ゲイが熱烈に支持する女性映画/ドラマ16選【LGBTQ】

ゲイが偏愛する映画・ドラマ ドラマ

さまざまなLGBTQを描いた映画・ドラマが、量産される時代になりました。それどころか、世界中でポリコレがすすんだ結果、どんな作品にも必ずといっていいほどLGBTQのキャラクターが登場するのが今や普通です。

そんな状況ではありますが、しかし、ゲイが一人として登場しないのに、なぜかゲイが熱烈に支持する作品があります。

そんな映画・ドラマを、日本と海外含めて16作品ご紹介しましょう!

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ゲイが偏愛する映画・ドラマの共通点は?

LGBTQを象徴するレインボー・フラッグを考案したギルバート・ベイカーは、ジュディ・ガーランドの映画『オズの魔法使い』に着想を得たとも言われています。ゲイが偏愛する作品にはどんな共通点があるのでしょうか?

それは、すでにタイトルから明らかな通り、女性が主人公であることです。

ゲイを正面が描くことが難しかった時代はなおさら、ある種の女性映画を熱狂的に愛してきたのです。

そうした作品の特徴を大まかにまとめてみると:

●男性に媚びない、したたかで強い女性主人公
●見た目は極めてグラマラスで女性らしいこと
●勝気な娼婦・女郎もの
●女優もの
●女性VS女性の激しい闘いが描かれる
●女性たちの群像劇もの、四姉妹もの

ゲイたちは、彼女たちを自分たちの分身だととらえているのかもしれません。

以下、そんな映画・ドラマを、日本と海外にわけて全16作品、思いつくまま順不同でご紹介します。3作品がドラマです。



【日本映画/ドラマ】

①映画『疑惑』(1982)

夫殺しの容疑者となった後妻の女・球磨子と、国選で彼女の弁護を引き受けることになった女性弁護士・律子のスリリングな確執を描いた松本清張原作の映画化です。監督は野村芳太郎。

その後、何度もドラマ化されていますが、球磨子を桃井かおり、律子を岩下志麻が演じた1982年の映画を超える作品はありません。

とりわけ、球磨子がホステスとして働く店で、律子と静かな闘いを繰り広げるシーンにゲイたちは悶絶!球磨子(くまこ)という名前も絶妙です。

②映画『吉原炎上』(1987)

ゲイに愛される作品の多い五社英雄監督ですが、代表作である『鬼龍院花子の生涯』や『陽暉楼』はもちろん、格別ゲイの間で人気の高いのが1987年公開の『吉原炎上』です。

吉原の遊郭に生きる5人の女郎たちの激しい生き様と死に様を、派手にドラマチックに描いた作品であり、主人公の久乃を名取裕子が演じました。

しかし、5人の中でもゲイが特に愛するのは、西川峰子演じる小花です。壮絶な最期を迎えるシーンとその時に吐くセリフは今もゲイたちの語り草です。

③映画『Wの悲劇』(1984)

劇団の研究生である若い女優の卵・三田静香が、大役と引き換えに、看板女優・羽鳥翔のスキャンダルの身代わりとなる姿を描いた角川映画です。夏樹静子の同名小説が劇中劇となっており、また薬師丸ひろ子が本格的な女優に脱皮するきっかけとなった作品としても知られています。

なんといっても見どころは、三田佳子の貫禄あふれる大女優ぶり!怯む静香を口説き落とすシーン、静香を抜擢するために若い女優をいびり出すシーンなど、さすがの迫力です。

ドラマチックなラストに流れる主題歌が、ゲイのアイコン、松任谷由実の曲であることも見逃せません。

④映画『赤線地帯』(1956)

まもなく売春防止法が施行されようとしている昭和30年代初めの吉原を舞台に、さまざまな事情を抱えた娼婦たちが、娼館「夢の里」を舞台に、哀しくも、たくましく生きていく姿を描いた巨匠・溝口健二の遺作です。

娼婦役で京マチ子、三益愛子、若尾文子、木暮実千代、女将を沢村貞子、お手伝いを浦辺粂子と、昭和を代表する名女優たちの夢の競演!

