トランスジェンダーを描くおすすめ映画/ドラマ25選【2023】

transgender ドラマ

トランスジェンダーの人々は、かつて映画やドラマに登場したとしても、単なる色物や端役での出演に限られていました。それが今や、大きな話題をよんだアメリカのドラマ『POSE/ポーズ』はじめ堂々と主役をはる作品も珍しくありません。

本記事では、これまでに発表された映画やドラマの中から、これだけは観ておきたいおすすめの秀作を25作品選りすぐり、あらすじと見どころとともにご紹介します!

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トランスジェンダーとは?

かつては性同一性障害という名称が使われたこともありましたが、決して病気でも障害でもないということから、今はトランスジェンダー、あるいはより具体的にMTF(male to female)・FTM(female to male)の呼び名が使われるようになりました。

LGBTQのTに当たりますが、見た目と心の性が一致していないということで、女装する一部のゲイ(G)とは異なります。

ちなみに、ドラァグクイーンというのは、言わば職業の名前であり、ジェンダー区分を表すものではありません。つまり、ドラァグクイーンの中には、ゲイの人もトランスジェンダーの人もいます。

ただ女性の格好をするのが好きなだけで、恋愛対象はあくまでも女性である男性もいたり、性別を特定しないノンバイナリーの立場の人がいたりと明確な線引きは難しく、なかなか一括りにできないのが現実です。

トランスジェンダーを描いたおすすめ映画・ドラマを紹介!

紹介するのはドラマ3作、ドキュメンタリーを含む映画22作の合計25作品です。

どれもおすすめの作品ばかりですが、あなたはこのうちの何作品、観ていますか?

1.世界中で高い評価を得たチリ映画『ナチュラルウーマン』(2017)

長年連れ添った最愛の恋人の死に直面したばかりか、そのことでいわれのないトラブルに巻き込まれ、さまざまな差別や偏見に立ち向かわざるをえなくなっていくトランスジェンダーの姿を描きます。

本作『ナチュラルウーマン』の魅力は、なんといっても主人公マリーナを演じたダニエラ・ベガ。実生活でもトランスジェンダーであることからくる圧倒的な存在感は、やはり唯一無二です。また、まるでミュージカルのような、セバスティアン・レリオ監督のよる独特の映像センスも見どころです。

チリ映画としては初となるアカデミー賞外国語映画賞を受賞したほか、ベルリン国際映画祭でも銀熊賞に輝くなど、世界中で高い評価を得ました。

2.世界初の性別適合手術を受けた実在の人物を描く『リリーのすべて』(2015)

1930年に世界で初めて男性から女性への性別適合手術を受けたデンマーク人リリー・エルベをモデルに、その半生を脚色交えて描いた話題作が『リリーのすべて』です。

女として生きていくと決心するリリーの生きざまはもちろんですが、何より心を打たれるのは、夫の真の姿に直面し、苦悩しながらも傍で支えていく境地に至る妻ゲルダの強さです。

リリーを演じたのは『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』で知られるエディ・レッドメイン。一方、ゲルダを演じたアリシア・ヴィキャンデルは、見事にアカデミー最優秀助演女優賞に輝きました。

3.ペドロ・アルモドバルの名を世界に知らしめた傑作『欲望の法則』(1987)

今や世界の巨匠となったスペイン人監督ペドロ・アルモドバルが、1987年に発表した初期の傑作が『欲望の法則』です。

倦怠期を迎えていた映画監督パブロとファンのゲイカップル。しかし、パブロが肉体関係を持ったアントニオが嫉妬にかられてファンを殺害、さらにパブロが交通事故により一時的な記憶喪失になったことで巻き起こる騒動を、アルモドバルらしい色濃い世界観で描きました。

三角関係に陥る3人のゲイにくわえ、もう一人の主要人物として絡んでくるのが、パブロの兄でありながら性転換手術で女性となったトランスジェンダーのティナです。

ティナを演じているのが、アルモドバル映画のミューズであるカルメン・マウラとあって、一筋縄ではいきません。また、アントニオには、まだ若きアントニオ・バンデラスが扮しています。

4.世界中で大ヒットを記録したオーストラリア映画『プリシラ』(1994)

3人の個性的なドラァグクイーンが、おんぼろバス「プリシラ号」に乗って、オーストラリアの広大な大地を旅するロードムービーです。

アバの「マンマ・ミーア」やシャーリーンの「愛はかげろうのように」など、随所に散りばめられた70年代の大ヒットミュージックにくわえ、アカデミー賞衣装デザイン賞に輝いた、ド派手なドレスも必見です。

