エリザベス2世が在位する英国現代史を、ロイヤル・ファミリーの視点を軸に描くNetflixの大ヒットドラマ『ザ・クラウン』。
主人公であるエリザベス2世が2022年9月8日に崩御された中、シーズン5が2か月後の11月9日に配信されました。
本記事では、シーズン5の全10話ごとのあらすじにくわえ、物語をもっと深く理解するための実話・その後など豆知識の紹介、最後にドラマに対する評価にも簡単に触れたいと思います。
『ザ・クラウン』シーズン5が2022年11月9日にNetflixで配信!
Netflixオリジナルドラマ『ザ・クラウン』は、ゴールデングローブ賞やプライムタイム・エミー賞など、世界中で数々の賞を受賞してきた傑作ドラマです。
シリーズはシーズン6で完結し、以下の通り配信されてきました。
シーズン1:2016年11月
シーズン2:2017年12月
シーズン3:2019年11月
シーズン4:2020年11月
シーズン5:2022年11月
シーズン6:2023年11月と12月
これまで配信されたシーズンのあらすじ簡単振り返りや人物相関図などについては、下記の記事をご覧ください。
『ザ・クラウン』シーズン5、全10話のネタバレあらすじ
シーズン5の柱となっているのは2つ。1つはチャールズとダイアナの関係破綻、そしてもう1つは、エリザベスとチャールズの間にあった考え方のズレです。
本シーズンも、ロイヤル・ファミリーはもとより、多くの実在の人物が登場し、実際にあった出来事が描かれますが、日本人には少々なじみが薄く、わかりづらい箇所もあるかと思います。
そこで、各話のあらすじに、実話にまつわる豆知識的な情報をくわえて解説しています。
エピソード1「ヴィクトリア女王症候群」
1991年7月、チャールズとダイアナは、「2度目のハネムーン」と称し、御一行でイタリアにクルーズ旅行に旅立ちます。表向き復縁したと見せかけるためでした。
一方、エリザベスもフィリップとともにロイヤルヨット「ブリタニア号」に乗り込み、スコットランドへ…。そんな折、国民の半数が、女王がすみやかに退位し皇太子に王位を譲ることを望んでいるという新聞記事が出てしまいます。ヴィクトリア女王と同じく長すぎる在位を批判するものでした。
仕事を理由にバカンスを繰り上げて帰国したチャールズは、保守党のジョン・メージャー首相と面談し、さりげなく女王退位を進める方向に協力してくれるよう依頼します。
スコットランドのバルモラル城に到着したエリザベスは、新聞記事を見てショックを受けることに…。また、舞踏会出席のためやってきたメージャー首相に、老朽化が目立つ「ブリタニア号」を政府予算で修繕してくれるよう依頼しますが、こちらも裏ではチャールズがそうすべきではないと首相に耳打ちしていました。
王室の面々が勢ぞろいした舞踏会の様子を見て、メージャーはファミリーの関係が裏で崩壊状態にあることに気づきます。
エピソード2「制度」
フィリップは、幼い娘を亡くして傷心の親族、ペニーを慰めるうちに、次第に心惹かれていくことに…。
一方ダイアナは、親しい友人のジェイムズを介し、アンドリュー・モートンなる人物から暴露本出版のオファーを受けます。ジェイムズが仲立ちする形で、ひそかに間接的なインタビューが行われます。ダイアナは、チャールズとの不和、カミラのこと、摂食障害や自殺未遂のことを赤裸々に告白します。
しかしその後、盗聴疑惑、ジェイムズの身の危険、モートンの自宅に何者かが侵入するなど不可解な出来事が起こり…。
暴露本のことを耳にしたフィリップが、制止しようとダイアナを説得しますが、時すでに遅し。ついにダイアナ自身は一切関わっていないという名目で暴露本が出版され、一大ベストセラーとなってしまうのでした。
エピソード3「モーモーと呼ばれた男」
1946年、エジプトのアレクサンドリアで、商人のモハメド・アルファイドを父に生まれたドディ。1979年には、実業家として大成功していたモハメドは、パリのリッツホテルを買収。エドワード8世の執事を長らく務めていたシドニーを自身の執事に引き抜き、その後ハロッズも手に入れます。一方、ドディは映画プロデューサーとなり、『炎のランナー』を成功させるのでした。
