結末が違う『ジェイコブを守るため』のドラマと原作【犯人ネタバレ注意】

原作小説「ジェイコブを守るため」 ドラマ

AppleTV+(プラス)から、全8話のリミテッドドラマシリーズとして配信され、衝撃の展開が大きな話題を呼んだ『ジェイコブを守るため』。

ウィリアム・ランディが2012年に発表し、ベストセラーとなった同名小説のドラマ化であり、基本的には、原作に忠実な映像化がなされています。

しかし、結末は、両者に明確な違いがあります。

ここでは、ドラマと原作の違いを4つのポイントから解説し、真犯人像に迫りたいと思います。

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AppleTVプラスから配信されたドラマ『ジェイコブを守るため』

同級生ベン・リフキン殺害の容疑者となってしまった14歳の息子ジェイコブの無実を信じて闘う両親、アンディとローリー・バーバーの姿を描いた法廷ミステリーが『ジェイコブを守るため』です。

ドラマは、最終話で一応の解決をみたものの、完全に白黒はっきりしたとは言えず、視聴者の判断に委ねたものになっていました。

それは、原作でも基本的には同じですが、ドラマとの相違点をクリアにすることで、判断の助けになる何かしらのヒントが見えてきます。

原作者ウィリアム・ランディについて

ウィリアム・ランディは、1963年7月1日、マサチューセッツ州ボストン生まれ。エール大学卒業後、7年間のミドルセックス地区検事補の仕事を経て、執筆活動に入りました。
デビュー作『ボストン、沈黙の街(Mission Flats)』が英国推理作家協会の賞を受賞。『ボストン・シャドウ(The Strangler)』に続き、『ジェイコブを守るため』は彼の三作目にあたります。
2000年に結婚し、二人の息子の父です。

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ドラマと原作小説で異なる点は?

ストーリー展開とは直接関係のない相違点は多々あります。些細な点でいうと、例えば、ダフィ警部補や弁護士のジョアンナは、原作では女性でなく男性であることなど……。

しかし、ここでは、結末に直接関係する重要な4つのポイントに絞っています。

1. DNA検査で判明する殺人遺伝子に関する点

ドラマにおいては、精神科のヴォーゲル医師によるDNA検査の結果、ビリーとアンディとは異なり、ジェイコブには殺人遺伝子の存在は認められなかったとされています。

しかし原作では、はっきりとジェイコブのDNAにも祖父や父と同じ殺人遺伝子の存在が確認されるのです。

さらに、ヴォーゲル医師は、ジェイコブの診断結果について、自己愛性人格障害(NPD)反応性愛着障害(RAD)がはっきり認められるとし、反社会性人格障害の疑いも指摘します。

特にRADについては、「攻撃、怒り、嘘、反抗的態度、良心の呵責の欠如、残忍さ」などが特徴だとし、両親による虐待や育児放棄など養育に問題があるとまで述べているのです。

つまり、アンディとローリーの育て方に何らかの問題があった可能性をやんわりと指摘しているのだと推測すると、なかなかに意味深な診察結果です。

夫婦の抱えている暗い闇の部分に目を向けると、物語がまた違ってみえてきませんか?

2. レナード・パッツの自殺とオリアリーの関係について

ドラマでは、パッツの自白と自殺は、刑務所にいる父ビリーが依頼したオリアリーによる殺人だったことが、間接的に示唆されていますが、原作ではそれをより明確に裏付けるような場面があります。

無罪となって裁判所から解放されたジェイコブを、被害者ベン・リフキンの父がナイフで刺そうと試みる場面が描かれますが、それを阻止するのもオリアリーなのです。

オリアリーにこう言わせています。

「親父さんにおれからよろしくと伝えてくれ、いいな?」オリアリー神父は言った。「本当なら、あの男の話をいろいろ聞かせたいところだが」

ウィリアム・ランディ著・東野さやか訳「ジェイコブを守るため」ハヤカワ・ミステリ

あの男とはもちろんパッツのことです。



3. 家族旅行先で起こった少女の行方不明事件について

無罪となり、アンディ、ローリー、ジェイコブの3人は家族でメキシコ旅行に出かけます(原作ではジャマイカ旅行)。滞在先のホテルで、ジェイコブが仲良くしていた少女が、突然行方不明になるという事件が発生。

ドラマでは、少女は無事保護され、ジェイコブは無関係だったことが証明されるのですが、原作は違います。

少女は7週間後、海岸に打ち上げられた溺死体となって発見されるのです。腐乱が進んでいるせいで、死因がわからない未解決事件として処理されることに。

一方、行方不明になった日、ジェイコブは血しぶきのようなシミがついた水着でホテルに戻っていた事実もはっきりと描かれます。そのときはまだ少女が行方不明だとは知らず、アンディが海に飛び込んで洗ってこいとジェイコブに指示した経緯が告白されるのですが……。

4. ローリーとジェイコブの自動車事故の真相

ドラマでは、ローリーがジェイコブを助手席に乗せた状態で真実を問い詰め、そのままスピードをあげて心中しようとするシーンがはっきりと描かれます。

ところが、原作では、そのシーンはアンディの想像として描かれるにすぎません。

つまり、ジェイコブの有罪を確信したローリーが、自分自身を責め、一緒に罪を償おうとしたというのは、あくまでもアンディの推測に過ぎず、実際に車の中において、2人の間で何があったのかについては、わからないままなのです。

そして、ローリーは比較的軽傷で済み、ジェイコブは意識不明の重体状態でドラマは終わりますが、これも原作は違います。

ローリーが重傷を負いながらも一命をとりとめた一方、ジェイコブは事故死するのです。

『ジェイコブを守るため』、ドラマと原作の違いから見えてくるもの

原作では、ベン・リフキン殺害の真犯人はやはりジェイコブだったことがより明確に推定されるよう描かれているのは明らかです。そしておそらく、旅先での少女の殺人すらも、おそらくジェイコブの仕業……。

原作は、アンディの視点で描かれます。原作者のウィリアム・ランディは、アンディ・バーバーとほとんど同じ経歴を持ち、また2人の息子の父親でもあるということで、間違いなくアンディに自分自身の思いを投影しているのではないでしょうか。

本作が、単なる事件解明の法廷ミステリーに終わらず、いろいろ考えさせられる家族の物語となっているのも、そんな事情と関係があるのかもしれません。

ちなみに、ウィリアム・ランディは、最初に仕上げた第一稿目の結末はこれとはまったく違うものだったとインタビューで答えています。

別の結末……気になりますね。

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