今村昌平のおすすめ名作映画8選【赤い殺意/うなぎ/豚と軍艦】

今村昌平 映画

日本人でただ一人、カンヌ国際映画祭で最高賞のパルム・ドールを二度受賞した映画監督、今村昌平。

2023年4月現在、二度受賞したのは、今村のほか、フランシス・フォード・コッポラら世界に8人しかいません。

本記事は、そんな世界の巨匠・今村昌平について、簡単なプロフィールに続き、必見の名作を8作品ご紹介したいと思います!

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カンヌで2度のパルム・ドールに輝いた名匠・今村昌平

今村昌平は、1926年(大正15年)9月15日、東京の大塚生まれ。早稲田大学卒業後、映画監督をめざして松竹大船撮影所に入社しました。

松竹では小津安二郎の助監督を務めるなどしましたが、3年足らずで日活に移籍。川島雄三に師事して『幕末太陽傳』などの脚本に携わったのち、1958年に『盗まれた欲情』で監督デビューしました。

『赤い殺意』を最後に、1966年、今村プロダクションを設立。以後は、独立プロとして映画製作を続けます。

俗にいう「重喜劇」をテーマに、オールロケや同時録音などこだわりぬいた演出に徹したこともあり、キャリアに比して監督作品数は多くありません。一方で、日本映画大学の前身である横浜映画専門学院を創立するなど、積極的に若手育成にもあたっていました。

カンヌ国際映画祭で2度のパルム・ドール受賞を果たし、2006年5月30日、79歳で死去。葬儀にはマーティン・スコセッシが弔文を寄せるほど、世界の映画界に多大な影響を与えました。

今村昌平のおすすめ名作映画8選

※紹介文中、下線のある映画タイトルはAmazonの商品ページにリンクしています。

1. 重喜劇のスタイルを確立した『豚と軍艦』(1961)

在日米軍の基地がある横須賀市を舞台に、養豚の飼育係をすることになったチンピラの青年とその恋人の姿を通し、戦後日本の荒廃した現実を描いた秀作が『豚と軍艦』です。本作で、今村昌平は「重喜劇」のスタイルを確立したとも言われています。

主人公の2人を演じた長門裕之吉村実子のみずみずしい魅力も見どころです。第12回ブルーリボン賞作品賞を受賞したほか、キネマ旬報ベスト・テンの日本映画7位に選ばれました。

邦題そのまま「Pigs and Battleships」のタイトルで公開された海外でも非常に高い評価を得ています。

2. 左幸子の代表作としても知られる名作『にっぽん昆虫記』(1963)

東北の寒村に生まれ、やがて東京でコールガールのマダムとなっていく女・松木とめの数奇な半生を、まるで昆虫観察するかのような冷徹な視点で描いた傑作が『にっぽん昆虫記』です。

奔放な性愛に生きる主人公を体当たりで演じた左幸子は、ベルリン国際映画祭の主演女優賞を日本人で初めて受賞しました。

1959年の映画『にあんちゃん』で文部大臣賞を受賞していた今村昌平にとって、初の商業的大ヒット映画でもあります。

3. 今村昌平が生涯ベスト作品に選ぶ『赤い殺意』(1964)

夫の不在中に強盗に押し入られ、犯された人妻が、悲劇を乗り越え次第にたくましく変貌していく姿を描いた傑作が『赤い殺意』です。

女性週刊誌に連載された藤原審爾の同名小説が原作で、ヒロインの貞子を春川ますみが演じました。

重苦しくシリアスな人間存在の中に、独特の滑稽さを浮かび上がらせる「重喜劇」を代表する作品であり、今村昌平自身が、本作を生涯ベストと評していたことは有名です。

4. 長期沖縄ロケによる、初のカラー作品『神々の深き欲望』(1968)