1972年に亡くなったエドワード8世に続き、妻ウォレスが1986年に亡くなると、モハメドは朽ちていた2人のパリの屋敷を購入し、修復します。エリザベスを城に招きますが、やってきたのは代理人でした。
その後、乗馬競技会でもモハメドを冷たくあしらうエリザベスの代わりに、話し相手になったのがダイアナ。モハメドは、そこで初めてダイアナに息子のドディを紹介します。
エピソード4「恐ろしい年」
若い頃、大恋愛した仲のピーター・タウンゼントから手紙を受け取り、浮かれるマーガレット。セーラ妃と離婚したいアンドリュー王子、再婚したいアン王女、暴露本をきっかけに別居寸前のダイアナとチャールズなど、折り重なる家族の問題に悩まされるエリザベス。
そんなエリザベスの悩みに追い打ちをかけるように、ウィンザー城まで火災に見舞われることに…。また、ピーターと再会し、今も変わらぬ愛に気づいたマーガレットは、2人の関係を引き裂いた姉を激しく責めるのでした。
エリザベスは、在位40年を記念したスピーチの席で、1992年という1年は大変つらい1年であったこと、また家族に強いた犠牲について、素直に感謝の気持ちを口にします。
エピソード5「前途」
チャールズとカミラの親密な電話の会話を偶然盗聴したアマチュア無線家が、Daily Mirror紙に売り込みます。新聞社はあまりの衝撃的な内容ゆえしばらく寝かせていましたが、3年後、チャールズとダイアナが正式に別居を発表したことで、公表に踏み切ります。
突然のスキャンダルに襲われたチャールズを、フィリップは激怒し、もちろん王室も激しく揺れ動くことに…。
チャールズは、テレビ番組のインタビューに応じ、赤裸々にカミラとの「友情」、そして王室についての自身の考えを語ることで問題の鎮静化を図ります。かたやダイアナは沈黙を貫き公務に励む一方、カミラは家を出ることに…。
チャールズは、イメージアップを図るため、自身が設立した若者支援の基金「プリンス・トラスト」をさらに推進することを発表します。
エピソード6「イパチェフ館」
民主化したロシアの初代大統領に就任したエリツィンと会談したメージャー首相から、エリツィンが英国贔屓であり、訪英したがっていると知らされたエリザベス。
フィリップ外遊中に、エリツィンの訪英が実現。エリザベスの訪露を希望するエリツィンに対し、エリザベスはある申し出をします。それは、1918年、フィリップと血縁があるロマノフ皇帝一家が粛清された「イパチェフ館」が取り壊されたのは間違いであり、正しく埋葬して欲しいというものでした。
エリツィンも、裏では不本意ながら、英露友好のため、帰国後さっそく遺骨採掘に着手。フィリップのDNAと一致し、ロマノフ家であることが確認されます。その結果、ようやくエリザベスとフィリップのロシア訪問が実現します。
しかし、一家全員の遺骨確認が進まぬ中、エリザベスとフィリップの関係にも溝が…。フィリップはペニーへの特別な感情を正直に告白するのでした。
エリザベスは内心の動揺を抑え、フィリップに言われてペニーと面会します。ロマノフ家虐殺をジョージ5世夫妻が黙認したとする説を口にするペニーに対し、エリザベスは祖父母の難しい立場を説明して擁護します。
エピソード7「どっちつかず」
ウィリアム王子がイートン校に入学し、孤独感に苛まれるダイアナ。そればかりか盗聴や車のブレーキ不能にも不信感をぬぐえず…。そんな中、知人に付き添った病院で出会ったのがパキスタン人医師のカーンでした。
ダイアナのテレビインタビューを狙うBBCのマーティン・バシールは、書類を偽装してダイアナの弟スペンサーに仲介させ、ダイアナに接近します。
ダイアナは、カーンに急速に惹かれていく一方、また、バシールの甘い言葉に乗せられ、インタビューを受けることをひそかに決意します。
エピソード8「火薬」
