Netflix『ザ・ファイブ・ブラッズ』のネタバレあらすじ・キャスト・見どころ

ザ・ファイブ・ブラッズ 映画

『ROMA ローマ』『アイリッシュマン』『マリッジ・ストーリー』など極めて質の高いオリジナル映画を発表してきたNetflixが、2020年6月に配信した作品が『ザ・ファイブ・ブラッズ』です。

メガホンをとったのはアメリカ映画界を代表する巨匠、スパイク・リー

本記事では、本作『ザ・ファイブ・ブラッズ』について、あらすじやキャスト、さらに作品をもっと深く理解するための見どころポイントをご紹介します!

ネタバレを含みますのでご注意ください。

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スパイク・リーが手掛けたNetflixオリジナル映画『ザ・ファイブ・ブラッズ』

『ザ・ファイブ・ブラッズ』は、ベトナム戦争時代のかつての仲間の遺骨と隠した金塊を探すため、再びベトナムの地を訪れた黒人帰還兵4人の姿を中心に、悲惨な過去と今を交差させて描いた人間ドラマです。

監督を務めたのが、強い作家性を持つスパイク・リーとあっては、単なる人間ドラマで終わるはずがありません。

さまざまな政治的主張が独特のセンスで込められた物語が展開します。

スパイク・リーのプロフィール

メガホンをとったのは、2015年にアカデミー賞名誉賞を授与され、今や名実ともに米映画界を代表する巨匠の一人となったスパイク・リー。本作においても過去の作品同様、監督のみならず、脚本と製作も自身で手掛けています。

1957年3月20日ジョージア州アトランタに生まれたスパイク・リーは、ニューヨーク大学卒業後の1986年、『シーズ・ガッタ・ハヴ・イット』で商業映画デビューしました。一人の黒人女性の自由で自立した生き方をパーソナルな語り口で描き、興行的にも成功していきなり熱い注目を集めます。

その後は、黒人の目から見た人種差別問題を主要テーマに、『スクール・デイズ』『ドゥ・ザ・ライト・シング』『マルコムX』など数々の問題作を発表し続けます。2018年にはKKKに潜入捜査する黒人刑事の姿を描いた『ブラック・クランズマン』で、カンヌ国際映画祭グランプリを受賞しました。本作は、受賞後の第一作目にあたります。

また、監督業のかたわら、ニューヨーク大学などで教鞭をとる教育者の顔も持ち、新しい世代の育成にも力を入れています。

『ザ・ファイブ・ブラッズ』のあらすじ

ベトナム帰還組の元軍人ポール、エディ、オーティス、メルヴィンの4人。4人は、リーダーだったかつての仲間ノーマンの遺骨、そして埋蔵金を回収すべく、再びベトナムの地を訪問します。

4人にポールの息子デヴィッドを加えた5人は、過酷なジャングルを分け入り、奥地へと進む中で、かつての悲惨な体験を思い出し、また今なお残る傷跡に直面します。そんな彼らを待ち受けていたのは……。

<以下、ネタバレあり>

5人は、見事にノーマンの遺骨も金塊も発見します。しかし、取り分をめぐっていざこざが起こり、そんな中、エディが地雷を踏んで死んでしまいます。

その後、フランスから来た地雷撤去メンバー、ベトナム人ゲリラグループも加わり、銃撃戦に至ることに……。実はノーマンを誤って殺してしまった過去を背負うポールは、一人金塊を持って単独暴挙に出たことで、ベトナム人グループに殺されてしまいます。

かたや、なんとか古い寺院にたどり着いたオーティス、メルヴィン、デヴィッドを待ち受けていたのは、金塊取引の協力者だったはずのフランス人フィクサー、デローシュ。再び銃撃戦となり、メルヴィンデローシュが死亡。

生き残ったオーティスデヴィッドは、無事金塊を手に入れ、ノーマンの家族や地雷撤去団体等へ寄付することを決意します。

『ザ・ファイブ・ブラッズ』の主要キャスト5人

1.ポール/デルロイ・リンドー

(後列中央)

実は、ノーマンを誤って殺してしまった張本人だったことから、そのトラウマに苦しみ、息子のデヴィッドにすら素直に愛情表現ができない病んだ男が、デルロイ・リンドー演じるポールです。

ジャマイカ系移民の両親のもと、1952年、イギリスのロンドンに生まれたデルロイ・リンドーは、これまで『マルコムX』『クルックリン』『クロッカーズ』など複数のスパイク・リー作品に出演してきた常連俳優の一人です。

映画やテレビ以外にも、ブロードウェイで多数の舞台を踏み、『Joe Turner’s Come and Gone』ではトニー賞主演男優賞にノミネートされるなど、渋い存在感を放つ演技派として知られています。

2.エディ/ノーム・ルイス

(前列右)

地雷を踏んでしまい早くに命を落とすエディをノーム・ルイスが演じています。

1963年フロリダ生まれのノーム・ルイスは、ブロードウェイのミュージカルで華々しい活躍をしている実力派スターです。

『ミス・サイゴン』『シカゴ』『ドリームガールズ』『レ・ミゼラブル』など多数の有名ミュージカルで主要キャストを演じてきたほか、『ポーギーとベス』のポーギー役ではトニー賞ミュージカル主演男優賞にノミネートされました。

また『オペラ座の怪人』では、黒人キャストとして、ブロードウェイ初の主人公ファントム役に抜擢されています。

3.オーティス/クラーク・ピータース

(前列左)

かつて愛したベトナム人女性ティエンと再会するオーティスを、クラーク・ピータースが演じています。

1952年、ニューヨーク生まれのクラーク・ピータースは、映画とテレビの両方で名バイプレーヤーとして活躍している実力派。とりわけ、シーズン5まで続いたHBOの人気ドラマ『THE WIRE/ザ・ワイヤー』におけるレスター・フリーモン刑事役が有名です。

