映画『スカーフェイス』あらすじ/キャスト/9つの撮影秘話

スカーフェイス 映画

1983年の公開から時間が経つにつれ、カルト的人気を博していったマフィア映画の傑作『スカーフェイス』。

狂気溢れる主人公トニー・モンタナを演じたアル・パチーノ、ミシェル・ファイファー、スティーヴン・バウアーらキャスト陣、またブライアン・デ・パルマ、オリバー・ストーンらスタッフ陣にとっても文字通りキャリア代表作の一つとなりました。

本記事では、そんな映画『スカーフェイス』について、あらすじやキャストにくわえ、知られざる撮影秘話や実話を紹介し、最後に個人的感想を交えてレビューしたいと思います。

スポンサーリンク

1983年公開の映画『スカーフェイス』とは?

1932年のハワード・ホークス監督作『暗黒街の顔役』(こちらも原題はスカーフェイス)を、1980年代のフロリダ、主人公をキューバ人に置き換えてリメイクした1983年公開の映画が『スカーフェイス』です。

『キャリー』『アンタッチャブル』『ミッション・インポッシブル』などで知られるブライアン・デ・パルマがメガホンをとり、『ミッドナイト・エクスプレス』でアカデミー脚色賞を受賞したばかりのオリバー・ストーンが脚本、ドナ・サマーを世界的スターに押し上げたジョルジオ・モロダーが音楽を手掛けました。

映画は、ゴールデングローブ賞において、アル・パチーノが主演男優賞、スティーヴン・バウアーが助演男優賞、ジョルジオ・モロダーが作曲賞にノミネートされたものの、概して批評家筋の評価は芳しくありませんでしたが、その後、徐々にカルト的人気が沸騰。今やまがうことなきマフィア映画の傑作に位置づけられています。

映画『スカーフェイス』のあらすじとアル・パチーノらキャスト紹介

■あらすじ

1980年、一攫千金を狙ってキューバからアメリカのマイアミにやってきたトニー・モンタナ。ほどなくコカインの密売に関わるようになり、次第に組織の中で頭角を現していきます。

ついには組織のボスであるフランクを暗殺し、さらにフランクの愛人だったエルヴィラをも自分のものとして、頂点まで上り詰めることに……。

しかし、傲慢で冷酷なやり方は、さまざまな悲劇をよび、やがて自分自身も壮絶な破滅の道を突き進んでいくのでした。

■主要登場人物とキャスト

●トニー(アントニオ)・モンタナ/アル・パチーノ:マイアミにやってきたキューバ人移民
●エルヴィラ/ミシェル・ファイファー:フランクの愛人
●マニー/スティーヴン・バウアー:トニーの右腕
●ジーナ/メアリー・エリザベス・マストラントニオ:トニーの妹
●フランク/ロバート・ロッジア:ドラッグ密売組織のボス
●オマー/F・マーリー・エイブラハム:フランクの右腕



知られざる実話・撮影秘話・トリビア9選

①スカーフェイスの意味は?

「傷跡のある顔」の意味で、主人公トニーのあだ名です。ただし、劇中そう呼ばれるのは実はたった1度に過ぎず、しかもスペイン語です。

アメリカ・マフィアの大御所アル・カポネのあだ名が「スカーフェイス」であり、そのカポネをモデルにした1932年の映画が『暗黒街の顔役』です。

②映画『暗黒街の顔役』リメイクのきっかけ

本作は1932年のギャング映画『暗黒街の顔役』のリメイクであり、GQ誌によると、アル・パチーノがテレビで同映画を観て気に入り、長年コンビを組んできたプロデューサーのマーティン・ブレグマンにリメイクを提案したのがきっかけのようです。

その結果、企画が進み始めましたが、アル・パチーノ自身は内容と監督選びになかなか自信が持てず、その相談をしたのが友人のロバート・デ・ニーロでした。

デ・ニーロはブライアン・デ・パルマを推薦。同時にもしパチーノの企画が頓挫したら、マーティン・スコセッシに監督を依頼し、自分がトニーを演じたいと申し出たと言われています。

③ブライアン・デ・パルマの監督起用

ブライアン・デ・パルマは、オリバー・ストーンの脚本を読んで大いに気に入り、当時メガホンをとることが決定していた映画『フラッシュダンス』を自ら降板し、本作を選びました。

ちなみに、デ・パルマと仲の良かったスティーヴン・スピルバーグが、見学のため撮影セットを訪問。実際、終盤の短いワンシーンをスピルバーグが撮ったと言う噂もあります。

また、最初の監督候補者は、『セルピコ』や『狼たちの午後』でアル・パチーノと組んだほか、数々の傑作を手掛けていたシドニー・ルメットでした。

④自身がコカイン中毒者だったオリバー・ストーンの脚本

脚本を執筆したオリバー・ストーンは、自身が当時コカイン中毒者であり、その実体験が物語に色濃く反映しています。

ただ、そのことを反省し、渡仏して薬物を断ち、脚本はしらふの状態で完成させたと発言しています。

またトニー・モンタナの名前は、オリバー・ストーンがファンだったアメフトのスター選手、ジョー・モンタナからとりました。トニーは、映画『暗黒街の顔役』の主人公の名前のままです。

⑤キャスティング秘話

アル・パチーノは、当初、エルヴィラ役にグレン・クローズを希望していましたが、セクシーさに欠けるという理由でプロデューサーが却下。その後、多くの名前が候補に上がりました。中にはジーナ・デイヴィス、シャロン・ストーン、ケリー・マクギリスら実際にオーディションを受けた者、ジョディ・フォスター、メラニー・グリフィス、キム・ベイシンガー、ブルック・シールズら辞退組もいます。

最終的に、当時ほとんど無名に近かったミシェル・ファイファーに白羽の矢がたったのです。

マニー役の有力候補の一人だったのが、ジョン・トラボルタでした。結局、オーディションで選ばれたのがスティーヴン・バウアー。実は、主要キャストの中で本物のキューバ系はバウアーただ一人です。



⑥アル・パチーノは劇中、本物のコカインを吸引していた?

