Netflixから配信された、ライアン・マーフィー製作のオリジナルドラマ『ラチェッド』。1975年のアカデミー賞受賞作『カッコーの巣の上で』に登場した恐ろしい看護婦長ミルドレッド・ラチェッドの前日譚を描いたドラマです。
ライアン・マーフィー作品の見どころの一つが、絶妙なキャスティング!
ここでは、ドラマ『ラチェッド』において異色かつ強烈な存在感を放っている実力者女優2人、ジュディ・デイヴィスとアマンダ・プラマーについてご紹介します。
Netflixドラマ『ラチェッド』と登場するベッツィーとルイーズ
『ラチェッド』は、1947年、北カリフォルニアのルシアにある精神病院が舞台。ある目的をもってやってきた一人の看護婦ミルドレッド・ラチェッドを主人公に、当時の精神医療の実態、そして病院にうごめくおぞましい人間たちの正体が露呈していきます。
ジュディ・デイヴィスが演じたのは、ラチェッドと敵対しつつも、やがて同士となっていく主任看護婦のベッツィー・バケット。
アマンダ・プラマーが演じたのは、ラチェッドが滞在するモーテルの女オーナーであり、ベッツィーの親友だったことからのちに病院で働くことになるルイーズです。
主要登場人物の紹介、ネタバレありのあらすじについては、別の記事に詳しくまとめてあります。


ジュディ・デイヴィスのプロフィールとおすすめ映画
ジュディ・デイヴィスは1955年4月23日生まれ、オーストラリアのパース出身です。シドニーにある名門オーストラリア国立演劇学院で学び、同窓にはメル・ギブソンがいました。
1977年のオーストラリア映画『High Rolling』でデビュー。1979年の映画『わが青春の輝き』で英アカデミー賞の主演女優賞と新人賞をW受賞し、一躍注目されました。
その後は、欧米のさまざまな映画、ドラマ、舞台で文字通り当代きっての演技派女優として活躍。これまで、豪アカデミー賞を5度、エミー賞を3度、英アカデミー賞を2度、ゴールデングローブ賞を2度受賞し、米アカデミー賞でも2度ノミネートされています。
私生活では俳優のコリン・フリールズと1984年に結婚。一時離婚が取りざたされた時期もありましたが和解し、現在も婚姻関係を続けています。2人の間には娘と息子がいます。
おすすめ代表作5選
1.『インドへの道』(1984)
1920年代、反英運動が盛り上がっていたイギリス植民地時代のインドを舞台にした、デヴィッド・リーン監督の遺作です。
婚約者を訪ねて来印する主人公のイギリス人女性アデラをジュディ・デイヴィスが演じて絶賛され、各国のさまざまな映画祭で受賞・ノミネートを果たしています。
2.『夫たち、妻たち』(1992)
マンハッタンに暮らす二組の夫婦の関係をドキュメンタリータッチで描いたウディ・アレン監督作です。
ウディ・アレンとミア・ファロー演じる夫婦に対し、離婚寸前の夫婦ジャックとサリーを、シドニー・ポラックとジュディ・デイヴィスが演じました。
達者な役者たちの中でも、激しい気性の妻を演じたジュディ・デイヴィスの演技はとりわけ高く評価され、全米映画批評家協会賞助演女優賞などに輝いています。
3.『セレブリティ』(1998)
セレブリティと彼らを取り巻く人間模様を皮肉たっぷりに描いたウディ・アレンの作品です。
豪華キャストを揃えた群像劇の中、主人公的存在のリーをケネス・ブラナー、その妻ロビンをジュディ・デイヴィスが演じました。
ダイアン・キートン、ミア・ファローに続くウディ・アレンのミューズはジュディ・デイヴィスだと言われたのはこの頃で、これまで合計5作品に出演しています。
4.『ジュディ・ガーランド物語』(2001)
2001年にABCで2夜にわたって放送され、大きな話題を呼んだジュディ・ガーランドの伝記映画です。
成人期から死を迎えるまでのガーランドになり切ったジュディ・デイヴィスの演技はやはり絶賛され、エミー賞とゴールデングローブ賞において主演女優賞に輝きました。
5.『リベンジャー 復讐のドレス』(2015)
25年ぶりにオーストラリアの田舎町に戻った女性が復讐劇を繰り広げるサスペンス映画です。
主人公のティリーをケイト・ウィンスレット、認知症の母モリーをジュディ・デイヴィスが演じました。作品は賛否両論分かれましたが、ジュディ・デイヴィスの演技は非常に高い評価をえ、オーストラリア映画テレビ芸術アカデミー賞の助演女優賞に輝きました。
