『ティファニーで朝食を』あらすじ/キャスト/原作との違い考察

ティファニーで朝食を 映画

トルーマン・カポーティの同名小説を、1961年、オードリー・ヘップバーン主演で映画化した『ティファニーで朝食を』。

ロマンチック・コメディの古典ともいうべき本作のあらすじと登場人物、原作との違い、そして見どころを深く掘り下げ考察・解説したいと思います。

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オードリー・ヘプバーンが美しい、ロマンチック・コメディ映画の傑作『ティファニーで朝食を』

■あらすじ

ニューヨークのアパートで、名もなき一匹の猫と暮らす高級娼婦ホリーの夢は、大金持ちの男と結婚すること。ある日、アパートの上階に作家の卵、ポールが引っ越してきます。

ポールは自由奔放で小悪魔的なホリーに、ホリーも軍隊にいる弟フレッドとポールを重ね合わせ、次第に惹かれていきます。

が、ポールには裕福なマダムのパトロンがおり、また、テキサスからホリーの夫が連れもどしにやってきて……。

■登場人物とキャスト

・ホリー・ゴライトリー/オードリー・ヘプバーン
・ポール・バージャク/ジョージ・ペパード
・2E(ポールのパトロン)/パトリシア・ニール
・ドク・ゴライトリー(ホリーの夫)/バディ・イブセン
・ユニオシ(アパートの隣人)/ミッキー・ルーニー



トルーマン・カポーティの原作との違い(ネタバレ注意)

1958年に発表されたトルーマン・カポーティの原作は、「わたし」である作家ポールの視点で描かれる一人称小説。そして、10数年前のホリーとの思い出を回想する形で物語が展開します。

ホリーと初めて出会う場面、ウールワースでのデートや図書館でのくだりなど、細かなエピソードやセリフはかなり忠実に映像化されていると言ってもよいのですが、決定的に異なるのが結末です。

映画は、ホリーとポールのラブ・ストーリーに完全に脚色され、しかもハッピーエンドで終わりますが、原作はそうではありません。

ホリーはポールを振り切って、一人ブラジルに飛び立ってしまうのです。しかも、その後10年以上に渡って行方不明となり、アフリカでの目撃情報がきっかけとなって、回想にいたるのです。

雨の中、ホリーの猫を探し、見つける場面で映画は終わりますが、原作では結局猫は見つからず、その後、ポールがどこかの飼い猫になった姿を偶然みかけるという結末になっています。

また、映画のポールは裕福な女性のヒモですが、原作でそういった設定はありません。その理由については、下のレビューで触れています。

■村上春樹による新しい翻訳もおすすめ!

1960年に発行された龍口直太郎による翻訳版に加え、2008年にはカポーティ愛読者としても知られる村上春樹による新訳本が発行され話題になりました。

多くの単語の訳が現代風になっているほか、全体としてかなり読みやすくなっており、まったく違った印象を受けます。

とはいえ、オリジナルの龍口直太郎の訳も素晴らしく、できれば両方を読み比べてみるのもおすすめです。

ホリーのモデルはカポーティの実母

ホリーのモデルについて、カポーティは「大昔の知り合い」だと述べていたそうですが、その人物像には、明らかにカポーティの実母リリー・メイ・フォークが投影されていると言われています。

カポーティが2歳のときに両親は離婚し、母の親戚のもとにひきとられて育ちました。ホリーと同じ南部出身で魅力的な容姿を持っていたリリーは、一人でニューヨークに暮らし、上昇志向の強い社交的な生活を送っていたと言います。

資産家のジョゼフ・カポーティと再婚したのち、トルーマンを引き取りましたが、親子の愛情には薄かったようです。リリーは、1954年に自ら命をたちました。

映画『ティファニーで朝食を』が原作とは違い、ハッピーエンドのラブ・ストーリーになっていたことに対し、カポーティは激怒していたようです。

2019年に公開されたドキュメンタリー映画『トルーマン・カポーティ 真実のテープ』には、その辺りの事情が詳しく紹介されており、見ごたえがあります。



映画『ティファニーで朝食を』の考察/解説/感想レビュー

ヘンリー・マンシーニの「ムーン・リバー」が流れる、夜明けのニューヨーク。人一人いない五番街に、一台のタクシーがやってきて、ティファニーの前で停車する。下りてきたのは黒のジバンシーをまとったオードリー・ヘプバーン……。

このオープニングシーンの素晴らしさ。そして、ここから始まるのは、猫と犬の物語である。

主人公のホリーは高級娼婦を生業にしながらも、自由を謳歌し、束縛を嫌う猫。

同じアパートに越してきた作家志望のポールは、富豪マダムに仕える従順なヒモ、つまり犬。

二人がデートで訪れたウールワースで万引きするのは、それぞれ猫と犬のお面だ。

そんな猫と犬が恋に落ちる。

ポールは長い間手つかずだった執筆に取り掛かり、マダムとも縁を切る決心をするが、一方のホリーはなかなか本物の愛に飛び込めない。大金持ちとの非現実的な結婚話や、自由気ままな遊びを楽しんでいるように見えて、実は深い孤独のケージの中に閉じこもっているのである。

ラストシーンも冒頭と同じく、街中を走るタクシーで始まる。

後部座席に並んで座るホリーとポール。破綻したブラジル人富豪との結婚にいまなおすがろうとするホリーは、大切な飼い猫すら、雨の車外に放りだしてしまう。ついに愛想をつかしたポールは、ひとりタクシーを下りる。

「君は自由というものに固執しているように見えて、実は自分で作った檻の中に逃げているだけだ。世界のどこに行こうと、結局はその檻に逃げ込むんだ」

そう言われ、車内でひとりになって、ようやくホリーの目が覚めるのだ。

激しく打ち付ける雨の中、二人は猫を探す。諦めかけて、やっと見つけ出し、小さな木箱の中から猫を表に出すというホリーの行為は、彼女自身の目覚めと成長を、見事に象徴するのである。

ありきたりなラブストーリーだと評する向きもあるし、原作者のカポーティが激怒しようと、洗練された、小粋なロマンチック・コメディの名作ではあることは間違いないと思う。

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