『君の名前で僕を呼んで』映画と原作小説の違い/続編の内容は?

君の名前で僕を呼んで映画

ティモシー・シャラメとアーミー・ハマー共演で話題をよんだ、2017年公開の秀作映画『君の名前で僕を呼んで』。

単なるボーイズラブの映画では片づけられない、みずみずしくも繊細な人間ドラマが非常に高い評価を得ました。

原作となったアンドレ・アシマンによる同名小説、さらにその続編小説『Find Me』を読み解き、映画との違いについて、さらに映画の続編製作の可能性まで、考察したいと思います。

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2017年公開の映画『君の名前で僕を呼んで』

映画『君の名前で僕を呼んで』は、アンドレ・アシマンが2007年に発表した同名小説を原作に、ルカ・グァダニーノが監督、名匠ジェームズ・アイヴォリーが脚本を手掛け、2017年に映画化されました。

主演はティモシー・シャラメとアーミー・ハマー。

米アカデミー賞では、作品賞や主演男優賞含む4部門にノミネートされ、見事に脚色賞を受賞。他にも、世界中の映画祭でさまざまな賞に輝いています。

■原作者アンドレ・アシマンについて

アンドレ・アシマンは、イタリア系アメリカ人。ユダヤ系でもあります。エジプト生まれで、子どもの頃に、イタリア、そこからさらにアメリカに移住しました。

1996年に発表した回顧録『Out of Egypt』が注目されたのち複数の著作を発表。2007年に刊行した言わば処女小説が本作です。現在はニューヨーク市立大学大学院センターの教壇に立ち、文学理論史やプルーストについての講義をしつつ、執筆活動を続けています。既婚で子どもが3人います。

■監督のルカ・グァダニーノについて

ルカ・グァダニーノは、イタリアのシチリア生まれ。長編映画デビューとなった1999年の『ザ・プロタゴニスツ』がヴェネチア映画祭で高い評価を得て注目されました。

2009年の『ミラノ、愛に生きる』も絶賛され、2018年のリメイク版『サスペリア』の監督にも抜擢されました。2022年現在もさまざまな企画が進行中。中には1983年の『スカーフェイス』のリメイク、ルーニー・マーラを主演にしたオードリー・ヘップバーンの伝記映画などがあります。

私生活は、オープンリー・ゲイで知られています。映画『ベケット』など知られるイタリア人監督のフェルディナンド・シト・フィロマリノと、2020年まで10年ほどパートナーでした。

■映画脚本のジェームズ・アイヴォリーについて

監督として、『眺めのいい部屋』『モーリス』『ハワーズ・エンド』『日の名残り』など多くの秀作を発表してきた名匠ジェームズ・アイヴォリーが脚本を手掛けています。

オープンリー・ゲイで知られ、学生時代に知り合った映画製作者のイスマイル・マーチャントとは、マーチャントが2005年に他界するまで40年以上、公私に渡るパートナーでした。本脚本で、89歳の最高齢記録となったアカデミー脚色賞受賞など、さまざまな賞を席巻しています。

その後、新作の予定はなく、本作が最後に手掛けた映画になる可能性もあります。



小説『君の名前で僕を呼んで』の内容は?

映画は、17歳の少年エリオと父の助手としてやってきた24歳の大学院生オリヴァーのひと夏の恋を描くという非常にシンプルなストーリーですが、2007年に発表された原作小説は日本版文庫本にして300ページを超える文量があります。

僕(エリオ)の一人称で描かれる小説は、全体で四部構成。

第一部「あとでなければ、いつ?」
第二部「モネの段丘」
第三部「サン・クレメンテ症候群」
第四部「ゴースト・スポット」

オリヴァーが北イタリアのパールマン邸にやってきたところから、エリオのもどかしくも切ない感情、二人のナイーブな関係を綴った第一部と第二部で全体の3分の2に相当する200ページ超。オリヴァー帰国前の二人の小旅行を描く第三部が50ページ、オリヴァーを送り出して帰宅したエリオのその後を描く第四部もわずか50ページにすぎません。

エリオの繊細かつ揺れ動く感情が、ひたすら事細かに綴られる一部と二部については、夢中になって読み耽る人と、やや冗長な印象を受け退屈だと感じてしまう人にわかれてしまうかもしれません。

しかし、第四部に進むと、映画とは違う別の展開が描かれていることに驚くことになります。

映画と原作小説の違い【ネタバレ注意】

全体として、映画は原作に忠実に映像化されていると言ってよいでしょう。第三部で描かれる二人の小旅行は、小説ではローマ、映画ではベルガモといった、些細な変更がいくつかある程度です。

ただ、小説の設定が1987年に始まるのに対し、映画はさまざまな理由から1983年に変更されています。

映画では、傷心のエリオにかける父の言葉が非常に印象的でしたが、これは小説でも同じく、いやむしろより含蓄のある言葉が数ページに渡って綴られており、映画以上に感動的です。