3人の中で若いミッチとフェリシアはゲイだと思われますが、名優テレンス・スタンプが演じた年長のバーナデットだけが本物のトランスジェンダーの設定です。

『プリシラ』の世界的ヒットにともない、アメリカでリメイク映画3人のエンジェルが制作されたほか、ミュージカルとなって世界各国で上演されるなど、1994年の公開以来今なお根強い人気を誇っています。

5.トランスジェンダーとその息子が旅する風変りなロードムービー『トランスアメリカ』(2005)

完全に女性になるための性別適合手術を控えたトランスジェンダーのブリーと、いきなりその存在を知らされ、引き取ることになった17歳の息子トビーの奇妙な旅を描きます。トビーは、ブリーがまさか父親であるとは知らず、そのため事態は思わぬ方向に……。

旅の途中出会うさまざまな人々、ブリーの母親の存在、そしてトビーの知られざる過去が判明する中、二人はゆっくりとお互いを認め合っていきます。

独特の雰囲気を漂わせたブリーを見事に演じきり、絶賛されたのは『デスパレートな妻たち』のリネット役が有名なフェリシティ・ハフマン。トランスジェンダーではない女優が演じたことで、一部に批判もありましたが、それを軽く打ち消す素晴らしい演技をみせました。実生活の夫である個性派俳優のウィリアム・H・メイシーが製作に携わっています。

6.トランスジェンダーが主要キャストを演じた画期的ドラマ『POSE/ポーズ』(2018-2021)

1980年代後半のニューヨークを舞台に、「ボール」と呼ばれるダンスホールで個性を競うLGBTQたちの夢と愛、友情、挫折をきらびやかに描いたドラマシリーズが『POSE/ポーズ』です。シーズン3まで配信されて完結しました。

LGBTQの中でも中心になるのは、もちろんトランスジェンダーたちです。

HIV陽性の宣告を受けるヒロインのブランカを演じたMJ・ロドリゲス、ゴージャスなライバルのエレクトラを演じたドミニク・ジャクソン、恋に悩むエンジェルを演じたインディア・ムーアら、実生活でもトランスジェンダーの役者たちがかつてない規模で出演しています。

プロデュースをしたのは『glee/グリー』や『アメリカン・ホラー・ストーリー』などで飛ぶ鳥を落とす勢いのヒットメーカー、ライアン・マーフィー。全編に散りばめられた、センスあふれる80年代ミュージックやファッションにも注目です。

7.伝説の人物の生きざまに迫ったドキュメンタリー『マーシャ・P・ジョンソンの生と死』(2017)

1992年7月、ニューヨークのハドソン川で謎の死を遂げたマーシャ・P・ジョンソン。警察が結論付けたとおりの自殺なのか、あるいは他殺か。ゲイ解放運動の転換点となった1969年のストーンウォール暴動で先頭に立ったメンバーの一人であり、その後も活動のアイコン的存在だったマーシャの死の真相に迫ったドキュメンタリー映画であり、Netflixで配信されています。

当時の貴重な映像や関係者の証言から浮かび上がるマーシャの生きざまはもちろんですが、真相を追求する、自身もトランスジェンダーであるビクトリア・クルスの熱い闘いも胸を打ちます。

マーシャの友人だったシルヴィア・リヴェラももう一人の主人公です。LGBTQとして、同性婚など一般的に認められるつつある今日において、先駆者たる彼女たちの偉業に再び注目が集まっています。

8.生田斗真の熱演が光る『彼らが本気で編むときは、』(2017)

母親が失踪した少女をあずかる叔父と同棲しているトランスジェンダーの恋人。3人が織りなす、温かくもせつない人間模様をつづった2017年公開の日本映画が『彼らが本気で編むときは、』です。

『かめも食堂』で一躍注目を浴びた荻上直子監督がメガホンをとり、叔父を桐谷健太、トランスジェンダーのリンコを生田斗真が熱演しました。

リンコの存在を理解できない人々も描かれますが、まだ幼い少女に向かってすら、「リンコを少しでも傷つけたら私は許さない」と言ってのける田中美佐子扮するリンコの母の存在が、この作品を力強く支えています。

9.ヒラリー・スワンクが賞を総なめした『ボーイズ・ドント・クライ』(1999)

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1993年、アメリカのネブラスカ州で実際に起こった事件をもとに、一人のトランスジェンダーの生きざまとそれがもたらした悲劇を、鋭く描いた作品です。

