朝ドラ『虎に翼』事実とは違う12のポイント【実話と創作】

虎に翼 創作ポイント ドラマ

2024年4月から放送されているNHK連続テレビ小説第110作目『虎に翼』。

日本法曹界における女性パイオニアの一人、三淵嘉子の生涯から着想をえたオリジナルストーリーが展開します。

つまり、物語には事実と創作が混在しています。

本記事では、2024年6月現在、物語の折り返し地点を過ぎた時点で、実話とは異なるドラマの創作箇所の中から、知っておきたいを12の事実をご紹介しましょう。

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実在した女性の生涯を描く朝ドラ『虎に翼』

朝ドラ110作目『虎に翼』において、伊藤沙莉演じるヒロイン・猪爪寅子のモデルとなっているのが、女性初の弁護士、裁判官、裁判所所長を務めた三淵嘉子(みぶちよしこ)です。

戦前から戦後を舞台に、彼女を支える家族、学友、そして法曹界の関係者たちの中で、ひたむきにわが道を突き進む姿を描きます。

もちろん、ヒロインばかりか、多くの実在人物をモデルにしたキャラクターが登場。しかし、事実に基づいたオリジナルストーリーをうたっており、多くの真実とは違う創作、つまり嘘も盛り込まれています。

ここでは、些細な違いはともかく、ヒロインに関わる重要な相違点を中心に、いくつかご紹介しましょう。何が事実で、何が創作かを知ると、ドラマがもっと深いところで楽しめるはずです。

それぞれの詳しい生涯や実話など、人物を中心にした紹介については、以下の記事をご覧ください。



ドラマ『虎に翼』実話とは違う12の創作ポイント

明らかな創作だけでなく、ドラマでは描かれなかった(なかったものとされた)事実も含みます。

また2024年6月現在の放送内容に基づいており、今後、物語が進むにつれ、本記事も更新していきたいと思います。

寅子には兄が一人、弟が一人いるという設定です。上川周作演じる直道と、三山凌輝演じる直明であり、森田望智演じる花江と結婚していた直道は、戦死しました。

しかし実際、嘉子には兄はおらず、弟が4人いました。戦死したのは、一番年長で2歳下の弟、一郎。

他の弟の名は、輝彦、晟造、泰夫であり、直明のモデルは、終戦時、まだ岡山の六高の学生だった末弟の泰夫の可能性が高いでしょう。

直道の妻・花江が寅子の女学校の同級生だったというのも、ドラマ上の創作です。

ドラマでは、どこか頼りなかった寅子の父・直言ですが、実際の嘉子の父・貞雄はかなりのエリートでした。東京帝国大学法科を卒業し、台湾銀行に入社。すぐに新妻のノブを伴ってシンガポールに赴任し、現地でもうけた第一子が嘉子でした。

ドラマでは、嘉子の幼少期が全く描かれなかったこともありますが、嘉子のものの考え方に深い影響を与えたと言われるシンガポール生まれであるという事実が、なかったことのように扱われているのは少々残念です。そもそも、「嘉」の字は、シンガポールの漢字表記「新嘉波」からとったものでした。

ちなみに貞雄は、その後ニューヨークにも赴任しますが、そのとき、ノブと嘉子、生まれたばかりの長男・一郎は同行せず、故郷である丸亀の実家に身を寄せていました。

三淵嘉子の詳しい生涯、経歴については下記の記事で詳しくまとめています。

ドラマでは、昭和9年(1934年)に起きた「帝人事件」をモデルにした汚職事件に巻き込まれる父・直言ですが、嘉子の父・貞雄が「帝人事件」に関与していた事実はなく、ドラマ上の創作です。

唯一の接点があるとすれば、「帝人事件」によって起訴された16人の中に、貞雄が勤めていた台湾銀行の理事と整備課長が含まれていたということのみです。

ドラマでは、寅子、小林涼子演じる久保田聡子、安藤輪子演じる中山千春の3人が、女性として初めて高等文官司法科試験に合格します。

実際、昭和13年(1938年)、女性として初めて同試験に合格した女性は、嘉子、中田正子、久米愛の3人でした。なぜか名前が逆ですが、キャラクターの設定から、中田正子をモデルした人物が久保田、久米愛をモデルにした人物が中山だと思われます。

ただ事実と異なるのは、明律大学において、久保田と安藤は、寅子の一学年先輩でしたが、実際の中田正子は嘉子と同級、久米愛は一学年下でした。

中田正子、久米愛も、嘉子と並び称される法曹界の女性パイオニアですが、本ドラマではあまり深く描かれないようです。中田正子は、1939年公開の映画『新女性問答』の主人公のモデルになったほどです。

弁護士事務所で働きだした寅子、よね、轟は頻繁に外のベンチでランチをともにします。

実際、司法科試験に合格後、丸の内の一流法律事務所で見習いの弁護士試補として働き始めた嘉子が、その頃、頻繁にランチをして親交を深めていた仲間がいました。

それは、上記で紹介した中田正子、久米愛。それぞれ丸の内にある別の一流法律事務所で働き始めていましたが、毎日のように待ち合わせてランチをしたり、お堀あたりを散歩したりしていたようです。

