ペドロ・アルモドバルの全21監督作徹底ガイド!【おすすめランキング】

ペドロ・アルモドバル 映画

カンヌ国際映画祭で審査委員長を務めるなど、今やスペイン映画の巨匠として誰もが認めるペドロ・アルモドバル。

1980年のデビュー作『ペピ、ルシ、ボンとその他大勢の娘たち』から、2019年の自伝的作品『ペイン・アンド・グローリー』まで、これまで発表した監督作は全21作。

ここでは、全作品を、おすすめランキング形式でご紹介したいと思います。

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ペドロ・アルモドバルのプロフィール

ペドロ・アルモドバルは1949年9月25日、スペインのシウダー・レアル県カルサーダ・デ・カラトラーバに生まれました。司祭になって欲しいという両親の期待から、8歳より寄宿型の神学校に通い始めましたが、このころからすでに宗教より映画に魅了されていたと言います。

1967年、マドリッドに移ります。フランコ独裁政権によって国立映画学校が閉鎖されていたため、さまざまな仕事をしながら独学で映画を学びました。若い頃は、『アンダルシアの犬』などで知られるスペイン人監督ルイス・ブニュエルに影響をうけたと語っています。

22歳のときに初めて8㎜カメラを手にし、1974年ごろから、短編映画の撮影を開始しました。

1980年に長編映画デビュー。以後、独特のセンスと色鮮やかな世界観を持った作品を送り出し、ヴェネツィア国際映画祭、各国アカデミー賞、カンヌ国際映画祭など世界の名だたる映画祭で高い評価を受ける、スペインの巨匠としての地位を確立しています。

全21監督作、おすすめランキング

全21作品を、主観によるおすすめランキング順にご紹介します。

各作品のあらすじやキャスト、見どころポイントも記していますので、鑑賞の参考にしてください!

21位:自主製作した長編デビュー作『ペピ、ルシ、ボンとその他大勢の娘たち』(1980)

アルモドバルは、マドリッドで短編映画を撮影していた時期、スペインの民主化に合わせて反権威の実験的な芸術活動に加わっていました。この頃出会ったのが、のちにアルモドバル映画のミューズとなるカルメン・マウラ。彼女の主演で撮影した事実上のデビュー作が『ペピ、ルシ、ボンとその他大勢の娘たち』です。

大麻栽培がバレて、一人の警察官にレイプされてしまうペピ。友人のボンを使って、警官の妻ルシを凌辱させ復讐をはたしたつもりが、ルシがマゾだったことから、なぜか3人一緒につるんで行動するはめに……。

まだ粗削りながら、カルメン・マウラのほか、セシリア・ロスやフリエタ・セラーノら、のちの作品の常連となる女優たちがこぞって端役で出演しているなど、アルモドバル映画のエッセンスが随所に散りばめられています。

20位:アントニオ・バンデラスの映画デビュー作『セクシリア』(1982)

人工授精の権威でセックスを嫌悪する父とは正反対に、色情狂となった娘セクシリア。快楽に身をゆだねる日常の中で、一人の青年と恋に落ちるのですが、彼の正体はテロリストに追われるゲイの皇太子でした。

アルモドバル自身、女装したバンドのボーカルとして登場するなど、他にも、次から次へと奇妙な男女が登場しては騒動を巻き起こし、ドタバタ喜劇を繰り広げます。

主人公セクシリアをセシリア・ロスが演じているほか、うら若きアントニオ・バンデラスが恋人を探す青年役で映画デビューを果たしています。

19位:日本に初めて紹介されたアルモドバル映画『マタドール』(1986)

本国スペインで公開されてから3年後の1989年、日本に最初に紹介されたペドロ・アルモドバルの映画です。のちに、『マタドール〈闘牛士〉・炎のレクイエム』という奇妙なタイトルがつけられています。

引退した人気闘牛士ディエゴの弟子であるアンヘル。男らしさを証明しようと連続殺人事件の犯人は自分だと嘘をつきますが、実は、ディエゴこそ、闘牛士時代のスリルが忘れられず官能殺人を繰り返していた真犯人でした。

官能的な殺人の虜になってしまった男と女の悲劇を、サスペンスタッチで描きつつ、大胆な結末も話題になりました。アンヘルをアントニオ・バンデラスが演じています。

18位:歪んだ愛の形を描く官能ミステリー『私が、生きる肌』(2011)

原作は、ティエリ・ジョンケの小説『蜘蛛の微笑』。終盤に判明する、ヒロインをめぐる思いもよらない真相が、大きな話題をよんだ問題作が『私が、生きる肌』です。

愛する妻を亡くした形成外科医のロベルが、一人の女性を監禁し、ある実験に着手します。それは、新たに開発した画期的な人工皮膚を全身に移植し、女性を亡き妻へと作り変えることでした。