長らく、劇中でトニーが吸引しているコカインは本物だったのではないかとのうわさがありましたが、スタッフは、粉ミルクだったと否定しています。

真相がどうであれ、ただそのせいで鼻の調子がおかしくなったとアル・パチーノは後のインタビューで告白。またパチーノは、トニー役は今まで演じてきた人物の中でももっとも好きな役柄の一つだと発言しています。

⑦撮影ロケ地

フロリダ州マイアミが、映画の主な舞台ですが、実際に多くの撮影が行われたのはロサンゼルスでした。

マイアミでは、映画で描かれるキューバ人像に反感を覚えたキューバ系アメリカ人による抗議があったためのようです。

主なロケ地は以下の通りです。

【ロサンゼルス】
●移民が集まる高架下:Junction Santa Monica x Fwy Harbour Fwy, Los Angeles, California,
●トニーの邸宅の外観:631 Para Grande Lane, Santa Barbara, California
●ボリビアのソーサ邸:656 Park Ln, Santa Barbara, California

【マイアミ】
●チェーンソーで拷問されるホテル:Sun Ray Hotel(閉業),728 Ocean Drive, Miami Beach, Florida
●バビロン・クラブの外観(内装はセット):3501 Southwest 130th Avenue in Davie, Florida
●フランクの邸宅の内装とプール:485 West Matheson Drive, Key Biscayne, Florida

⑧撮影後、行方不明になった女優

青いビキニの若い娼婦を演じた当時18歳のタミー・リン・レパートは、映画公開の5か月前となる1983年7月6日、突然失踪します。

何者かから殺害予告を受けていたとか、妊娠3か月だったなど諸説あり、後に未解決事件を扱うドキュメンタリー番組で紹介されるなど、全米で大きな注目を集めました。今日に至っても消息不明のままです。

⑨再々リメイクが進行中

2011年、ユニバーサル・スタジオが『スカーフェイス』の再々リメイクを企画していることが公になります。『トレーニング デイ』などで知られる黒人監督のアントワン・フークア、テレビドラマ『ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア』で知られるテレンス・ウィンターが脚本、主演ディエゴ・ルナでメキシコ人移民の物語になる予定でしたが、その後それぞれ降板し、企画が中断します。

そんな中、2020年、監督に『君の名前で僕を呼んで』のルカ・グァダニーノ、脚本をコーエン兄弟が担当する、企画が再スタートしたことが発表されました。

その後、進展の情報はなく、再びの頓挫が心配されていましたが、2022年10月、ネット映画系メディアが、コーエン兄弟による脚本がついに完成したと報じています。



映画『スカーフェイス』の感想・レビュー・名言

監督ブライアン・デ・パルマ、脚本オリバー・ストーン、音楽ジョルジオ・モロダー、主演アル・パチーノ。今から考えると、まさにドリームチームで制作された本作。

舞台は1980年代のマイアミ。カストロの融和政策により、キューバから移住してきた貧しい青年トニーが、麻薬取引の裏社会で一気にのし上がり、破滅していく物語だ。

描かれるのは、自分以外の他人を信じることができなかった男の悲劇である。

しかし、トニーの生き方は、その不器用さゆえに、抗いがたい不思議な魅力を放っている。

高級レストランで妻のエルヴィラと大喧嘩したあと、回りの客に向けて悪態をつく。

「お前らはみな腰ぬけだ。何食わぬ顔で、おれのような人間を指さして、こう言う。あいつは悪党だと。そういうお前らは何だ? 善人か? 笑わせるな。何食わぬ顔でウソをつく。
おれはそんなことはしない。おれはいつも真実を話す。ウソをつくときもだ」

妻のエルヴィラを演じたのがミシェル・ファイファー。
自分の弱さから、権力と富と薬に頼らざるを得ない、寂しい女である。

同じアル・パチーノ主演の『ゴッドファーザー』が、同じく裏社会を描いて見事に芸術的な高みまで到達したのに対し、本作はその俗っぽさにおいて、特異な世界観を完成させたと思う。

成り金と悪趣味を極めた部屋の調度品、巨大な金と大理石のジャクジー風呂、サンセット柄の壁紙、どぎつい原色のネオンなど、チープさの極致が素晴らしい。

トニーとエルヴィラは、そんな世界で輝く男と女である。
似た者同士の二人は、磁石のように魅かれあい、そして堕ちていく。

他にもラスベガスを舞台にした『カジノ』など、自分はこんな破滅の物語が大好物である。

コメント

テキストのコピーはできません。
タイトルとURLをコピーしました