ネブラスカ州のフォールズ・シティにやってきたブランドン。魅力的な女性ラナと恋に落ち、地元の男たちにも仲間として受け入れられる中、実はブランドンがトランスジェンダーだったことが明らかになってしまいます。

ブランドンを体当たりで演じたヒラリー・スワンクは、アカデミー賞やゴールデングローブ賞など名だたる賞レースの主演女優賞を総なめしました。恋人ラナを演じたクロエ・セヴィニーのフレッシュな魅力にも注目です。

10.キリアン・マーフィーが切ないほどにキュートな『プルートで朝食を』(2006)

60年代から70年代にかけてのアイルランドとイギリスを舞台に、捨て子だったパトリックが、さまざまな人々との出会いと別れを繰り返しながら成長していく姿を、軽やかなタッチで描いた作品が『プルートで朝食を』です。

幼少から女の子の格好をし、ふるまうのが好きなパトリックでしたが、やがて自らをキトゥンと名乗り、実の母を探すため、そして自分自身を探すためロンドンに向かいます。

ニール・ジョーダン監督らしい独特の世界観とともに、キトゥンを愛らしく、ときに儚げに演じ切ったキリアン・マーフィーが実に魅力的です。

キトゥンが、スティーヴン・レイ扮する男性バーティと桟橋でデートをする場面は、切ないほどに美しい名シーンです。



11.マシュー・マコノヒーとジャレッド・レトが熱演『ダラス・バイヤーズクラブ』(2013)

AIDSで余命宣告されたストレートの男ロンは、トランスジェンダーのレイヨンと手を組み、当時のアメリカではまだ未承認だったAIDS治療薬を密輸する組織「ダラス・バイヤーズクラブ」を設立します。

ロンを演じたマシュー・マコノヒー、レイヨンを演じたジャレッド・レトとも、大胆な減量などによって見事に役になり切り、揃ってアカデミー賞主演男優賞と助演男優賞に輝く快挙をみせました。

レイヨンのキャラクターは映画化のためのフィクションですが、ロン・ウッドルーフは実在した人物です。

12.LGBTQを正面から描く伝説的ドラマシリーズ『テイルズ・オブ・ザ・シティ』(1993-)

原作は、ゲイの小説家アーミステッド・モーピンのベストセラー小説。70年代後半のサンフランシスコに生きるさまざまな男女が織りなす人間模様を、真っ正面から描いた伝説的ドラマシリーズです。

サンフランシスコにある、一軒のシェアハウスに引っ越してきた一人の女性の視点で描かれますが、物語の大黒柱となっている存在がハウスの大家である、ミステリアスなアンナ。アンナはトランスジェンダーの女性です。

1993年、シーズン1が全米で放送されるやいなや、大きな衝撃を与えました。LGBTQの人々を、ごく身近な日常として描いた初めてのドラマとして、先駆的な作品に位置づけられています。

1998年と2001年にシーズン2と3が放送されたあと、2019年には20年後を描いたシーズン4が邦題『メリー・アン・シングルトンの物語』としてNetflixから配信されました。

13.アルモドバル不動の代表作『オール・アバウト・マイ・マザー』(1999)

目の前で一人息子を交通事故で亡くした母マヌエラが、別れた夫にそれを知らせるため、旅に出ます。大女優のウマ、AIDSを患うシスターのロサら、さまざまな人との関わりの中で、マヌエラは息子の死を乗り越え、次第に再生していきます。

本作に登場するトランスジェンダーは2人。マヌエラの親友で、彼女を明るく支える娼婦のアグラード、そしてもう一人は、ほかならぬ別れた夫……。

『オール・アバウト・マイ・マザー』カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞したほか、米アカデミー賞、英国アカデミー賞、フランスのセザール賞などで、外国語映画賞を軒並み独占した感動作です。

14.ボーイ・ジョージの妖しげな歌が奏でる愛憎サスペンス『クライング・ゲーム』(1992)

独立運動に揺れるアイルランドとイギリスを舞台に、武装テロ組織IRAのメンバーと人質の黒人兵、ロンドンに住む黒人兵の恋人らが絡む愛憎劇を、緊張感あふれるタッチで描いたサスペンス映画が『クライング・ゲーム』です。

メガホンをとったのは、アイルランドを代表する鬼才ニール・ジョーダン。黒人兵ジョディをフォレスト・ウィテカー、揺れ動くIRAメンバーのファーガスをスティーヴン・レイ、2人と絡むトランスジェンダーの恋人ディルをジェイ・デヴィッドソンが演じました。