溝口には、田中絹代を主演にした1948年公開の『夜の女たち』という同じく娼婦を描いた映画もありますが、やはり本作の方に軍配。宙を飛ぶハンドバッグなど、全体に流れる滑稽さが独特の味わいで、中年以降のゲイたちにとってはバイブル的作品です。

⑤映画『細雪』(1983)

第二次世界大戦前夜の大阪・船場の上流階級、薪岡四姉妹の物語。文豪・谷崎潤一郎の原作を、東宝創立50周年記念作として豪華絢爛に映画化した市川崑監督作です。

長女・鶴子を岸惠子、次女・幸子を佐久間良子、三女・雪子を吉永小百合、四女・妙子を小手川祐子という、女優らしい女優たちが、総額1億5千万円をかけたという着物をまとうきらびやかさは圧巻です。

映画そのものの評価は、決して高くはないものの、このぜいたくさは、今の日本映画には見当たりません。同じ市川崑監督作『犬神家の一族』を愛するゲイが多い理由も、四姉妹の物語である点が大きなポイントでしょう。

⑥ドラマ『阿修羅のごとく』(1979-80)

向田邦子の脚本、和田勉の演出による、昭和の日本ドラマを代表する傑作の一つが『阿修羅のごとく』です。老父の浮気をきっかけに揺れ動く四姉妹の姿を描く人間ドラマであり、その後、映画化や舞台化も数度なされています。

NHK「土曜ドラマ」として、1979年1月にパート1の全3話、1980年1月から2月にかけてパート2の全4話を放送。長女の綱子を加藤治子、次女の巻子を八千草薫、三女の滝子をいしだあゆみ、四女の咲子を風吹ジュンと、絶妙なキャストが四姉妹を演じます。

特にゲイに人気の高いいしだあゆみの存在感、また、不倫中の綱子が正妻と玄関で対決する修羅場は必見です。



【海外映画/ドラマ】

⑦映画『何がジェーンに起ったか?』(1962)

かつて人気子役だった妹ジェーンと、大女優として活躍するもある事故で半身不随となった姉ブランチ。二人で余生を暮らす、老いた姉妹のすさまじい確執を描き、カルト的人気を博す名作です。

ジェーンをベティ・デイヴィス、ブランチをジョーン・クロフォードと二大スターが演じていますが、2人は実生活でも不仲で知られ、撮影中もさまざまな嫌がらせをしあったというエピソードは有名です。

2017年には、ゲイであるプロデューサーのライアン・マーフィーの手により、その裏側を描いたドラマシリーズ『フュード/確執 ベティvsジョーン』が製作され、大きな話題を呼びました。

⑧映画『愛と憎しみの伝説』(1981)

ハリウッド黄金期の大女優ジョーン・クロフォードの半生を、養女クリスティーナの視線で描いた同名自伝小説の映画化です。そこで暴露されたのは、クロフォードの冷酷な裏の顔と激しい虐待。

何と言っても、クロフォードを演じたフェイ・ダナウェイのすごみは強烈。特に、顔をコールドクリームで白く塗りたくったまま、針金ハンガーのことで激怒するシーンは必見で、ドラァグクィーンのショーでもたびたび取り上げられる有名ネタです。

公開当時は、ワースト映画主要5部門独占と不名誉な称号を与えられましたが、その後、ゲイを中心に一部でカルト的人気を博し、今や愛すべきB級作品として認められています。

⑨映画『ドリームガールズ』(2006)

言わずと知れた、ダイアナ・ロスとザ・スプリームをモデルにした大ヒットブロードウェイ・ミュージカルの映画化作品であり、主人公ディーナをビヨンセ、エフィをジェニファー・ハドソンが演じました。

女性のサクセスストーリーものはゲイの好物の一つですが、何より、ディーナのモデルであるダイアナ・ロスは、ゲイの代表的アイコン。そのことから、オリジナルのミュージカル版からすでに、ゲイの熱い支持を受けてきた作品です。

アカデミー助演女優賞に輝いた、ジェニファー・ハドソンは文句なしに素晴らしいのですが、ブロードウェイ版のジェニファー・ホリデイによる歌唱も必聴です。

⑩映画『欲望という名の電車』(1951)

テネシー・ウィリアムズによる同名戯曲をエリア・カザンが映画化。破滅し、精神が壊れていく主人公ブランチを演じたヴィヴィアン・リーは、『風と共に去りぬ』に続く2度目のアカデミー主演女優賞受賞となりました。

ゲイだった原作者のウィリアムズは、ブランチがゲイにとって魅力あふれる存在だということを知っていたからか、ブランチ役は必ず女性が演じることという遺言を残していたほどです。

本作が映画デビューとなったスタンリー役のマーロン・ブランドの野性味あふれるセックスアピールも、ゲイ的な見どころでもあります。

⑪映画『サンセット大通り』(1950)

サイレント時代に活躍したかつての大女優と売れない脚本家の愛憎劇を描いた、名匠ビリー・ワイルダー監督の傑作です。

落ち目ながら昔の栄光が忘れられない往年の大女優ノーマをグロリア・スワンソン、ノーマに利用され、悲劇を迎える脚本家ジョーをウィリアム・ホールデンが演じています。

何よりラストシーン、正気を失ってなお、邸宅の豪華な階段を演技しながら降りてくるノーマのすさまじい姿は必見です。ノーマは、『欲望という名の電車』のブランチと並び称される、ゲイのアイコンだと言えるでしょう。

