【日本沈没】原作/映画/ドラマ/アニメ:あらすじと結末の違い

日本沈没・比較 ドラマ

Netflixによるアニメ化、またTBS系列日曜劇場2021年秋ドラマとして新作が放送されるなど、今なお日本人の心を引き付ける『日本沈没』。

1973年に刊行された小松左京の原作小説、そして最新作『日本沈没-希望のひと-』に至るまで全5作の映像化作品について、登場人物やあらすじ、結末の違いをネタバレありで比較したいと思います。

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これまで何度も映像化されてきた『日本沈没』

小松左京が1973年に発表した小説『日本沈没』は、最も新しいドラマ『日本沈没-希望のひと-』を数え、これまでなんと5度も映像化がなされています。

しかし、ストーリーや登場人物、そして結末は作品によって大きく異なっています。

ごく簡単にまとめると、下の表の通りです。

原作忠実度全土沈没?小野寺田所博士玲子備考
映画(1973) 
ドラマ(1974)
映画(2006)玲子はレスキュー隊員
アニメ(2020)主人公は武藤一家
ドラマ(2021)主人公は通産省の天海
登場人物3名:〇生存、●死亡、x登場せず

以下、それぞれの作品について詳しく比較してみます。

『日本沈没』原作・映画・ドラマ・アニメを比較<ネタバレあり>

【1】小松左京の原作『日本沈没』

・小野寺俊夫:深海調査艇「わだつみ」号の操艇者
・阿部玲子:大手財閥の令嬢で小野寺の婚約者
・田所雄介:地球物理学者
・幸長信彦:海洋地質学者
・麻耶子:バーのホステス
・緒形:内閣総理大臣
・渡老人:茅ヶ崎に暮らす政官財の黒幕的フィクサー
・中田一成:情報科学者

原作は、1973年3月20日、上下巻で刊行されるや空前の大ベストセラーを記録。翌年には日本推理作家協会賞を受賞しました。

設定は1970年代のある年。日本はほぼ完全な形で沈没していきますが、執筆に9年をかけたと言われる詳細な調査がもとになっており、地震・噴火・津波などに襲われていく残酷な姿が、実在の地名をあげて実にリアルに生々しく描写されます。

救出本部はハワイに置かれ、皇室はスイスに、日本政府の一時的な機関がパリに置かれます。6500万人あまりがなんとか日本を脱出し、死者・行方不明者は1200万人、残りの3000万人を救出すべく、官民合同の救出隊が最後まで努力を続ける様が後半の展開の主軸になっています。

田所博士は、日本とともに沈みゆく道を選び、政財界のフィクサーとして力を持っていた渡老人を看取る形で、ともに死を選びます。終盤、二人がしみじみと交わす会話が胸に迫ります。

「(前略)みんな、日本が……私たちのこの島が、国土が……破壊され、沈み、ほろびるのだ。日本人はみんな、おれたちの愛するこの島といっしょに死んでくれ。……今でも、そうやったらよかった、と思うことがあります。なぜといって……海外へ逃れて、これから日本人が……味わわねばならない、辛酸のことを考えると……」

引用:小松左京著「日本沈没(下)」角川文庫

小野寺と一緒にスイスに逃れる計画だった阿部玲子は、富士山の噴火に巻き込まれて行方不明となる一方、小野寺はなんとか生き延び、シベリアを走る列車の車内で麻耶子に看病されている姿で物語は幕を閉じます。

【2】1973年の映画『日本沈没』

・小野寺俊夫(藤岡弘)
・阿部玲子(いしだあゆみ)
・田所雄介(小林桂樹)
・山本総理(丹波哲郎)
・渡老人(島田正吾)
・幸長信彦(滝田裕介)

東宝配給で1973年12月29日に公開され、880万人の観客動員数と16億4000万円の興行収入をあげました。1974年の邦画第一位を記録した大ヒット作です。

基本的ストーリーは、原作にかなり忠実に作られており、田所博士は渡老人と一緒に、日本とともに沈むことを選びます。

原作と異なるのは、小野寺と玲子のラブストーリーがより強調されていること、そして玲子が命からがら生き残ったことがはっきり描かれます。

ラスト、一人絶望的な表情で異国を走る列車に乗っている玲子。そして、小野寺も生き延びて脱出し、列車に乗っている姿が描かれますが、それが同じ列車なのかどうかはわからず、生き別れた状態のままで終わります。



【3】1974年のテレビドラマ『日本沈没』

・小野寺俊夫(村野武範)
・阿部玲子(由美かおる)
・田所雄介(小林桂樹)
・松川総理(山村聡)
・渡老人(中村鴈治郎)
・幸長信彦(細川俊之)
・中田一成(黒沢年男)

映画版と同時進行で撮影され、1974年10月6日から1975年3月30日まで、日曜20:00からTBS系列で半年2クール全26回にわたって放送されました。5億と言われる、テレビドラマとして破格の製作費が投じられ、壮大なスケールが大きな話題をよびました。

田所博士役は、映画版と同じ小林桂樹が演じているほか、五木ひろしの歌った主題歌「明日の愛」もヒットしました。

基本的ストーリーは、原作、そして映画版に沿ったものですが、全26話というドラマならではの展開や人間模様がより深く描かれています。また、最終的に日本は沈没してしまいますが、各キャラクターはドラマ独自に設定され、それぞれの最後も原作とは大きく異なります。