タイトル曲をボーイ・ジョージが歌い、物語全体に妖しげな雰囲気を漂わせています。米アカデミー賞では7部門にノミネートされ、見事脚本賞を受賞しました。

15.ロック・ミュージカルの映画化『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』(2001)

1997年にオフ・ブロードウェイで上演され、ロングランヒットとなったロック・ミュージカルを、監督・脚本・主演を務めたジョン・キャメロン・ミッチェルが自らの手によって映画化した渾身の作『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』。

ベルリンの壁が崩壊する前の旧東ドイツから渡米してきたトランスジェンダーのヘドウィグ。壮絶な過去を背負いながら、それでもロックシンガーになる夢を追いかけ、愛と裏切り、挫折と怒りの中で魂のロックを歌い続けます。

サンダンス映画祭など各国で幾多の賞を受賞し、熱狂的なファンを生んで今も世界各国で舞台版が上演され続けています。

ちなみに「アングリーインチ」とは、旧東ドイツにいたころ行った性適合手術の失敗痕のことを指しています。

16.19世紀のダブリンを舞台にした『アルバート氏の人生』(2012)

将来自分の店を持つことを夢に、ホテルの住み込みウェイターとして働くアルバートは、実は男装した女性です。そこに、ペンキ塗り職人のヒューバートが雇われてきますが、彼もアルバートと同じであり、それだけでなく仕立て屋の女と幸せな家庭も手に入れていました。

いきなりウェイトレスのヘレンに求婚してしまう、不器用で一途な生き方しかできないアルバートに対し、ジャネット・マクティア扮するヒューバートは、物語の中で唯一真実の愛を知る人物であり、暗くよどんだ展開に一筋の光をもたらします。

アルバートを演じたグレン・クローズは、ブロードウェイでも同役を演じており、本映画化にあたっては主演のみならず、製作から共同脚本、音楽の作詞まで手掛けました。東京国際映画祭では、最優秀女優賞に輝いています。

17.才気あふれるグザヴィエ・ドラン監督作『わたしはロランス』(2012)

舞台はカナダのモントリオール。社会の偏見や反発にあいながらも、女性になることを決心する国語教師のロランスと、そんな彼を理解し支え続ける恋人フレッドの波乱の10年を描きます。

ロランス役をメルヴィル・プポー、一方、フレッドを演じたスザンヌ・クレマンは、カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門最優秀女優賞に輝きました。

監督・脚本を手掛けたグザヴィエ・ドランは当時まだ弱冠23歳。デビュー3作目にあたる本作でもその才能をいかんなく発揮し、世界的評価を不動のものとしています。

18.バレリーナを目指す少女の悲劇を描いたベルギー映画『Girl/ガール』(2018)

プロのバレリーナになるため、難関を突破しバレエ学校に入学した15歳の少女ララはトランスジェンダー。将来、性別適合手術を予定してはいるものの、現在のホルモン治療だけではなかなか体の変化を抑えることができず、また周囲の差別や嫌がらせなどもあって、次第に精神的に追い詰められていきます。

ララがとる過激な行動が、賛否両論巻き起こしましたが、カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門で、新人監督賞及びララを演じたビクトール・ポルスターが最優秀俳優賞を受賞するなど、高い評価を得た問題作です。

実在するトランスジェンダーのベルギー人ダンサー、ノラ・モンスクールの存在が本作『Girl/ガール』を製作するモチーフとなっています。

19.トランスジェンダーであることを告白した父と家族の葛藤『トランスペアレント』(2014-2019)

妻と別れた以外は、いっけんどこにでもある平凡なフェファーマン一家。ある日、父モーラが定年を迎えるにあたり、これからは女性として生きたいと3人の子どもたちに告白したことから、家族間にさまざまな問題が噴出します。

2014年、Amazonプライムビデオのオリジナルドラマとして配信されて人気をよび、シーズン5まで続いて完結しました。

コメディドラマでありながら、リアルでなまなましい演出に、多くの視聴者がひきつけられました。モーラからマーラへと名前を変えるトランスジェンダーの父を演じたジェフリー・タンバーは、ゴールデングローブ賞とエミー賞で主演男優賞に輝いています。



20.世界に衝撃を与えた傑作ドキュメンタリー『パリ、夜は眠らない。』(1990)

