在位最長記録を更新し、2022年9月8日に崩御した、エリザベス2世の即位に始まるイギリス現代史を、王室の視点で描くドラマ『ザ・クラウン』。
Netflixを代表する大ヒットドラマであり、欧米でさまざまな賞を受賞しています。
全部で6つのシーズンから構成され、2023年に、完結となるシーズン6が配信されました。
本ドラマのユニークな点は、主要登場人物を複数の俳優たちがリレー形式で演じていくこと。ここでは、主人公エリザベス女王を演じる3人の女優について、プロフィールやおすすめの代表作などご紹介します。
Netflixドラマ『ザ・クラウン』でエリザベス女王を演じる3人の女優
エリザベス女王の若き時代を、フレッシュなクレア・フォイ、中期を、アカデミー賞主演女優賞に輝き、まさにいま脂の乗った実力派オリヴィア・コールマン、後期を、イギリスを代表する国民的女優のイメルダ・スタウントンと、非常に考えられたキャスティングがされています。
クレア・フォイ【シーズン1・2】
フィリップとの結婚(1947年)に始まり、父ジョージ6世の崩御による女王即位から、三男エドワード王子出産(1964年)までを描いたシーズン1と2でエリザベスを演じたのはクレア・フォイです。
クレア・フォイは、1984年4月16日、イングランドのストックポート生まれ。リヴァプール・ジョン・ムーア大学とオックスフォード・スクール・オブ・ドラマで演技を学び、2008年にBBCの人気ドラマシリーズ『ビーイング・ヒューマン』で女優デビューを果たしました。
2015年、同じくBBCのミニシリーズ『ウルフ・ホール』でアン・ブーリンを演じ、一躍注目されます。大抜擢となった本作エリザベス2世役で、ゴールデングローブ賞やエミー賞の主演女優賞含む数々の賞の受賞・ノミネートを果たし、世界的に知られる人気女優となりました。
2023年には、山田太一作『異人たちとの夏』の2度目の映画化となる『異人たち』で主人公の母(大林宣彦版では秋吉久美子が演じた役柄)を演じ、高い評価を得ました。
私生活では、2014年に俳優のスティーヴン・キャンベル・ムーアと結婚して一女をもうけたものの、2018年に離婚しています。
【おすすめ出演作品】
①『ファースト・マン』(2018年)
『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼル監督とライアン・ゴズリングが再びタッグを組んだ、実話の映画化です。
人類初の月面着陸を成功させた宇宙飛行士ニール・アームストロングをゴズリング、そしてクレア・フォイは彼の妻ジャネットを演じています。
米アカデミー賞4部門にノミネートされ、視覚効果賞を受賞した映像も見ごたえがあります。
②『蜘蛛の巣を払う女』(2018年)
スティーグ・ラーソン作『ミレニアム』シリーズの映画化であり、本国スウェーデン版3部作、アメリカ版『ドラゴン・タトゥーの女』に続く3度目の映画化作品が『蜘蛛の巣を払う女』です。
スウェーデン版のノオミ・ラパス、アメリカ版のルーニー・マーラに続き、ダークヒロインの天才ハッカー、リスベッド役に抜擢されたのがクレア・フォイ。
背中の刺青や全身ピアスなど、『ザ・クラウン』の女王役とは180度異なる過激なキャラクターぶりに注目です。
③『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』(2022年)
19世紀末から20世紀初頭にかけて、統合失調症を患いながらも、擬人化した猫を描く作品で広く知られたイギリス人画家、ルイス・ウェインの半生を描いた伝記映画です。
主人公をベネディクト・カンバーバッチ、その妻となるエミリー・リチャードソンをクレア・フォイが演じています。
監督を務めたのは、コメディドラマ『フラワーズ』、またBBCドラマ『Giri/Haji(ギリ/ハジ)』で俳優としても高い評価を得た日系イギリス人のウィル・シャープです。
オリヴィア・コールマン【シーズン3・4】
ウィルソン政権が誕生した1964年に始まり、さらに、英国初の女性首相サッチャー政権の誕生と辞任(1990年)までを描くシーズン3・4において、エリザベス女王を演じたのがオリヴィア・コールマンです。
オリヴィア・コールマンは、1974年1月30日、イングランド東部ノリッジ生まれ。ブリストルにある演劇学校を卒業して2000年にデビュー。まずテレビを中心にキャリアを積みました。
2013年から2017年まで放送された『ブロードチャーチ』で英国アカデミー・テレビ賞主演女優賞、2016年に『ナイト・マネジャー』でゴールデングローブ賞助演女優賞を受賞するなど、演技派女優として非常に高い評価を得ます。本作『ザ・クラウン』でも見事ゴールデングローブ賞主演女優賞に輝きました。
映画においても、2018年の『女王陛下のお気に入り』でアカデミー主演女優賞やヴェネツィア国際映画祭女優賞など世界中で数々の賞を独占。今や英国が誇る演技派女優の一人となりました。
私生活では2001年に一般男性と結婚し、3人の子どもをもうけています。
【おすすめ出演作品】
①『思秋期』(2011年)
自暴自棄な荒れた生活を送る中年男と、あるつらい秘密を抱える一人の女が出会い、やがて2人が不器用ながらかすかな希望を見出していく姿を描いた秀作人間ドラマが『思秋期』です。