小野寺には最初、森下悦子(演:望月真理子)という婚約者がいましたが、いきなり第一話で地震により死亡。田所博士には実はマリア(演:マリ・クリスティーヌ)という娘がおり、20年ぶりの再会を果たしますが、その娘を亡くしたことで失意にくれることになります。しかし、日本のこれからを思う中田の尽力により生き延びる道を選びます。

一方、小野寺と玲子は最終回、生死不明で終わります。しかし1975年12月31日に放送された総集編の中で、2人は生き延びてオーストラリアにいることが明かされました。

【4】2006年の映画『日本沈没』

・小野寺俊夫(草彅剛)
・阿部玲子(柴咲コウ)
・田所雄介(豊川悦司)
・山本尚之総理(石坂浩二)
・結城達也(及川光博)
・鷹森沙織大臣(大地真央)

TBSが製作費を投じ、東宝配給で2006年7月15日に公開され、53億4000万円というまずまずのヒットを記録しました(2006年公開の邦画第4位)。監督は、『シン・ゴジラ』の樋口真嗣が務め、これまでの特撮ではなくCGが多用されたのも特徴です。

物語の舞台は2007年に設定。主要人物は形式上引き継いでいるものの、キャラクター設定や結末は大胆に変更されています。何より、令嬢でヒロイン的存在に過ぎなかった阿部玲子が、東京消防庁ハイパーレスキューの救助隊員という設定に……。つまり、小野寺と玲子が活躍する、恋愛要素を絡めたヒーロー映画となっているのです。

小野寺の同僚でともに危機に立ち向かう結城達也、また日本人救出のために動く日本政府の要人が、本作では国民より先に逃亡しようとする悪の側に描かれるのに対し、田所博士の元妻で女性大臣の鷹森沙織が活躍します。

小野寺は、自らの命ひきかえに海底で「N2爆薬」なるものを爆破させ、地殻変動を止めることに成功しますが、英雄として命を落とすことになります。一方、田所は生き残ります。

その結果、日本は部分的な被害に終わり、全土沈没は免れるという予想外の結末が用意されているのです。原作とのあまりに違いに賛否両論が巻き起こりました。

ラストは、鷹森が臨時政府の代表として、海上自衛隊の艦上で日本の再建を誓って幕を閉じます。

【5】2020年のアニメ『日本沈没2020』

・武藤歩(cv上田麗奈):中学3年生
・武藤剛(cv村中知):小学2年生
・武藤マリ(cv佐々木優子):フィリピン出身の歩と剛の母
・武藤航一郎(cvてらそままさき):歩と剛の父
・カイト(cv小野賢章):ユーチューバー
・古賀春生(cv吉野裕行)
・三浦七海(cv森なな子)
・小野寺俊夫
・田所雄介

2020年7月、Netflixにて全世界配信された全10話のオリジナルアニメシリーズです。『夜明け告げるルーのうた』や『DEVILMAN crybaby』などで知られる湯浅政明が監督を務めました。

クレジット上は、小松左京の『日本沈没』を原作としているものの、日本が沈没するという点と一部キャラクターを引き継いでいるのみで、実際は、武藤一家のサバイバル劇というまったく別のストーリーとなっています。

母親がフィリピン人であるという設定など、マイノリティや多様性の問題、ラップやユーチューバー、ドラッグなど、現代のさまざまな事象や社会問題をおり込んでいるのも特徴で、盛りだくさん過ぎる急展開は、賛否両論をよびました。

田所博士と小野寺は、原作通り、日本沈没を警告し、その後に至る詳細なデータをクラウド上に残していた存在として描かれるにすぎません。

最終回のラストでは、日本が沈没した8年後が描かれます。生き残った歩はパラリンピック、剛もeスポーツの日本代表選手として活躍、日本列島も沈没の2年後に一部が再び隆起して新島が誕生し、海外に散っていた日本人が少しずつ帰国していくという、ささやかな再生が描かれて終わります。



【6】2021年のテレビドラマ『日本沈没-希望のひと-』

・小野寺俊夫:登場せず
・阿部玲子:登場せず
・田所雄介(香川照之)
・天海啓示(小栗旬)
・常盤紘一(松山ケンイチ)
・東山栄一総理(仲村トオル)
・世良徹(國村隼)
・椎名実梨(杏)

2021年10月10日から放送されたTBS系列「日曜劇場」放送のテレビドラマが『日本沈没-希望のひと-』です。

2023年の設定にして、原作にあるキャラクターは田所博士のみという完全オリジナルストーリーであり、もはや小松左京の小説が原作とは言えないかもしれません。

登場人物やあらすじなどの詳細は、下記の記事をご参照ください。

『日本沈没』その他の展開

上記のほかにも、さまざまな派生作品があります。

『日本沈没』を原作としたラジオドラマが、1973年と1980年に2度放送されています。

漫画としてコミカライズも2度なされており、1970年代にさいとう・プロが「週刊少年チャンピオン」に連載、2度目は2006年から2008年まで一色登希彦が「ビッグコミックスピリッツ」に連載しました。

小説の方も、2006年に、小松左京と谷甲州の共著により『日本沈没第二部』が出版されました。前作から25年後、世界に散った日本人のその後が描かれており、阿部玲子が国連難民高等弁務官事務所職員となって活動するかたわら、今なお生き別れとなった小野寺のことを探し続けているという設定で登場します。

日本人を引き付けてやまない『日本沈没』の物語

原作小説が発表されてから50年、半世紀が経とうとしています。

愛国心をくすぐられるのか、あるいは自虐精神が隠れているのか、見方は人それぞれだと思われますが、また新しくドラマ化されたことなどを考えると、今なお、このテーマが日本人をひきつけてやまないことだけは間違いありません。

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