1987年のニューヨーク・ハーレム。ファッションやスタイル、ダンスなどを競い合うコンテスト「ボール」に集うゲイやトランスジェンダーたちのあるがままの姿と貧困で荒んだ日常に迫った、1990年発表のドキュメンタリー映画が『パリ、夜は眠らない。』です。

マドンナがいち早く取り上げ、一世を風靡することになる「ヴォーギング」を生み出したダンサー、本作撮影中、何者かに殺害されるトランスジェンダーの少女、無邪気に万引きを告白する未成年の少年など、インタビューを交えて紹介されますが、出演した人物の多くが、その後AIDSなどで相次いで死去している後日譚を踏まえると、なかなか胸に迫るものがあります。

当時、まだニューヨーク大学の学生だったジェニー・リヴィングストンが映画学科の課題として撮影したものでした。

ドラマ『POSE/ポーズ』や『ル・ポールのドラァグ・レース』は、言うまでもなくボール・カルチャー及び本ドキュメンタリーから多大な影響を受けたものです。

21.Netflixのドキュメンタリー『トランスジェンダーとハリウッド:過去、現在、そして』(2020)

映画やドラマの中で、トランスジェンダーがいかに描かれてきたかを、実際の映像、また当事者や関係者のインタビューを交えて迫ったNetflixオリジナルドキュメンタリーです。

登場するのは、『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』に出演したラバーン・コックス、『センス8』のジェイミー・クレイトンら、一線で活躍中のトランスジェンダーの役者たち。

原題は「Disclosure」。その通り、いかにトランスジェンダーの立場が公なものとなり、認められていったのかがよくわかる骨太ドキュメンタリーであり、本記事で紹介している作品も多数出てきます。

22.エル・ファニングら豪華キャストの織りなす『アバウト・レイ 16歳の決断』(2017)

16歳のトランスジェンダーの娘と周囲の家族の葛藤を描いたヒューマン・ドラマが『アバウト・レイ 16歳の決断』です。

トランスジェンダーであることを告白し、ホルモン治療を希望する主人公のレイをエル・ファニング、母のマギーをナオミ・ワッツ、祖母のドリーをスーザン・サランドンが演じています。

エル・ファニングが本物のトランスジェンダーでないことに批判の声も上がりましたが、豪華なキャストの織りなす家族のドラマは映画としてじゅうぶん見ごたえがあります。

23. 草彅剛がトランスジェンダーを演じる『ミッドナイトスワン』(2020)

新宿のニューハーフクラブで働くトランスジェンダーの凪沙が、たまたま面倒をみることになった親戚の少女・一果。そんな孤独な2人の関係がやがて……。

2020年9月に公開され、大きな話題をよんだ日本映画が『ミッドナイトスワン』です。草彅剛がトランスジェンダーの凪沙(なぎさ)を演じ、多くの賞に輝きました。

一果役を新人の服部樹咲、そして水川あさみや田口トモロヲらが脇を固めています。『全裸監督』の内田英治監督がメガホンをとりました。

24. Disney+で配信された、骨太なドキュメンタリーシリーズ『プライド』(2021)

アメリカの大手ケーブルネットワークFXが製作し、Disney+で配信されている骨太のドキュメンタリーシリーズが『プライド』です。

全6話から構成され、多くのインタビューを交えつつ、1950年代に始まるアメリカのLGBTQの歴史に迫ります。

中でも最もひどい差別を受けてきた黒人のトランスジェンダーの人々には多くの時間が割かれ、深く考えさせられると同時に実に見ごたえのある内容になっています。

25. iphoneで撮影し、数々の賞に輝いた『タンジェリン』(2015)

ロサンゼルスに暮らすトランスジェンダーたちの恋愛や友情を、iPhone5Sで撮影したリアル極まるコメディ映画が『タンジェリン』です。

主人公となる2人のトランスジェンダーの娼婦を、実生活でもトランスジェンダーのキタナ・キキ・ロドリゲスとマイヤ・テイラーが演じました。

中でもマイヤ・テイラーは、インディペンデント・スピリット賞など複数の映画祭で最優秀助演女優賞を受賞しています。



もはやわき役ではないトランスジェンダー

ご紹介した25作品、いかがでしょうか? 2023年現在のリストアップになっています。

仮に時系列に並べてみれば、かつては異端の存在だったトランスジェンダーが、すぐ身近にいる日常的な存在として、描かれ方も変わりつつあることがわかってきます。

本物のトランスジェンダーの俳優がそういった役柄を演じるのがもはや主流になっている欧米に対し、日本はまだその段階に至っていないのが少し残念です。

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