざる12の裏話【実話/原作/キャスト】

ザ・ホエール 映画

ブレンダン・フレイザーが見事なカンバックを果たし、アカデミー主演男優賞に輝いた映画『ザ・ホエール』。

2023年4月7日に劇場公開された日本でも、感動と絶賛の声が多く聞かれる傑作です。

本記事では、映画『ザ・ホエール』のあらすじやキャストなど簡単な概要にくわえ、原作や実話などにまつわる12の撮影秘話・トリビアなどをご紹介します。

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ブレンダン・フレイザーがアカデミー主演男優賞に輝いた映画『ザ・ホエール』

『ブラック・スワン』や『レスラー』のダーレン・アロノフスキーがメガホンをとり、『ハムナプトラ』シリーズ以降、表舞台から姿を消していたブレンダン・フレイザーを主演に迎えた重厚な人間ドラマが『ザ・ホエール』です。

劇作家のサミュエル・D・ハンターが2013年に発表し、ドラマ・デスク・アワード受賞など高い評価を得た同名舞台劇の映画化作品であり、ハンター自身が初めて映画の脚本も手掛けています。

第95回アカデミー賞において、ブレンダン・フレイザーの主演男優賞、およびメイクアップ&ヘアスタイリング賞の2冠に輝いたほか、他の映画祭でも多くの賞を受賞しています。

■あらすじ

恋人を亡くしたショックから、過食と引きこもりによって600ポンドの肥満症となり、もはや身動きすらままならない男・チャーリー。オンライン授業の講師として働きつつ、死んだ恋人の妹リズの助けを得ながらなんとか生活していましたが、心臓の疾患が悪化し、死が近いことを悟ります。

チャーリーは病院に行くことを頑なに拒否し、命があるうちにたった一つのことに取り組むことを決意します。それは、8年前、恋人と暮らすために捨てた娘エリーとの関係を修復することでした。

しかし、母親の手に負えない問題児となっていたエリーは、当然、そんな父親を拒否、罵倒し……。

■登場人物とキャスト

・チャーリー/ブレンダン・フレイザー:肥満症で余命僅かな国語の教師

・エリー/セイディー・シンク:チャーリーの娘

・リズ/ホン・チャウ:チャーリーの死んだ恋人の妹であり、看護師の資格を持つ唯一の友人

・メアリー/サマンサ・モートン:チャーリーの元妻でエリーの母

・トーマス/タイ・シンプキンス:チャーリーを訪ねてくるキリスト教の宣教師



『ザ・ホエール』の知られざる12の撮影秘話・裏話を紹介

①チャーリーのモデルは著者自身

※写真の右がサミュエル・D・ハンター、左は監督のダーレン・アロノフスキー

チャーリーのキャラクターは、本作を執筆したサミュエル・D・ハンター自身が緩やかなモデルとなっています。

ハンターはオープンリー・ゲイであり、ラトガーズ大学で文章創作を教え、過食性障害を患っていた過去があったのです。そうした実体験がそのままチャーリーの人物造形に生かされています。

ちなみに劇中、チャーリーがパソコンのキーボードを打つシーンの手はサミュエル・D・ハンターのものだそうです。

②ダーレン・アロノフスキーの前に監督候補だったのは?

ダーレン・アロノフスキーに決定する前には、複数の名前が監督の候補に上がっていました。

一人は『グッドナイト&グッドラック』など監督作も高い評価を得ている俳優のジョージ・クルーニーです。またトム・フォードは、ジェームズ・コーデンを主演にする形で、監督を手掛ける予定でしたが、クリエイティブ上の意見の相違から辞退に至ったようです。

③ブレンダン・フレイザーのキャスティング

監督のダーレン・アロノフスキーは、2022年のヴェネツィア国際映画祭の席などにおいて、本作のキャスティングに10年を要したとコメントしています。もちろん、とりわけ困難を極めたのがチャーリー役の俳優でした。

2006年に公開されたブラジルを舞台にした犯罪映画『Journey to the End of the Night(邦題:ブレンダン・フレイザー 復讐街)』の予告編を見たのがきっかけになったと語っています。