現代文明から隔絶され、神話が息づく南海の孤島を舞台に、根源的な人間存在と日本人の生のあり方を壮大なスケールで描いた3時間のカラー大作が『神々の深き欲望』です。

石垣島、波照間島、与那国島などでオールロケが敢行され、大地や海のなまなましい原色が全編にあふれています。主人公の根吉を三國連太郎、その息子を河原崎長一郎が演じました。

2年間におよぶ長期ロケによって膨らんだ莫大な製作費のため、今村プロは破産寸前に追い込まれましたが、作品は非常に高い評価を得ました。同年度のキネマ旬報ベストテン第1位に選ばれています。



5. 実際にあった事件のドラマチックな映画化『復讐するは我にあり』(1979)

日本各地で殺人を繰り返し、指名手配となりながら、詐欺と女性関係にまみれた逃亡を続けた男の濃密な生きざまを描いた傑作が『復讐するは我にあり』です。オファーを断った渥美清に代わって緒形拳が選ばれ、見事に主人公の榎津巌を演じ切りました。

実際に起きた事件をもとにした、佐木隆三による直木賞受賞作の映画化です。壮絶な映画化権の争いの末、今村昌平の手に渡り、『神々の深き欲望』以来10年ぶりの実質的な新作映画となりました。

公開されるや大ヒットを記録し、今村プロはそれまでの借金を完済。同年度のキネマ旬報ベストテン第1位ほか、主要な賞を独占した傑作です。

6. 今村昌平を世界が認めたパルム・ドール受賞作『楢山節考』(1983)

信州の山深い寒村を舞台に、昔からの因習と掟に従って山に捨てられる老母とその息子の姿を描いた人間ドラマが『楢山節考』です。キャッチフレーズは「親を捨てるか、子を捨てられるか」。

深沢七郎の同名小説が原作であり、1958年の木下恵介監督作に続く2度目の映画化です。葛藤する息子の辰平を緒形拳、老母のおりんを坂本スミ子が演じました。

下馬評の高かった大島渚監督の『戦場のメリークリスマス』を退けて、見事カンヌ国際映画祭の最高賞パルム・ドールに輝きました。日本人受賞者は衣笠貞之助、黒澤明に次ぐ3人目です。

7. 今は亡き3人、田中好子・北村和夫・市原悦子の名演が光る『黒い雨』(1989)

広島原爆投下がもたらした『黒い雨』を浴び、被爆したことで悲惨な末路を迎える一人の女性の姿を描いた反戦映画です。

ヒロインの矢須子を演じた田中好子の演技は絶賛されました。また、矢須子を見守る叔父夫婦を演じた北村和夫市原悦子の名演も必見です。

井伏鱒二による同名小説の映画化であり、全編濃淡の強いモノクロで撮影されました。音楽を現代音楽の巨匠・武満徹が手掛けるなど、作品の芸術性も高い評価を得ています。

8. 二度目のパルム・ドールに輝いた『うなぎ』(1997)

不貞をはたらいた妻を殺害し、8年の刑期を終えて出所した男・山下。田舎で小さな床屋を営みながら、ペットのうなぎにだけ心を開く山下でしたが、ひょんなことから、自殺未遂を起こした一人の女・桂子と共同生活を送ることに……。

山下を役所広司、なぞめいた桂子を清水美砂が演じ、淡々とした静かな物語の中に独特のユーモアを交えた人間模様をつむぎあげました。

うなぎ』は、『黒い雨』以来8年ぶりの新作となりましたが、見事2度目のカンヌ国際映画祭パルム・ドールに輝きました。



今村昌平の遺作は?

遺作となったのは、2002年公開のオムニバス映画『11’09”01/セプテンバー11』。

アメリカ同時多発テロをテーマに、世界の11人の監督が短編を寄せたものであり、イギリスのケン・ローチやアメリカのショーン・ペンにまじって、日本から今村昌平が参加しました。

これまでなかなか鑑賞する機会のなかった幻の傑作『にっぽん昆虫記』と『赤い殺意』なども、2023年4月現在、Amazonプライムビデオ等で視聴可能です!

ぜひこの機会に鑑賞してみてはいかがでしょうか?

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