⑫映画『ミルドレッド・ピアース』(1945)

ジェームズ・M・ケインの同名犯罪小説の映画化であり、ジョーン・クロフォードの代表作として、アカデミー主演女優賞を受賞した名作です。

浮気した無職の夫と別れ、主婦から実業家に転身し、女手一つで二人の娘を育っていこうとしたミルドレッドが、思わぬ悲劇にみまわれる姿を描きます。波乱万丈の半生は、欧米の女優が一度は演じてみたい役柄の一つとも言われているほど……。

2011年には、ゲイであるトッド・ヘインズがメガホンをとり、ケイト・ウィンスレットを主演にドラマ化。こちらもプライムタイム・エミー賞で主演女優賞に輝いています。

⑬映画『イヴの総て』(1950)

一人の女性が、親切にしてくれた大女優を利用し、踏み台にしてのし上がっていく姿を描いたアカデミー作品賞受賞作。『サンセット大通り』とオスカーを多部門で競い合った作品ですが、期せずしてこちらも女優ものです。

実在した女優エリザベート・ベルクナーをモデルにしたイヴ役をアン・バクスター、大女優のマーゴをベティ・デイヴィスが演じたほか、無名のマリリン・モンローが端役で出演している点にも注目です。

W主演であり、アカデミー賞には2人揃って主演女優賞にノミネートされるも票が割れて受賞に至らず、一方カンヌ国際映画祭では、デイビスが主演女優賞に輝きました。作品そのものだけではなく、何やらいわくありげ裏話にも興味がつきません。

⑭映画『マホガニー物語』(1975)

華やかなファッション業界を舞台に、愛と成功の間で揺れ動く一人の女性の姿を描きます。なんといっても主人公トレーシーを演じたばかりか、衣装デザイン、また主題歌「マホガニーのテーマ」を歌った大スター、ダイアナ・ロスの圧巻の存在感が見どころです。

恋人ブライアンをビリー・ディー・ウィリアムズ、カメラマン役でアンソニー・パーキンスが出演するなど、70年代独特の空気感とパワーを存分に感じられる点にも注目。

ファッション・デザイナーとして、またトップモデルとして、ゴージャスで華やかな衣装を次々と纏うダイアナ・ロスは、さすがゲイのアイコンです。

⑮ドラマ『ゴールデン・ガールズ』(1985-92)

米NBCにおいて、7シーズンに渡って放送された大ヒットシットコム・ドラマが『ゴールデン・ガールズ』です。1998年にスタートする『セックス・アンド・ザ・シティ』の原点だと言っても過言ではありません。

フロリダ州マイアミに同居する4人の年配女性の日常をコミカルに描き、プライムタイム・エミー賞やゴールデングローブ賞を複数回受賞したばかりか、とりわけゲイの間で絶大なる人気を博しました。

四人を演じたビアトリス・アーサー、ベティ・ホワイト、ルー・マクラナハン、エステル・ゲティは今や全員故人ですが、ドラマ同様、ゲイの間では今なお高い人気を誇ります。とりわけ、ドロシーを演じたビアトリス・アーサーは、その体格と低い声から、一部ゲイの間で、実はトランスジェンダーではないかとまことしやかな都市伝説まであったほどです。

⑯ドラマ『アブソリュートリー・ファビュラス』(1992-)

1992年から英国BBCで放送されている、少々ぶっとんだコメディドラマシリーズです。シーズン5まで放送された他、その後もときおりスペシャルが放送されているほか、2016年には映画版(邦題は『ザッツ・ファビュラス!』)が公開されました。

ファッション業界に生きる破天荒な女友達2人組の、身勝手で堕落した日常をコミカルに描きます。ファッションはもちろん、煙草、酒、ドラッグなどなんでもありの享楽さと自分勝手さは、ある意味ゲイそのもの。

PR会社社長のエディナを演じるジェニファー・ソーンダース、ファッション・ディレクターのパッツィーを演じるジョアナ・ラムリーともども、欧米のゲイの間ではカリスマ的人気を博しています。



正統派のLGBTQ映画とはまた違う面白さをぜひ!

以上、16作品をご紹介しました。直接、ゲイを描いた作品とは異なる、独特の魅力がある作品ばかり。そんな視点で鑑賞してみると、また別の面白さを見つけることができるかもしれません。

中には何度もリメイクが製作されているものもありますが、一部で触れたとおり、その裏方にはきっとゲイが絡んでいるものも少なくないと推測しています。

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