『アタメ』以来、22年ぶりにアントニオ・バンデラスがキャスティングされ、禁断の道に突き進む天才形成外科医を演じます。ロベルによって別人へと変身させられていく美女ベラを演じたエレナ・アナヤが、ゴヤ賞主演女優賞に輝きました。

17位:原点回帰した、軽快シット・コメディ『アイム・ソー・エキサイテッド!』(2013)   

マドリッドからメキシコシティに飛び立った飛行機で、機体トラブルが発生。ゲイの3人組フライトアテンダントと、個性的な乗客たちが巻き起こす異常事態を、毒々しいほどコミカルに描いたシチュエーション・コメディです。

セシリア・ロスやハビエル・カマラら、アルモドバル映画の常連俳優が勢ぞろいしたばかりか、アントニオ・バンデラスとペネロペ・クルスもカメオ出演するなど、まるでお祭りのような楽しい作品に仕上がりました。

批評家筋からは必ずしも高評価を得られなかったものの、久しぶりに初期の作品に戻ったかのような軽快群像コメディに、かつてのファンは拍手喝采を送りました。

16位:ついにキレた主婦がとった行動は?『グロリアの憂鬱』(1984)

マドリッドの団地に暮らす平凡な主婦のグロリア。しかし、タクシードライバーをしている夫との関係は冷め、おまけに姑はケチ、長男はドラッグの売人で次男はゲイという、好き勝手なバラバラ家族に、とうとうキレてしまい……。

行きずりのセックスに溺れ、ドラッグに手を出し、ついに殺人まで犯す堕ちていく主婦グロリアを、カルメン・マウラがエキセントリックに演じました。

家族のドラマでありながら、ぶっ飛んだ強烈なキャラクターたちの織りなす人間模様は、まさにアルモドバルの真骨頂です。

15位:ペネロペ・クルスが初めてキャスティングされた『ライブ・フレッシュ』(1997)

クラブで出会ったイタリア領事の娘エレナに一目ぼれした、一人の青年ビクトル。ところが、薬物中毒のため錯乱したエレナは、訪ねたビクトルともみ合い、持っていた銃の弾丸が誤って警官のダビドに命中してしまいます。

ビクトルは刑務所送りになり、一方、エレナは下半身不随となったダビドと結婚。4年後、出所したビクトルは、エレナとダビドにある復讐を企てます。

イギリスの推理小説『引き攣る肉』が原作。バスの中でビクトルを産み落とす娼婦の母イザベル役で、ペネロペ・クルスがアルモドバル映画、初登場を果たしました。

ちなみに、ダビドを演じているのは、クルスの後の夫、ハビエル・バルデムです。

14位:覆面女流作家をめぐる愛憎ドラマ『私の秘密の花』(1995)

夫も知らない、人気ロマンス小説家の顔を持つレオ。夫は軍人のため留守がちで、満たされない日常を書くことでやり過ごしてきましたが、ある日、親友ベティから青年アンヘルを紹介されます。アンヘルがレオに一目ぼれしたばかりか、夫の浮気相手がベティであることが判明し……。

やがて本来の自分自身に目覚めていく主人公レオを、マリサ・パレデスが演じています。マックス・マーラなどイタリアブランドから提供されたハイセンスな衣装も見どころ。

世界的な人気を博していたスペインを代表するダンサー、ホアキン・コルテスの出演も話題になりました。

13位:ワケあり修道女たちが繰り広げるおバカな騒動を描く『バチ当たり修道院の最期』(1983)

マドリッドの一軒の奇妙な修道院を舞台にしたブラック・コメディです。ペドロ・アルモドバルの名前が世界に紹介された、最初の作品になります。

恋人をドラッグ中毒で亡くし悲しみにくれるクラブ歌手ヨランダが、ある修道院にかけこむと、そこは資金難でほとんど閉鎖寸前。おまけに、ハチャメチャなワケあり修道女たちが、無責任すぎるイタイ行動を繰り広げていました。

元殺人犯の尼をカルメン・マウラ、薬物中毒のレズビアン尼長をフリエタ・セラーノなど、ここでも常連の女優たちが顔を揃えています。

12位:奇妙な男女が織りなす純愛ラブストーリー『アタメ』(1990)

主人公は、暴力癖を装うことで精神病院に出入りし、生活してきた孤児のリッキー。23歳になったのを機に、まっとうな人生を送ろうと一方的に求愛の相手に選んだのが、ポルノ女優のマリーナでした。

家に押し入り、無理やりベッドにしばりつけながらも、優しく接してくるリッキーに、マリーナは不思議な愛情を覚えるようになり……。

アルモドバルらしい、一筋縄ではいかない異色純愛ラブストーリーが展開します。リッキーをアントニオ・バンデラス、マリーナをビクトリア・アブリルが演じました。

11位:愛憎うずまく三角関係をミステリータッチで描いた『抱擁のかけら』(2009)