数年前に妻に亡くした男ジョセフをピーター・ミュラン、古着を売る店で働く信心深い女ハンナをオリヴィア・コールマンが演じています。
今注目されているパディ・コンシダイン監督の長編映画デビュー作です。英国アカデミー賞やインディペンデント映画賞、サンダンス映画祭はじめ、世界中で監督賞・主演女優賞を含む数々の賞に輝きました。
②『女王陛下のお気に入り』(2018年)
18世紀初頭の英国を統治したアン女王を主人公に、彼女の寵愛をめぐって対立する2人の女官の姿を描いた宮廷ドラマです。
気まぐれな女王を独特の存在感で演じたオリヴィア・コールマンの演技は絶賛され、ヴェネツィア映画祭や英・米アカデミー賞で軒並み主演女優賞に輝きました。
対立する2人の女性にはレイチェル・ワイズとエマ・ストーンが扮しています。
③『ザ・ファーザー』(2020年)
刻々と悪化する認知症を患う80歳の父アンソニーと、家族の存在すら忘れていく父に戸惑う娘アンの姿を描いた人間ドラマです。
フランス人劇作家フローリアン・ゼレールが、自身の戯曲を原作に、自らメガホンをとった監督デビュー作です。
父をアンソニー・ホプキンス、娘アンをオリヴィア・コールマンが演じ、2人の演技はプレミア上映されたサンダンス映画祭で大絶賛されました。アンソニー・ホプキンスは、史上最高齢でアカデミー賞主演男優賞にも輝きました。
イメルダ・スタウントン【シーズン5・6】
チャールズ皇太子とダイアナ妃の離婚、やがて訪れる悲劇、さらに今日に至る王室の歩みが描かれるシーズン5・6において、エリザベス女王を演じるのはイメルダ・スタウントンです。
イメルダ・スタウントンは、1956年1月9日生まれ、ロンドン出身。名門王立演劇学校卒業後、舞台で華々しいキャリアを重ねます。
ローレンス・オリヴィエ賞にはこれまで13度ノミネートされ、『イントゥ・ザ・ウッズ』、『スウィーニー・トッド』など有名ミュージカルや芝居で主演女優賞を3度、助演女優賞を1度受賞。押しも押されもせぬ大スターです。
80年代以降は、映画やテレビドラマにも出演するようになります。2004年の主演映画『ヴェラ・ドレイク』では、ヴェネツィア国際映画祭女優賞はじめ、欧米の複数の主演女優賞を席捲しました。
夫は『ダウントン・アビー』の執事チャーリー・カーソン役でも知られる俳優のジム・カーター。2006年には大英帝国勲章を授与されるなど、英国を代表する国民的大女優です。
【おすすめ出演作品】
①『ヴェラ・ドレイク』(2004)
1950年代のイギリスを舞台に、明るく働き者の妻であり母でもあったヴェラが、秘密裡に臨まない妊婦の堕胎に手を貸していたことから、思いもよらぬ事態に陥る姿を描きます。
『秘密と嘘』でカンヌ国際映画祭パルム・ドールに輝いたマイク・リー監督作。本作でもヴェネツィア国際映画祭金獅子賞、そしてヴェラを演じたイメルダ・スタウントンが女優賞を受賞しました。
イギリスではすでに大女優だったイメルダ・スタウントンの名を世界に知らしめた作品です。
②『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』(2007)
原作小説第5巻を映画化した2007年の公開の第5作『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』に登場した魔法大臣付上級次官ドローレス・アンブリッジを演じているのがイメルダ・スタウントンです。
2010年に公開された第7作『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1』にも再登場。
ファンタジー世界に生きる強烈なキャラクターですが、さすがの存在感で演じており、より幅広い層にその名が知られるようになりました
③『パレードへようこそ』(2014)
サッチャー政権下にあった1984年のロンドンを舞台に、同性愛者の活動家たちとストライキを決行するウェールズの炭鉱労働者たちの間で交わされる交流、そして友情を描いた実話の映画化です。
イメルダ・スタウントンが演じたのは、ウェールズにある炭鉱町オンルウィン側の委員長ヘフィーナ。その演技で、英国アカデミー賞助演女優賞にノミネートされました。
作品はカンヌ国際映画祭クィア・パルムを受賞したほか、ゴールデングローブ賞や英国アカデミー賞作品賞でもノミネートされました。
『ザ・クラウン』その他主要キャストは?
エリザベス女王のみならず、もちろんその他の主要キャストも複数の役者がリレー形式で演じていきます。
主なキャストは以下の通り。
<エディンバラ公フィリップ殿下>
マット・スミス(シーズン1・2)
トビアス・メンジーズ(シーズン3・4)
ジョナサン・プライス(シーズン5・6)
<マーガレット王女>
ヴァネッサ・カービー(シーズン1・2)
ヘレナ・ボナム=カーター(シーズン3・4)
レスリー・マンヴィル(シーズン5・6)
<チャールズ皇太子>
ビリー・ジェンキンス/ジュリアン・バーリング(シーズン1・2)
ジョシュ・オコーナー(シーズン3・4)
ドミニク・ウェスト(シーズン5・6)
<ダイアナ妃>
エマ・コリン(シーズン4)
エリザベス・デビッキ(シーズン5・6)
各シーズンのあらすじや人物相関図などについては下記の記事をご覧ください。
コメント