「これから言うのはすごく言いにくいことだ」父の口調が変わった。“そのことについて話さなくてもいいが、私が今から話すことを知らないふりをするのはやめようじゃないか”と言うかのように。」

引用:『君の名前で僕を呼んで』アンドレ・アシマン著、高岡香訳、オークラ出版

そして、映画と決定的に異なるのが上記でも触れたとおり、第四部です。

映画では、その年の冬、オリヴァーから電話で結婚することが告げられて終わりますが、原作は違います。

ニューヨークに戻ってから数か月後、オリヴァーはクリスマスと新年を祝うために、再び北イタリアにやってくるのです。そこで、「春に結婚するかもしれない」と直接聞かされ、エリオともただの軽いキスだけで終わります。

その通り、翌年の夏、オリヴァーが結婚したという知らせが届きます。エリオがアメリカの大学に進学することなど、少ない手紙のやり取りだけに終わって9年後、アメリカにいるエリオのもとに、北イタリアの両親から電話があります。そこには、オリヴァーが妻、八歳と六歳の息子を連れて訪ねていたのです。

さらに4年後、エリオは思い立って、オリヴァーが教壇に立っているニューイングランドの大学を訪ねます。15年ぶりの再会を喜ぶオリヴァーといまだ喪失を引きずるエリオ。昔と変わらず明るく自宅に招こうとするオリヴァーの申し出を断り、二人はホテルのバーでしみじみとした会話を交わすのでした。

それからさらに時間が飛び、二人が最初に会ってから20年目の夏、オリヴァーが北イタリアのエリオのもとにやってきます。エリオの父が亡くなり、遺灰の一部をここに埋めたのです。2人は懐かしく会話を交わしつつ、エリオがやはり「君の名前で僕を呼んで」欲しいという思いに囚われるところで、物語は終わります。



続編小説『Find Me』の内容は?【ネタバレ注意】

一作目から12年後の2019年、続編となる小説『Find Me』が発表され、日本語にも翻訳されています。

前作同様、以下の通り四部構成となっており、音楽用語を使用したそれぞれのタイトルは、エリオがピアニストとなっていることに由来しています。ただ前作と異なるのは、四部とも主語が変わるということです。

第一部「テンポ」
第二部「カデンツァ」
第三部「カプリッチョ」
第四部「ダ・カーポ」

第一部の主語「私」はエリオではなく、父のサミュエルであり、父の恋愛が綴られます。時は前作で描かれた夏から10年後。妻とはすでに離婚しており、エリオはピアニストの卵としてローマに在住。サミュエルは講演のためローマに向かった電車の中で、写真家のミランダと出会い、一目ぼれします。

第二部の主語はエリオであり、エリオの一人称で綴られるのは、パリに滞在していたときに出会った中年男性ミシェルとの短い恋愛です。ミシェルはすでに成人した息子がいるバツイチの弁護士。ミシェルにオリヴァーのことを話しますが、15年前の話と述べていること、また父とミランダの間には子どもが生まれていることが会話からわかります。そして「来年の春」にアメリカにツアーに行き、そのときにオリヴァーを訪ねるつもりであることが語られます。

第三部の主語はオリヴァーです。エリオが突然訪ねてきたのが5年前であること。やはりエリオのことが忘れられず、会いに行く決意をします。

第四部では、再びエリオの口から、イタリアにやってきたオリヴァーと再び結ばれ、エリオの母、ミランダ、死んだ父とミランダの子どもであるオリーの五人で暮らしている現在が短く綴られて終わります。

映画『君の名前で僕を呼んで』の続編はどうやら実現せず?

映画が上映された頃から、グァダニーノ監督は続編の製作をはっきり匂わせていました。リチャード・リンクレイター監督の「ビフォア」3部作のような形を想定していたようです。

2020年には、キャストがほぼ全員続投することを発表しつつ、新型コロナの影響で撮影が遅れそうだといった発言があったり、アーミー・ハマー自身も雑誌のインタビューで、グァダニーノ監督と話を進めていることを認めたりしていました。

そんな状況を一変させたのが、2021年3月、アーミー・ハマーに起きた性的暴行の告発でした。大きなスキャンダルとなり、その結果、ハマーは予定していた出演をすべて降板、エージェントとの契約も破棄になってしまいます。

グァダニーノ監督は、2021年5月のインタビューで、続編の企画は完全に棚上げ状態であり、シャラメも自分も他の作品で忙しいと述べ、事実上の断念を匂わせる発言をしています。

残念ながら、完全に白紙状態だと言っていいのかもしれません。仮に実現したとしても、オリヴァー役が他の俳優に変更されることはほぼ間違いないでしょう。

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