14年前に事故で視力を失い、映画監督だった過去を封印して別人の脚本家として生きてきたマテオ。ある日、一人の青年が訪ねてきたことで、再び、激しい愛憎劇に隠された、知られざる過去と向き合うことに……。

三角関係に陥る女優レナをペネロペ・クルス、映画監督のマテオを『バッド・エデュケーション』のルイス・オマールが演じています。

抱擁のかけら』は、『オール・アバウト・マイ・マザー』『ボルベール』と合わせ、アルモドバルの「女性賛歌三部作」と呼ばれています。



10位:アルモドバル通算20本目にあたる長編監督作『ジュリエッタ』(2016)

ノーベル賞作家アリス・マンローの短編集をもとに、マドリッドに暮らす一人の中年女性が、行方不明の娘、そして自分自身と向き合う姿を描いた人間ドラマが『ジュリエッタ』です。

街で偶然会った知人の口から、12年前に忽然と姿を消した娘アンティアを見かけたと教えられ、激しく動揺するジュリエッタ。居場所すらわからない娘にむけて手紙を書くことで、封印してきた過去に向き合います。

現在のジュリエッタを、スペインの大御所女優エマ・スアレスが、若き日のジュリエッタを日本でも放送された人気ドラマ『情熱のシーラ』で知られるアドリアーナ・ウガルテが演じています。

アルモドバルは、このキャスティングについて、敬愛するルイス・ブニュエル監督の『欲望のあいまいな対象』へのオマージュであると語っています。

9位:自身の神学校時代を描いた『バッド・エデュケーション』(2004)

1980年、マドリッドで映画監督をしているエンリケを訪ねてきたのは、かつて同じ神学校で少年時代を過ごしたイグナシオ。フランコ独裁政権下にあった閉鎖的な神学校を舞台に、2人の少年の友情、そして神父による性的虐待など辛い過去を、大人となって再会した2人の今を交差させながら描きます。

アルモドバル自身の少年時代を描いた半自伝的色彩がきわだって濃い作品バッド・エデュケーション』であり、10年以上もの間、映画化のため温めてきた企画でした。

イグナシオをガエル・ガルシア・ベルナルが演じ、妖艶なドラァグクイーンの姿も披露しています。

8位:アントニオ・バンデラス主演の自伝的作品『ペイン・アンド・グローリー』(2019)

主人公は、脊椎を痛めたことから心も身体も疲れ果て、今やほとんど引退同然の生活を送る世界的映画監督のサルバドール。幼い頃の思い出にふけるばかりで、生きがいすら失くしたそんな彼のもとに、32年前の作品をリバイバル上映したいというオファーが届きます。そのことで、閉ざされていた過去が紐解かれていき……。

サルバドールをアントニオ・バンデラス、母をペネロペ・クルスが演じました。中でも、まさに本人を思わせる容姿でアルモドバルになりきったバンデラスの演技は非常に高い評価を受け、カンヌ国際映画祭主演男優賞など各国の映画祭を席捲しています。

日本では2020年6月に公開された最も新しい作品です。

7位:ジャン=ポール・ゴルチエによる衣装も話題に!『キカ』(1993)

メイクアップ・アーティストのキカをとりまく、奇妙な男女のおりなす恋愛劇をコミカルに描いた作品です。ジャン=ポール・ゴルチエによる奇抜な衣装デザインも大きな話題をよびました。

妻を自殺で亡くした作家ニコラス、そして彼の息子ラモンの両方と関係を持つキカ。そればかりか、メイドであるレズビアンのフアナの弟でポルノ男優のポールにレイプされてしまいます。TVレポーターのアンドレアまで加わり、ニコラスの妻の自殺を軸にいよいよ関係が入り乱れて……。

『グロリアの憂鬱』で主人公の親友クリスタルを演じていたベロニカ・フォルケがキカを演じ、スペインの権威あるゴヤ賞で最優秀女優賞に輝きました。

6位:一人の男をめぐる母と娘の愛憎劇『ハイヒール』(1991)

ニュースキャスターをしている娘レベーカが、メキシコからスペインに戻ってきた人気歌手の母ベッキーと15年ぶりに再会します。レベーカの夫マヌエルは、母の昔の恋人。再会の1か月後、そのマヌエルが何者かに殺害されてしまい……。

レベーカがシャネルを着用し、ベッキーがアルマーニを着用するなど、いつものアルモドバル・ワールドに新たにファッショナブルなスタイリッシュさが加わった作品が『ハイヒール』です。

レベーカを『アタメ』のビクトリア・アブリル、ベッキーをマリサ・パレデスが演じています。また、音楽を担当したのは坂本龍一です。

5位:昏睡中の2人の女とそれぞれの男を描く『トーク・トゥ・ハー』(2002)