日本では劇場未公開ながら『復讐のドレスコード』のタイトルでWOWOWにて放送されたのち、『リベンジャー 復讐のドレス』のタイトルでDVD化されました。
アマンダ・プラマーのプロフィールとおすすめ映画
アマンダ・プラマーは、1957年3月23日、ニューヨーク生まれ。数々の名優を産んだニューヨークにある俳優養成所「ネイバーフッド・プレイハウス」で演技を学びました。
父は名優クリストファー・プラマー(2021年に他界)、母も女優のタミー・グライムズ(2016年に他界)という恵まれた環境で育ちます。1979年に『ひと月の夏』でブロードウェイ・デビューを果たすと、1982年に舞台『神のアグネス』でトニー賞助演女優賞を受賞し、一躍注目されました。
その後は、クエンティン・タランティーノの『パルプ・フィクション』、エミー賞を受賞した1992年のテレビ映画『ミス・ローズホワイトの秘密』など、さまざまな映画・ドラマ・舞台で、他の誰とも違う独特の個性を持つ演技派女優として活躍しています。
私生活では、1990年代後半にイギリス人映画監督のポール・チャートと交際し、1997年の彼の映画『American Perfekt』に出演したりしていましたが、のちに破局しています。
おすすめ代表作5選
1.『フィッシャー・キング』(1991)
悲惨な過去を共有しあう、元人気DJのジャックと浮浪者となり果てた大学教授パリーの再生と愛を描いたテリー・ギリアム監督作です。
ジェフ・ブリッジスとロビン・ウィリアムズが主人公の男2人を演じる中、アマンダ・プラマーはパリーの風変りな恋人リディアを演じ、数々の賞にノミネートされました。
2.『ニードフル・シングス』(1993)
原作はスティーブン・キングのベストセラー小説。おなじみキャッスル・ロックの町で謎めいた老人が開いた古道具屋を舞台に、住民たちの間にまきおこる奇妙な出来事と狂気を描いたミステリー作品です。
カフェの店主ネティを演じたアマンダ・プラマーは、SFやホラー作品を対象としたサターン賞の助演女優賞に輝きました。
3.『パルプ・フィクション』(1994)
カンヌ国際映画祭でパルム・ドールに輝いた、言わずと知れたクエンティン・タランティーノ監督の代表作です。
冒頭と結末のレストランのシーンで登場する強盗カップル、パンプキンとハニー・バニーを演じていたのがティム・ロスとアマンダ・プラマーです。
豪華キャストが多数出演し、みなが個性のきわだったキャラクターを演じる作品ですが、2人の演技もなかなかに強烈で、強い印象を残します。
4.『新しい靴を買わなくちゃ』(2012)
人気脚本家北川悦吏子が監督を手掛けた日本映画に、アマンダ・プラマーが出演。パリを訪れたカメラマンの八神とパリ在住の日本女性アオイが過ごす3日間を描いた恋愛映画です。
中山美穂と向井理が主人公の2人を演じる中、アマンダ・プラマーはアオイの友人でデザイナーのジョアンヌ役で登場しました。
5.『ハンガー・ゲーム2』(2013)
ジェニファー・ローレンスがヒロインを演じる大ヒットSF映画『ハンガー・ゲーム』のシリーズ2作目です。
独裁国家となった近未来のアメリカを舞台に、12の地区ごとに選抜された若者たちが繰り広げるサバイバル・ゲームを描きます。
アマンダ・プラマーが演じているのは第3地区出身のワイレス。こうしたSFアクションにおいてもさすがの存在感を発揮しています。
『ラチェッド』を支えるジュディ・デイヴィスとアマンダ・プラマー
たとえ、どんな短い出番であっても、決して目を離すことのできない存在感を発揮する名女優が、まさにジュディ・デイヴィスとアマンダ・プラマーです。
『ラチェッド』の主人公はもちろんサラ・ポールソンですが、脇に配されたジュディ・デイヴィスとアマンダ・プラマーの独特の存在感が、本作にユニークな厚みをくわえていることは間違いありません。
配信が待たれる『ラチェッド』シーズン2はもちろん、今後の2人の出演作品にも注目していきましょう。
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