④エリー役のキャスティング

同じく、難航していたエリー役ですが、ダーレン・アロノフスキーがNetflixの大ヒットドラマ『ストレンジャー・シングス』のシーズン2を視聴していたとき、マックス役を演じていたセイディー・シンクを見て「この少女は誰だ」となり、以来、注目していたようです。

アロノフスキーはインタビューなどで、セイディー・シンクを絶賛しています。

⑤セイディー・シンクの妹が出演

幼い頃のエリーを演じているのは、エリーを演じたセイディー・シンクの実の妹ジェシー・シンクです。砂浜で遊ぶフラッシュバックのシーンで登場します。

⑥ブレンダン・フレイザーの役作り

ブレンダン・フレイザーは撮影のため、毎日4時間かけて特殊メイクを施し、数人がかりで脂肪スーツを着用しました。

また、肥満症の人の支援組織「The Obesity Action Coalition」でリサーチを重ねたり、何か月も肥満症の人がどんな動き方をするかというレッスンをダンス教師と取り組んだりしました。

一日の撮影を終えたあと、スーツを脱ぐとあまりの疲労にめまいを覚えたほどだったと告白しています。



⑦オンライン授業は新型コロナゆえ?

新型コロナウイルスの影響によってオンライン授業が行われているわけではありません。物語は、2016年の設定であり、新型コロナウイルスのパンデミックが起こる前の物語です。

チャーリーが見ているテレビのニュースで報道されているのは、ドナルド・トランプ、テッド・クルーズ、マルコ・ルビオが候補だった2016年の共和党予備選挙の模様です。

⑧チャーリーがオーダーするピザ屋

チャーリーが劇中、何度もオーダーする宅配ピザ屋「Gambino’s」は、実際に、物語の舞台となっているアイダホ州モスコーに実在するイタリアン・レストランの名前です。

モスコーは、原作・脚本を手掛けたサミュエル・D・ハンターの生まれ育った場所です。

⑨原作と映画の違い

映画では、トーマスはニュー・ライフ・チャーチの宣教師として登場しますが、原作では、モルモン教の宣教師です。

ニュー・ライフ・チャーチとは、アメリカ人宣教師ジャン・ウェスリー・ドウゲン師によって、1987年に設立された超教派のプロテスタント教会です。

残念ながら、2023年4月現在、原作の日本語翻訳版は存在していません。

⑩エンドクレジットに流れる鯨の鳴き声

気を付けて意識をしないと聞き逃してしまいますが、エンドクレジットの最中、背景に鯨の鳴き声が流れています。

⑪映画『レスラー』との関係

『ザ・ホエール』は、同じくダーレン・アロノフスキー監督が手掛けた2008年の映画『レスラー』との類似性が指摘されています。

・主人公が心臓に深刻な問題を抱えていること
・主人公が疎遠だった娘との関係修復を図ろうとしていること
・主人公の結末があいまいな状態で映画が終わること

本作が気に入った方は、ぜひ秀作『レスラー』もご覧になることをおすすめします。主人公を演じたミッキー・ロークが、ゴールデングローブ賞主演男優賞やアカデミー主演男優賞ノミネートなど、見事に復活を果たしたという点でも共通しています。

⑫ヴェネツィア国際映画祭での出来事

第79回ヴェネツィア国際映画祭において、本作はプレミア上映されました。上映後には、スタンディングオベーションが6分間続きました。映画の素晴らしさはもちろん、ブレンダン・フレイザーが、何年にもわたって表舞台から離れていたあとの、見事な復活を称えたのです。

そのときのカメラは、ブレンダン・フレイザーが感無量になって涙を流す様子をとらえています。



映画『ザ・ホエール』が気に入った方におすすめ

2023年10月4日には、ブルーレイ/DVDも発売されました。

また『ザ・ホエール』が気に入った方は、ダーレン・アロノフスキー監督の過去の作品もご覧になってみてはいかがでしょうか?

やはりおすすめは、上でも紹介し、何かと共通点も多い2008年の『レスラー』、そして2010年の『ブラック・スワン』です。

『ブラック・スワン』のエンディングなども、『ザ・ホエール』との類似性を感じずにはいられません。

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