闘牛士だった恋人リディアが昏睡状態になってしまい、絶望するマルコ。同じ病院で、交通事故により4年間昏睡中の女性アリシアの面倒をみているベニグノと出会います。ところが、ベニグノがある事件を起こしてしまい……。

前作『オール・アバウト・マイ・マザー』から3年ぶりとなった本作『トーク・トゥ・ハー』も、ヨーロッパ映画賞作品賞や米アカデミー賞脚本賞など、期待を裏切らない、高い評価を受けました。

ドイツ人舞踏家ピナ・バウシュの舞台やブラジル人歌手カエターノ・ベローゾの歌唱シーンを大胆に盛り込んだところも見どころ。

ベニグノを演じたハビエル・カマラ、マルコを演じたダリオ・グランディネッティは、男優陣でアルモドバル映画の常連たちです。

4位:ペネロペ・クルスら6人全員がカンヌで女優賞に輝いた『ボルベール〈帰郷〉』(2006)

失業中だった夫を、15歳の娘が自衛のため殺害してしまうという事態に直面した主婦ライムンダ。火事で死んだ母が実は生きているという噂、最愛の叔母の死などに向き合うライムンダの姿を通して、女たちの強さや悲哀を見事に描ききった作品が『ボルベール〈帰郷〉』です。

強い意志を持って行動するライムンダを魅力的に演じたペネロペ・クルスほか、主要キャストを演じた女優6人全員がカンヌ国際映画祭で女優賞に輝くという快挙を成し遂げました。

なかでも、死んだはずの母イレーネ役で、『神経衰弱ぎりぎりの女たち』を最後に決別していたカルメン・マウラが久しぶりに復帰し、ファンを大いに喜ばせました。

3位:LGBTQ映画史上に残る傑作と誉れ高い『欲望の法則』(1987)

ゲイの危険な三角関係にトランスジェンダーの女性を絡めて描き、LGBTQ映画の名作の一つとして必ず名前の挙がる作品が『欲望の法則』です。

倦怠期にあった映画監督パブロとファンのゲイカップル。ファンの浮気相手であるアントニオが、嫉妬のあまりファンを殺害したうえ、それを知ったパブロが事故で記憶喪失になってしまい……。

『セクシリア』以来3作目となるアントニオ・バンデラスがアントニオを演じているほか、アントニオが立てこもるアパートに住む、性転換したファンの兄ティナをカルメン・マウラが演じています。ドラマチックなラストシーンは必見です。

2位:ミュージカルにもなった初期の代表作『神経衰弱ぎりぎりの女たち』(1988)

突然姿を消した恋人イバンと残された女優のペパ、イバンの妻ルシア、イバンの息子カルロスとその恋人マリサ、テロリストの恋人を持つ友人のカンデラら、崖っぷちぎりぎりまで追い詰められた女たちが繰り広げるドタバタ騒動を、独特のセンスで描いた傑作コメディが『神経衰弱ぎりぎりの女たち』です。

ニューヨークでミニシアター記録を塗り替えるなど、興行的にも大成功してペドロ・アルモドバル初期の、文字通り代表作となりました。ヴェネツィア国際映画祭脚本賞など、世界各国の映画祭でも高い評価を得ています。

2010年にはブロードウェイ・ミュージカルとなってトニー賞にノミネートされたほか、2014年にはロンドンでも上演されるなど、今なお根強い人気を誇る作品です。

1位:世界の映画賞を総なめした名作『オール・アバウト・マイ・マザー』(1999)

米アカデミー賞外国語映画賞はじめ、カンヌ国際映画祭、ゴールデングローブ賞、英国アカデミー賞、セザール賞など各国の名だたる映画祭で高い評価を受けた、誰もが認めるアルモドバルの代表作が『オール・アバウト・マイ・マザー』です。

目の前で最愛の息子エステバンを事故により失ったマヌエラ。息子の死を伝えるため、失踪中の夫を探してバルセロナへと旅立ったマヌエラが、そこで出会った人々を通して、次第に再生していく姿を描きました。

マヌエラをセシリア・ロス、大女優ウマをマリサ・パレデス、シスター・ロサをペネロペ・クルスが演じています。

ペドロ・アルモドバルは、本作により世界に誇る巨匠の地位を不動のものとしました。

ほかの誰とも違う、唯一無二の世界観を持ったペドロ・アルモドバル

監督作全21作の中、あなたは何作品、ご覧になったでしょうか? 

世界的巨匠ではありますが、21作は、キャリアに比して決して多作ではありません。

それでも映画の冒頭を観ただけで、すぐにアルモドバルだとわかる独特の世界は、やはり唯一無二の存在だと言えるでしょう。

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