『ドライビング・ミス・デイジー』『ザ・ウィズ』など、ブロードウェイでも数々の舞台を踏んでおり、『氷人来たる』ではシアター・ワールド・アウォードを受賞しました。

4.メルヴィン/イザイア・ウィットロック・Jr

(後列右)

デローシュらとの銃撃で命を落とすのが、イザイア・ウィットロック・Jr扮するメルヴィンです。

1954年インディアナ州生まれのイザイア・ウィットロック・Jrも、スパイク・リー作品にたびたび出演しています。『クロッシング』、Netflixから配信されたセルフリメイク版『シーズ・ガッタ・ハヴ・イット』、また『ブラック・クランズマン』にも登場します。

クラーク・ピータースと同じく、『THE WIRE/ザ・ワイヤー』のクレイ・デイヴィス上院議員役で、一躍人気者となりました。

5.ノーマン/チャドウィック・ボーズマン

(後列左)

回想の中にしか登場しませんが、キング牧師暗殺事件のニュースをめぐる言動で、リーダーとして認められる男が、チャドウィック・ボーズマン演じるノーマンです。

チャドウィック・ボーズマンは、1976年生まれでサウスカロライナ州出身。何といっても、『アベンジャーズ』シリーズにおけるブラックパンサーことティ・チャラ役で、今をときめく人気スターの一人となりました。

2013年の映画『ブラックパンサー』はもとより、2019年の『アベンジャーズ/エンドゲーム』まで計4作品に同役で出演。

しかし、2020年8月28日、大腸がんとの闘病の末、43歳で他界しました。



原題は「The」ではなく「Da 5 Bloods」!

映画の日本語タイトルは『ザ・ファイブ・ブラッズ』ですが、原題は『Da 5 Bloods』。

「Da」はスラングとしてしばしば使用される「The」の意味がある黒人英語。本作が、黒人たちの物語であることを象徴しているのでしょう。

映画『地獄の黙示録』へのオマージュ

1979年に公開されたフランシス・フォード・コッポラの映画『地獄の黙示録のタイトルロゴが堂々と登場したり、物語そのものが同作へのオマージュとなっているのは明らかです。

ベトナム戦争末期、軍に反旗を翻して行方をくらましたカーツ大佐を暗殺するため、ジャングルの河を遡るウィラード大尉の姿が、ノーマン隊長の遺骨を探して進む5人の姿と重なります。流れるのは、ワーグナーの「ワルキューレの騎行」。

スパイク・リー自身、『地獄の黙示録』は大好きな映画の一つだと公言しています。

テーマ曲となっているチェンバース・ブラザーズの「タイム・ハズ・カム・トゥデイ」

『ザ・ファイブ・ブラッズ』の予告編に流れている曲は、チェンバース・ブラザーズの「タイム・ハズ・カム・トゥデイ」です。

チェンバース・ブラザーズは、その名のとおり、ミシシッピ州のチェンバース兄弟を中心に結成されたサイケデリック・ソウル・バンドであり、11分もの長さがある「タイム・ハズ・カム・トゥデイ」はベトナム戦争さなかの1968年に発表された、彼らの唯一のヒット曲です。

ヴォーカルを務めていた長兄のジョージ・チェンバースが、本作製作中の2019年10月12日に88歳で他界。そのことも、スパイク・リーがこの曲を起用するに至るきっかけとなった可能性があります。

劇中、マーヴィン・ゲイの曲を多数使用!

チェンバース・ブラザーズ以外にも、さまざまなブラック・ミュージックが劇中使用されていますが、中でも際立って目立つのがマーヴィン・ゲイの曲です。

マーヴィン・ゲイの有名なアルバム『What’s Going On』の全9曲から6曲がなんらかの形で使用しており、まさにサウンドトラックのようになっています。

『What’s Going On』がリリースされたのは1971年。こちらもまさにベトナム戦争の真っ只中であり、当時のアメリカ社会の混とんをそのまま写し取ったアルバムなのです。

フランス人俳優のジャン・レノを起用

金塊取引にあたって協力者となるフィクサーの男デローシュを、フランス人俳優のジャン・レノが演じています。

ジャン・レノが起用されたのは、もちろんベトナムがかつてフランスの植民地だったという歴史的背景を反映させたからでしょう。

地雷撤去団がフランス人だったのは同じ理由によります。

さりげなく反トランプを盛り込む

唯一、ポールだけがトランプ大統領支持者として描かれます。彼が常に被っているキャップには、トランプ大統領のキャッチフレーズ「Make America Great Again」の文字……。

ポールは、利己的で人種差別的な男として描かれ、無残な最期をむかえます。

反トランプで熱烈な民主党支持者として知られるスパイク・リーの政治的意図が込められていることは確かです。

現在の社会情勢を考える上でもぜひ鑑賞したい『ザ・ファイブ・ブラッズ』

新型コロナウイルスがもたらした世界情勢の変化、緊迫化する国際関係、人種差別を背景にしたデモや暴動など、今、社会が大きく揺れ動いています。

そんなタイミングの中、リリースされた映画『ザ・ファイブ・ブラッズ』。

言うまでもなく、とりわけアメリカを大混乱させている人種差別問題に対するスパイク・リーのメッセージが、物語の随所の盛り込まれています。

残念なのは、アメリカの加害者としての視点が完全に欠如していること。

こんな状況を踏まえ、『ザ・ファイブ・ブラッズ』を自分なりの立場でじっくり鑑賞し、考えてみたいものです。

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