山田よね、轟、令嬢の桜川涼子、主婦の大庭梅子、留学生の崔香淑ら明律大学の同窓生は、花岡悟をのぞいてみな架空の人物だと思われます。

寅子の夫となる仲野太賀演じる佐田優三のモデルは、もちろん嘉子の最初の夫となる和田芳夫です。

猪爪家に下宿し、昼間は銀行で働きながら、明律大学の夜学部で勉強を続ける書生としてドラマ上描かれるのは、実話に即したものですが、一つ事実と異なる点があります。

優三は、寅子同様、法律を学び、弁護士を目指しながらも試験に失敗しますが、和田芳夫は、そもそも弁護士志望ではありませんでした。芳夫は、寅子の父・貞雄の中学時代の親友の甥であり、明治大学の夜学部を卒業後は、紡績会社の東洋モスリンで働いています。



ドラマにおいて、寅子は優三と結婚後もずっと、実家で両親と同居していますが、実際の2人は、別に所帯を構え、しばらく別居して暮らしていました。

優三の戦病死は事実に即したものですが、芳夫は実際、もともとかなり病弱であり、一度は結核の肋膜炎を理由に召集免除となっていたほどでした。戦争の激化に伴い、終戦のおよそ半年前となる昭和20年(1945年)1月、再び赤紙が届いて中国に出征しました。

その後、中国で病に倒れ、上海の病院から長崎の陸軍病院に移送され、そこで亡くなりました。ドラマの中で、優三はお腹を壊しやすい体質として描かれていましたが、実際はそんなレベルではなかったのです。

寅子と優三は、女児をもうけましたが、嘉子が芳夫との間にもうけたのは男児でした。

嘉子の唯一の実子・芳武は、昭和18年(1943年)1月1日、東京で誕生。幼い頃は一時、空襲を逃れて母とともに福島の農家に疎開していました。

長男を長女に変えたのは、少々やりすぎな感じがします。

ちなみに、芳武は法曹界に進まず、医学博士となって生物学者の道を選びました。

ドラマ上、寅子は終戦時も実家に身をよせ、法曹界からは退いていましたが、実際の嘉子は、母校である明治大学の教壇に立ち、学生たちに民法を教えていました。

夫の帰国と訃報が、嘉子のもとに届いていなかったというのは事実に即したものですが、父が訃報を隠していたというのは、ドラマの創作です。

嘉子は、幼い芳武やまだ学生だった弟たちを養うため、大学の講師ではやっていけず、裁判官を目指したのです。

寅子の母・猪爪はるは、2024年6月の放送時点ではまだ健在ですが、実際の嘉子の母・武藤ノブは、夫の貞雄より先に脳溢血により死去しています。

貞雄が肝硬変により死去するのは昭和22年(1947年)10月であり、ノブはその10か月前の1月、先に他界していました。

つまり、嘉子は終戦を挟むわずか3年余りの間に、弟の一郎、夫の芳夫、母・ノブ、父・貞雄と4人の家族に相次いで先立たれたことになります。

明治大学がモデルとなっている明律大学の法科で、寅子の同窓生となる岩田剛典演じる花岡悟。単なる同窓生であるばかりか、ひそかに想いを寄せる関係として描かれました。

同じ佐賀県出身であること、さらに餓死という悲劇的な最期も共通することから、裁判官の山口良忠がモデルだと推測できます。

しかし、実際の山口良忠は、花岡とは異なり、明治大学ではなく京都帝国大学で法律を学び、司法科試験に合格して判事となった人物です。つまり、嘉子の同窓生ではないばかりか、もしかして深い面識すらなかった可能性もあります。

ドラマで描かれたとおり、闇米を食べることを拒否し、配給米は家族に与え、自身は昭和22年(1947年)10月11日、栄養失調から肺浸潤を起こし、33歳で死去しました。

家庭裁判所の設立のために尽力する滝藤賢一演じる多岐川幸四郎は、その名前から明白なとおり、「家庭裁判所の父」とも呼ばれた宇田川潤四郎がモデルです。

ドラマでは、朝鮮の京城(現在のソウル)に赴任し、そこで寅子の同級生チェ・ヒャンスクと知り合うエピソードが描かれましたが、実際に宇田川が駐在していたのは朝鮮ではなく満州でした。

31歳の時に満州に赴任し、地方法院の裁判官や中央司法職員訓練所の教官などを務めていました。帰国後、上野の駅で悲惨な状況を目の当たりにし、その後の人生を変えたことは事実に即したものです。京都少年審判所の所長などを経て、家庭裁判所設立のため、東京に呼び出され、初代家庭局長に就任しました。

チェ・ヒャンスクの存在自体が創作ですが、朝鮮との関わりもすべて事実ではありません。チョビ髭の個性的な風貌だったのは事実です。



『虎に翼』の事実と創作、そして世論扇動?!

2024年6月、ドラマの中盤を折り返した時点で、事実とは違うドラマの創作箇所を12ご紹介しました。

既述したとおり、実話に着想をえたオリジナルストーリーをうたっており、盛り込まれた創作と実話はきちんと理解した上で楽しみたいものです。

ただ、気になる点がひとつあります。やたら左翼的な思想が盛り込まれていることです。

一例をあげると、寅子が民法改正に取り組むシーンにおいて、憲法24条にある婚姻の「両性の合意のみ」の部分を勝手に「双方の合意のみ」と変えてしまったことなどです。

脚本家・吉田恵里香個人の政治的思想なのか、NHK側の意図的な世論扇動なのかは不明ですが、ドラマの創作とは言えない、身勝手な歴史修正、事実詐称のレベルでしょう。

NHKは公共放送であり、国民の間でまださまざまな議論のあるそうした問題を、製作側の政治的思想からさりげなく物語に盛り込むやり方はいかがなものでしょうか。

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