ダイアナが出演を承諾したとはいえ、王室の機嫌を伺うBBC上層部内ではさまざまな議論が渦巻きます。ダイアナも、スペンサーがバシールの嘘に気づいたことで、迷いが生じ…。
しかし、インタビュー収録が極秘に決行されます。ダイアナからその事実を知らされたエリザベスは、失望を伝えつつ、もう手遅れなら自分は番組を見ないと…。BBC上層部でも、バシールに説得された会長が、反対する理事長を押し切って決断。
エリザベスとフィリップの結婚48周年を祝う式典が開かれた1995年11月20日、ついにBBC番組『パノラマ』の中で、ダイアナのインタビューが放送されます。世界中に大きな衝撃をもたらし、チャールズはもちろん王室に非難の目が向けられることに…。
エピソード9「第31号」
エリザベスは、ついにチャールズとダイアナの離婚を認めます。一方、ダイアナはあまりの波紋の大きさとカーンが離れていったことに打ちのめされていました。
ダイアナが高額の和解金を求めるなど離婚劇は泥沼化し、エリザベスはメージャー首相に調停を依頼します。
宣伝のプロに相談したチャールズとカミラは、イメージアップのため寛容にふるまうことが大事だと助言されます。メージャーは、両者の間に立ち、チャールズが和解金に合意する代わりに、今後ダイアナは王室を貶めるような発言は一切しないという条件で合意を取り付けます。こうしてついに離婚が正式に成立するのでした。
エリザベスに助言され、ダイアナのもとを訪ねたチャールズは、久しぶりに穏やかに腹を割った会話を交わしますが、結局は口論に終わってしまいます。
エピソード10「退役」
王室継続の賛否を問うテレビ番組が放送される一方、エリザベスら王室も、来るべき香港返還、労働党のトニー・ブレア政権誕生とメージャーの退陣など、新しい変化に直面していました。
エリザベスは、香港返還式典にチャールズを送ること、そして新政権が支援中止を決めた「ブリタニア号」の退役航海とすることを決断します。式典のあと、船上でブレア首相と極秘に面会したチャールズは、女王を批判し、王室にも改革が必要だと力説するのでした。
香港からの帰路、カミラとのバカンスを楽しんで帰国したチャールズを、エリザベスが叱責します。
一方、バレエの劇場でモハメドに再会したダイアナは、フランスのサントロペにある別荘で過ごすバカンスに誘われます。その頃、アメリカ人モデルとの交際をモハメドに反対されたドディは、別れを切り出していました。
『ザ・クラウン』シーズン5の評価・感想
本拠地のイギリスでは配信される前から、反発を多く含む過剰な反応を巻き起こしていたようです。
何より問題視されたのは、エピソード1のメモでも示したとおり、事実と異なる描写が多数みられる点でした。
オスカー受賞者でもあるイギリスを代表する大女優のジュディ・デンチは、配信に先立つ10月、ザ・タイムズ紙に書簡を発表。その中で、物語は王室と個人の尊厳を不当に貶めるものだとして強く批判しました。その結果、Netflixは「フィクションである」という文言を明示するに至っています。
見事にダイアナになりきったエリザベス・デビッキ、また、新しくエリザベス女王を演じるイメルダ・スタウントンの演技を高く評価しつつ、物語はダイアナとチャールズの方がより目立つ形になっており、主人公の影が薄い点を指摘する声も聞かれました。
『ザ・クラウン』シーズン6はどうなる?
シーズン5の最終話は、ダイアナの事故死になるものと推測されましたが、その前の時点で終わっています。
最終話の軸となった香港返還式典が開催されたのは1997年6月30日。そしてダイアナが事故死するのは、それからわずか2か月後の8月31日。シーズン6は、悲劇の事故で幕を開けます。
ダイアナの晩年、死去による王室の動揺と混乱が前半の中心となり、2005年4月9日のチャールズ皇太子とカミラの結婚まで描かれます。詳しくは以下の記事をご覧ください。
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